今日は前説なしに問題です。
第32回・問題30 文部科学省の「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」(2017年(平成29年))で示された不登校児童生徒への支援に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 不登校児童生徒が学校へ登校するという結果を,第一の目標としている。
2 不登校児童生徒の意思を十分に尊重し,その状況によっては休養が必要な場合があることに留意する。
3 不登校児童生徒の実態に配慮した教育を実施する「特例校」の設置を促進している。
4 不登校児童生徒や保護者のプライバシーの保護に配慮して,学校や教育委員会による家庭訪問は控える。
5 「チーム学校」体制の整備を,スクールソーシャルワーカーのリーダーシップの下で推進する。
令和元年度カリキュラム改正によって,国家試験の出題がどのようにするのかは現時点(2022年12月)では詳細は不明ですが,平成19年度カリキュラム改正による国家試験の「現代社会と福祉」はかなりやっかいな科目だと言えます。
というのは,勉強する機会がなかったものが出題されるからです。
この問題もいかにもそんな問題です。
こういった問題を目にすると勉強不足を実感すると思いますが,それはほとんどの受験生が思うことです。
それにもめげずに問題に取り組むと多くの場合,よい結果となります。
合格・不合格を分けるのは,最終的には強い心を持っているか,というところにかかっているように思います。
この問題の場合は「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」を勉強したことがなくても正解できる可能性があることを信じることができることだと言えます。
それでは解説です。
1 不登校児童生徒が学校へ登校するという結果を,第一の目標としている。
学校へ登校することを第一の目標にするなら,今さら指針で示す必要はありません。
学校へ登校することを第一の目標をしないことこそ指針で示す意義があると思いませんか。
2 不登校児童生徒の意思を十分に尊重し,その状況によっては休養が必要な場合があることに留意する。
これが一つ目の正解です。
正解を2つ選ぶ問題の多くは,1つめはわかっても,もう1つで悩むことが多いです。
そのために,消去できるものは消去することが必要です。
3 不登校児童生徒の実態に配慮した教育を実施する「特例校」の設置を促進している。
特例校がよくわからないので,この時点では冷静に△をつけて,先に進みます。
結果的にこれが2つめの正解です。
国家試験では,こういったタイプのものが正解になることがあります。
「こういったタイプ」というのは,「このような施策があります」ということを知らしめるタイプということです。
一度試験に出題すると,それが次の年の参考書に記載されます。
そのため受験者は,その施策について学ぶことになります。その結果としてその施策が周知されていくことになります。
しかし,多くの場合,「こういったタイプ」のものは二度と出題されません。
なぜなら,一度出題することで,目的が達成されているからです。
4 不登校児童生徒や保護者のプライバシーの保護に配慮して,学校や教育委員会による家庭訪問は控える。
家庭訪問を控えることを指針で本当に示しているなら,教育界に未来はありません。
個別に合わせた対応の工夫の芽を摘み取ることになってしまいます。
5 「チーム学校」体制の整備を,スクールソーシャルワーカーのリーダーシップの下で推進する。
迷うのはこの選択肢です。
スクールソーシャルワーカーといってもソーシャルワーカーです。
ソーシャルワーカーがチームのリーダーとなる,といった出題は正解になることはありません。リーダーになることもあるかもしれませんが,いつもリーダーになることが求められているわけではないからです。
スクールソーシャルワーカーはチーム学校のメンバーです。リーダーとなるのは,現場の責任者となる学校長です。