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2025年1月30日木曜日

生活保護法が規定する基本原理と原則

 

生活保護には,原理・原則と呼ばれるものがあります。

基本原理

①国家責任の原理
②無差別平等の原理
③最低生活の原理
④保護の補足性の原理



基本原則
①申請保護の原則
②基準及び程度の原則
③必要即応の原則
④世帯単位の原則


原理と原則の違いは,正式にあるのだと思いますが,国家試験で問われることはないと思います。

大体のイメージとしては,原理は例外のないルール,原則は例外のあるルールといった感じで良いではないかと思います。

法学者ではないので,これで十分でしょう。


<基本原理>

①国家責任の原理
 この法律は,日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き,国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長することを目的とする。

この原理は,生活保護制度の根本となるもので,法の目的でもあります。

はるか昔,マルクスは,資本家(ブルジョアジー)と労働者(プロレタリアート)の闘争が,共産主義を生み出すと考えました。マルクスによると共産主義は資本主義よりも上の社会であるとされました。

その時代は,国民は権利として自由をつかみ取った結果としての古典的自由主義の時代です。国家による干渉は最少のものにとどめられます。

その結果,発生したのは貧困問題です。一方では共産主義を実現し,もう一方ではナショナルミニマム(国家による最低生活の保障)を資本主義に取り入れて,修正資本主義を実現します。

現在では,多くの共産主義国家は崩壊し,資本主義国家は福祉国家に生まれ変わりました。

生活保護法は,日本国憲法第25条の理念に基づき,「貧困に陥った場合でも,国家責任で最低生活を保障します」と高らかに宣言したものです。

資本主義国家が資本主義国家であり続けるためには,国家責任で最低限度の生活保障が必要なのです。

保護を受けることがスティグマに感じるような世の中であっては絶対にならないのです。


②無差別平等の原理
 すべて国民は,この法律の定める要件を満たす限り,この法律による保護を,無差別平等に受けることができる。

多くの場合,法の名称は変更しても改正して,法は存続します。

しかし,1946年に成立した生活保護法は廃止して,1950年に新しく同じ名称の法として成立させています。

改正レベルで対応できなかった理由はたくさんありますが,その一つとして旧法では,無差別平等でありながら,実際には救護法に引き続き,欠格条項があったことがあります。

無差別平等の原理とは,困窮に陥った理由は問わないというものです。

原理は,例外のないルールです。どんな場合であっても,困窮に陥った理由は問われることなく,困窮の事実に基づいて保護が実施されます。


③最低生活の原理
 この法律により保障される最低限度の生活は,健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。

憲法第25条の「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という生存権を保障するものが生活保護法なので,最低生活も一緒なのは当然のことです。

国試では,「肉体を維持するのに必要な」といったように出題されますが,それではだめなのです。「健康で文化的」でなければなりません。

以前は,エアコンは被保護世帯には認められるものではありませんでした。その結果として脱水による死亡事件が発生しました。

「健康で文化的」はあいまいなものではありますが,少なくとも,「肉体の維持」ではないことは間違いありません。

生活保護の不正受給などがあると,被保護者に対するバッシングが起こります。不正受給は徹底的に排除されなければなりませんが,一般的な被保護者に対して肩身の狭い思いをさせることがあってはなりません。

なぜそう思うかと言えば,「健康」には心の健康もあるからです。

スティグマを感じながらの生活の中で,心の健康を保つのはとても大変なことだと思います。中にはスティグマを感じない人もいるでしょう。

しかしそれはほんの一部の人です。

表には出てこないスティグマに思いを馳せることができるのが,社会福祉士なのではないでしょうか。


④保護の補足性の原理
 保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は,急迫した事由がある場合に,必要な保護を行うことを妨げるものではない。

保護の補足性とは,さまざまなものを活用して,それでも最低生活に足りない場合,足りない分を給付するというものです。

また第2項の規定によって,生活保護法は,最後に機能するため,セーフティネットだと言われます。

扶養義務者による扶養は生活保護よりも優先されますが,扶養を受けなければ保護を受けられないというものではありません。


基本原則

①申請保護の原則
 保護は,要保護者,その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し,要保護者が急迫した状況にあるときは,保護の申請がなくても,必要な保護を行うことができる。

「但し」以降は,例外事項です。原則は申請ですが,職権による保護もあるという例外です。

②基準及び程度の原則
 保護は,厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。
2 前項の基準は、要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて,且つ,これをこえないものでなければならない。

基準及び程度の原則が国試で問われることの一つには,「基準は誰が定めるのか」があります。

何度も「都道府県知事が定める」と出題されていますが,地方公共団体が条例で定めるものではありません。

定めるのは「厚生労働大臣」です。生活保護法の目的の一つには「最低限度の生活保障」があります。

保護は国家責任で行われるものですから,基準を定めるのも国でなければならないのです。

また,保護は,最低限度の生活保障(ナショナルミニマム)は,基準を上回っても,下回ってもだめです。基準ライン上で保護しなければなりません。

国試では「こえなければならない」と出題されますが,超えたらだめなのです。



③必要即応の原則
 保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して,有効且つ適切に行うものとする。

国試では,「必要即応の原則」に関しては,その言葉の印象から「保護は急いで行わなければならないので,画一的に行う」といったように出題されます。

この原則を定めている理由は,保護は画一的に行ってはならない,ということを明らかにするためです。


④世帯単位の原則
 保護は,世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し,これによりがたいときは,個人を単位として定めることができる。

いかにも,原則という感じですね。例外のあるルールです。

原則は,世帯単位,例外は個人単位です。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題60 

生活保護法における基本原理及び原則に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 無差別平等の保護とは,生活に困窮した国民は無条件で保護を受ける資格があるという意味である。

2 保護の申請は,要保護者の扶養義務者には認められていない。

3 急迫した事由がある場合には,保護の要件を満たしていなくとも申請を受け付けた上で緊急的に保護を開始することができる。

4 保護は,個人を単位としているが,特別の場合には世帯を単位とすることもできる。

5 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,生活保護法による保護に優先して行われる。


こういった問題を見ると,勉強をおろそかにしたくなる気持ちがわかるようです。


合格する人とそうでない人の違いは,このようなものを正解できるかできないかの違いです。


決して難しい問題を正解しなければ合格できないという試験ではありません。


今日の問題のように,出題頻度が高く,そして覚えにくいものを覚えた人は合格し,覚えられなかった人は,残念な結果となります。


悔しい思いをしたくなけれぱ,覚えにくいものこそ覚えるべきではないかと思います。


それでは,解説です。


1 無差別平等の保護とは,生活に困窮した国民は無条件で保護を受ける資格があるという意味である。


無差別平等は,無条件という意味では決してありません。生活保護法が定める要件が必要です。


2 保護の申請は,要保護者の扶養義務者には認められていない。


この選択肢は,国試の癖を考えたとき,とても重要なことを教えてくれます。


国家試験を作成する試験委員は「人」です。


多くの試験委員は,「無」から「有」を作り出すことはしません。


つまり元ネタがあって,そこから問題文を考えます。


この場合は,「要保護者の扶養義務者」も保護の申請をすることができる,という規定が元ネタです。


3 急迫した事由がある場合には,保護の要件を満たしていなくとも申請を受け付けた上で緊急的に保護を開始することができる。


うっかりすると間違ってしまいそうな選択肢です。


急迫,つまり放っておくと生死にかかわるような場合は,職権保護が行われます。


申請を受け付けて保護を開始することができるくらいなら,急迫した状況とは言えないと思いませんか。


急迫している場合は,申請がなくても保護します。


4 保護は,個人を単位としているが,特別の場合には世帯を単位とすることもできる。


世帯単位の原則です。


原則は,世帯単位です。必要な場合に世帯分離を行って,個人単位で保護することもあります。


5 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,生活保護法による保護に優先して行われる。


これが正解です。


生活保護制度は,最も下に位置します。


ほかの制度では救済されない場合,最後の最後の切り札として,生活保護制度で救済します。

2024年7月2日火曜日

知らないのは勉強不足ではない!

 国試問題を見たとき,「こんな制度・政策は知らない」と思うことがあります。

特に「義務規定」,つまり「~~しなければならない」というもので,知らないものがあれば,多くの場合は,嘘です。


嘘なので知らないのは当然です。


それでは,今日の問題です。


第25回・問題69

ホームレスの自立支援制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 「ホームレス自立支援法」は,就労の自立の促進を目的としたホームレス自立支援施設(自立支援センター)の設置を義務づけている。

2 「ホームレス自立支援法」は,就労支援等の職業斡旋を国及び地方公共団体が行い,特定非営利活動法人などの民間団体は宿泊所や食事の提供を行うと規定している。

3 「ホームレス自立支援法」は,都市公園などの公共施設の管理者がホームレスが起居の場所とすることができるように適切な措置をとるよう規定している。

4 「ホームレス自立支援法」は,自立支援の施策や実施を進めていくために,地方自治体の協力を得て全国的な実態調査を行わなければならないと規定している。

5 「ホームレス自立支援基本方針」では,支援のためのプロセスとして,自立支援施設への入所後,生活が安定した段階で生活保護の適用を行うとされている。

(注)1 「ホームレス自立支援法」とは,「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」のことである。

2 「ホームレス自立支援基本方針」とは,「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」のことである。


ホームレス自立支援法は,25年の時限立法です。


それを知らずとも今日の問題は正解できそうですが,時限立法であることを思い出せば,正解に大きく前進します。


さて,それでは詳しく見ていきましょう。


1「ホームレス自立支援法」は,就労の自立の促進を目的としたホームレス自立支援施設(自立支援センター)の設置を義務づけている。


ホームレス自立支援施設の設置義務は聞いたことがないと思います。もちろんこんなものはないからです。


よって×。


だいたいこの選択肢はとてもあやしいです。設置を義務づけている,という割に,「どこに」が抜けています。


25年で効力を失う時限立法では,このような規定はされません。


2「ホームレス自立支援法」は,就労支援等の職業斡旋を国及び地方公共団体が行い,特定非営利活動法人などの民間団体は宿泊所や食事の提供を行うと規定している。


大きなお世話ですね。もちろん規定されていません。

よって×。


3「ホームレス自立支援法」は,都市公園などの公共施設の管理者がホームレスが起居の場所とすることができるように適切な措置をとるよう規定している。


都市公園などの公共施設の管理者に規定しているのは,


当該施設をホームレスが起居の場所とすることによりその適正な利用が妨げられているときは、ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図りつつ、法令の規定に基づき、当該施設の適正な利用を確保するために必要な措置をとるものとする。


全然違います。


4「ホームレス自立支援法」は,自立支援の施策や実施を進めていくために,地方自治体の協力を得て全国的な実態調査を行わなければならないと規定している。


これが正解です。調査結果は勉強しますね。


5「ホームレス自立支援基本方針」では,支援のためのプロセスとして,自立支援施設への入所後,生活が安定した段階で生活保護の適用を行うとされている。


生活保護は,ホームレスでも受給しようと思えばできます。

就労支援が正しいです。


〈今日の一言〉


試験会場で最も避けたいことは,心が弱くなることです。


自分は,精いっぱいやった。

知らないのは,そんなものは存在しない


と思えるくらいの開き直りが必要です。

国家試験当日には,このように思えるように勉強していきましょう。

2024年7月1日月曜日

自立の助長とは,経済的自立にとどまらない!

現・生活保護法の目的は「最低限度の生活保障」と「自立の助長」です。


最低限度の生活保障は日本国憲法第25条の生存権規定に基づくものなので,比較的新しいものと言えます。


もう一方の自立の助長は,救護法に「生業扶助」が組み込まれています。


救護法は単に生活困窮者の救護だけではなく,自立の助長も目的にしていたのはとても興味深いものです。


日本では,自立の助長は江戸時代に既に始まっています。


近年は,国試に出題されたのを見たことがないですか,参考書には記載されている「石川島人足寄場」がそれです。


これを提案したのは,岩波正太郎の歴史小説「鬼平犯科帳」の鬼平こと,長谷川平蔵です。


軽犯罪人に対して,大工や建具などの技能を修得させたものです。


軽犯罪人に関して,懲罰を科すことが効果的ではないことをよく知っていたのでしょう。


しかし,残念ながら明治になって廃止されました。


自立の助長は,1929年(にくい年)の救護法まで待たなければなりません。


さて,それでは今日の問題です。


第25回・問題66

生活保護における各種の扶助に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 生活扶助には,基準生活費に当たる第1類費や第2類費のほか,各種の加算があり,うち,母子加算は,母子世帯のほか父子世帯も対象としている。

2 生活扶助は,個々人に必要な生活費としての側面もあるため,世帯員が複数の場合,個人に対して金銭が給付されるのが原則である。

3 教育扶助は,高校や大学での修学にも対応できるよう,義務教育終了後においても支給される。

4 医療扶助は,医療保険制度による指定医療機関に委託して行われ,現物給付を原則としている。

5 生業扶助は,現に就いている生業の維持を目的とするため,生業に就くために必要な技能の修得はその範囲に含まれない。


現在の扶助の種類は,8つあります。


救護法では先述の生業扶助も含めて4種類。


旧・生活保護法ではそれに葬祭扶助を加えた5種類。


現・生活保護法ができた時点では,それに住宅扶助と教育扶助を加えた7種類。


2000年の介護保険に伴い,介護扶助が加わり,現在は8種類です。


それでは詳しく見て行きましょう。


1 生活扶助には,基準生活費に当たる第1類費や第2類費のほか,各種の加算があり,うち,母子加算は,母子世帯のほか父子世帯も対象としている。



今はもう忘れてしまった人も多いかもしれません。


自民党政権が民主党政権に変わる前,一度母子加算は廃止されました。


その後民主党政権の時に,母子加算を復活させましたが,その時に父子も対象としています。


よって正解です。



2 生活扶助は,個々人に必要な生活費としての側面もあるため,世帯員が複数の場合,個人に対して金銭が給付されるのが原則である。



生活保護は原則は世帯単位です。これにより難い時は,個人を単位とする世帯分離を行います。

よって×。



3 教育扶助は,高校や大学での修学にも対応できるよう,義務教育終了後においても支給される。



教育扶助は,日本国憲法の「教育を受ける権利」を保障するために,現・生活保護法で加わったものです。


教育扶助は,小中学校の義務教育期間を対象としています。義務教育後は支給されません。


よって×。



ただし,現在の高校進学率は97%となり,高校を卒業しないと仕事を見つけることはかなり厳しい状況です。


そのため,高校分は生業扶助の高等学校等就学費が支給されます。


4 医療扶助は,医療保険制度による指定医療機関に委託して行われ,現物給付を原則としている。


医療扶助は,医療保護施設又は生活保護法の指定医療機関で原則行われます。


よって×。



5 生業扶助は,現に就いている生業の維持を目的とするため,生業に就くために必要な技能の修得はその範囲に含まれない。


生業に就くために必要な技能の修得は,経済的自立の助長のためには極めて重要です。


もちろん範囲に含まれるので☓。


現在の自立の考え方は,単に経済的自立だけではなく,社会自立,日常生活自立も含むことを覚えておきましょう。


2024年6月30日日曜日

日本の救貧制度の歴史に関する問題

日本の救貧制度に歴史問題は,出るポイントが限られています。


恤救規則

救護法

旧・生活保護法

現・生活保護法



たった4つしか問われません。


過去には以下のような問題が出題されています。


我が国の現行生活保護法が成立する経過に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。 (第22回・問題58)

1 生活困窮者緊急生活援護要綱(昭和20年)は,生活援護を要する者のうち失業者は除外した。

2 旧生活保護法(昭和21年)は制定時,民生委員を市町村が行う保護事務の協力機関と定めていた。

3 旧生活保護法(昭和21年)は,その目的を生活の保護を要する状態にある者の生活を国が差別的又は優先的な取扱をなすことなく平等に保護して,社会の福祉を増進するとしていた。

4 連合国軍総司令部(GHQ)は,覚書「社会救済」(昭和21年)によって,日本政府に生活保護の算定基準に関するガイドラインを示した。

5 社会保障制度審議会の「生活保護制度の改善強化に関する件」(昭和24年)では,生活保護制度を社会保険制度へ転換すべきであると提言した。


我が国の公的扶助制度の沿革に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。(第23回・問題56)

1 恤救規則(明治7年)では,生活に困窮する「無告の窮民」に対し米の現物給付を行った。

2 救護法(昭和4年)では,救護を受ける者は施設に収容することを原則とした。

3 救護法(昭和4年)では,救護の対象となる者について,扶養義務者が扶養できる場合には,急迫した場合を除き救護しないとされた。

4 旧生活保護法(昭和21年)では,能力があるにもかかわらず勤労の意思のない者は,急迫した場合を除き保護の対象から除外された。

5 旧生活保護法(昭和21年)では,日本国憲法に基づく健康で文化的な最低生活保障の考え方を導入した。


旧生活保護法(昭和21年)の内容に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。 (第24回・問題56)

1 第1条の保護の目的は,最低生活の保障と無差別平等であった。

2 保護を行う責任は,都道府県知事によることとされていた。

3 教育及び住宅に関する保護は,生活扶助に含まれていた。

4 国家責任を明確にする目的から,保護費のすべてを国が負担していた。

5 数次の基準改訂を行い,エンゲル方式による最低生活費の算定方式の導入を行った。


我が国における戦前の低所得・貧困者救済の内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 (第25回・問題64)

1 恤救規則では,生活困窮者が生活に必要な食料を現物で給付していた。

2 方面委員制度は,救護法を実施するために創設されたものであり,これを契機にして全国に方面委員が配置された。

3 防貧的な経済保護事業においては,公設市場,公益質屋,公営浴場などの施設が設置され,更に,職業紹介などの失業保護事業が展開された。

4 救護法の成立に伴い,法の運営を行うために内務省に救護課が設置された。

5 軍事救護法は,戦時体制において一般の生活困窮者及び軍人やその家族を救済の対象としていた。


現在の生活保護法成立前の公的扶助制度に関する記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 (第28回・問題63)

1 恤救規則(1874年(明治7年))は,高齢者については65歳以上の就労できない者を救済の対象とした。

2 救護法(1929年(昭和4年))は,救護を目的とする施設への収容を原則とした。

3 救護法(1929年(昭和4年))における扶助の種類は,生活扶助,生業扶助,助産の3種類であった。

4 旧生活保護法(1946年(昭和21年))は,勤労を怠る者は保護の対象としなかった。

5 旧生活保護法(1946年(昭和21年))は,不服申立ての制度を規定していた。


何度も同じことが問われているのがよく分かることでしょう。


それでは,今日の問題は,上記のうちの第25回の問題です。



第25回・問題64

我が国における戦前の低所得・貧困者救済の内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 恤救規則では,生活困窮者が生活に必要な食料を現物で給付していた。

2 方面委員制度は,救護法を実施するために創設されたものであり,これを契機にして全国に方面委員が配置された。

3 防貧的な経済保護事業においては,公設市場,公益質屋,公営浴場などの施設が設置され,更に,職業紹介などの失業保護事業が展開された。

4 救護法の成立に伴い,法の運営を行うために内務省に救護課が設置された。

5 軍事救護法は,戦時体制において一般の生活困窮者及び軍人やその家族を救済の対象としていた。


この科目の歴史問題はいつも簡単ですが,さすがは魔の第25回国試と呼ばれる年の問題です。

見たことのないものが並んでいます。


このような問題は,問題の中に手掛かりを見つけて消去する慎重さが求められます。

それでは,詳しく見て行きましょう。


1 恤救規則では,生活困窮者が生活に必要な食料を現物で給付していた。


江戸時代ならともかく恤救規則は明治時代の法律です。

食料の現物給付は考えられません。


米代の金銭給付が正しいです。


よって×。



<余談>


江戸時代,年貢は物納でした。

明治政府になって,1873年に地租改正を行います。

これによって物納から金納に変わりました。


地租改正は明治政府にとっては大事業です。

恤救規則は地租改正の次年の1874年に成立しています。


地租改正は農民の大反発を受けながらも断行しました。

そんな時代背景にあって,食料の現物給付は絶対に行わないはずです。


2 方面委員制度は,救護法を実施するために創設されたものであり,これを契機にして全国に方面委員が配置された。


方面委員制度は1918年にできています。


救護法は,世界大恐慌が起きた年,1929年(にくい年と覚えます)に成立しました。

第29回国試では,


戦前の方面委員による救護法制定・実施の運動は,ソーシャルアクションの事例とされる。(第29回・問題35・選択肢2)


これは正解です。


これから分かるように,方面委員の活動が救護法制定につながっていきます。


救護法の生みの親は方面委員であり,救護法を実施するために創設されたものでは決してありません。


よって×。


3 防貧的な経済保護事業においては,公設市場,公益質屋,公営浴場などの施設が設置され,更に,職業紹介などの失業保護事業が展開された。


これはよく分かりません。こんな時は冷静に▲をつけます。


答えを言うと,これが正解です。



4 救護法の成立に伴い,法の運営を行うために内務省に救護課が設置された。


厚生省設置までの歴史を確認しましょう。


1917(大正6)年 内務省に救護課設置。

1919(大正8)年救護課を社会課に改称。

1920(大正9)年に社会課を社会局に昇格させる。

1938(昭和13)年に内務省から独立して,厚生省を設置する。


初代内務卿は,大久保利通です。


以来ずっと内務省はエリート官庁です。

内務省から独立して厚生省になってもエリート官庁であるのは今も変わりません。


国家予算の30%も預かる官庁です。

当然ですね。



さて,問題に戻ります。


内務省救護課設置は,1917年。


救護法制定は,にくい年の1929年です。


救護法の運営を行うために,内務省に救護課を設置したわけではありません。

軍事救護法(1917年)の事務を行うために,救護課がつくられました。

よって×。


その直後に米騒動が起き,国民の生活が困窮することで国が転覆しかねないことに気づいた政府は,社会事業(現在の社会福祉事業)に関与するようになっていきます。

その事務を行うために,救護課を改変して社会課になります。


5 軍事救護法は,戦時体制において一般の生活困窮者及び軍人やその家族を救済の対象としていた。


軍事救護法は1917年に制定されています。


軍事救護法は,その名の通り,傷ついた兵士,兵士の遺族のうち,貧困に陥った者を対象としていました。


よって×。


一般の生活困窮者は明治初期に制定された恤救規則がその対象としていた時代です。


軍事救護法が一般の生活困窮者を対象とするなら,その後に出来た救護法は必要ないでしょう。


この選択肢は難しいものだと思いますが,軍事救護法が一般の生活困窮者を対象とするなら,救護法の存在価値は何? といった疑問が持てたなら消去できます。


選択肢5を消去出来た人だけが,おそらくこの問題で正解できたのではないでしょうか。


法制度は,適用範囲が重ならないように作られていくことを覚えておきたいです。


<今日の一言>


 知らないものが出題されても,ヒントは必ずどこかにある!!

2024年6月29日土曜日

日本の社会保障制度の仕組み

日本の社会保障制度は,1922年・大正11年にできた炭鉱労働者などのいわゆるブルーカラーを対象とした健康保険法から始まりました。


日本の社会保障制度の施策を整理すると・・・


1962年 社会保障制度審議会による


社会保険 → 一般所得階層に対する施策

社会福祉 → 低所得階層に対する施策

公的扶助 → 貧困階層に対する施策


人口割合でみると


一般所得階層 > 低所得階層 > 公的扶助


となります。


ベンサムによる功利主義「最大多数の最大幸福」で考えると,最大多数なのは一般所得階層なので,社会保険制度を充実させることが,国家全体で見た時,最も幸福度が大きくなります。


さて,今日のテーマは「日本の社会保障制度の仕組み」です。


社会保障制度は,財源によって,社会保険と社会扶助に分けられます。


社会保険は,日本には5つの制度があります。日本の社会保険には財源には公費も使われていますが,基本的には社会保険料を使って運用されます。


そのため,財源割合で言えば,公費が社会保険料を上回ることは絶対にありえません。

公費負担分は社会保険を支えるためのものです。


社会扶助は,児童手当などの各種手当や公的扶助(生活保護)などです。

社会扶助は,公費で行われ,事前の拠出は必要とされていません。


それでは特徴を整理してみましょう。



<社会保険> 

・防貧的に作用する。(貧困にならない)

・保険料の拠出を前提とする。

・保険事故が発生した場合に給付される。

・基本的には給付に所得制限はない(基本的という条件をつけているのは,20歳前に初診日がある場合は,20歳になると障害年金が給付されるが,所得が多いと給付されないため)。


<社会扶助> 

・救貧的に作用する。(貧困から救う)

・事前に納税していなければならないなどの条件はない。

・所得制限があるものが多い。


さて,これらを元に今日の問題です。


第25回・問題63

我が国における社会保険と公的扶助の性質・機能の違いに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会保険は原則として金銭給付により行われ,公的扶助は原則として現物給付により行われる。

2 社会保険は保険料の拠出を給付の前提とし,公的扶助は事前の納税を給付の前提としている。

3 社会保険では個別の事情に応じた給付が行われるのに対し,公的扶助では最低限度の生活を保障するために定型的に一律の給付が行われる。

4 社会保険は貧困に陥った後に給付が開始され,公的扶助は貧困に陥らないように事前に支給される。

5 社会保険では保有する資産に関係なく給付が行われるが,公的扶助では資産調査を経て給付が行われる。


社会保険と公的扶助の違いに関する問題です。


「社会保障」の科目では,社会保険と社会扶助の違いとして出題されます。

2つの科目にまたがるのでしっかり覚えておきたいです。


それでは詳しく見て行きましょう。


1 社会保険は原則として金銭給付により行われ,公的扶助は原則として現物給付により行われる。


どちらも原則は,金銭給付です。


よって×。


公的扶助のうち,原則現物給付なのは,医療扶助と介護扶助の2つだけです。

社会保険も基本は,金銭給付です。医療保険と介護保険は,原則現物給付です。


医療と介護は,それぞれのサービスを提供することで,それぞれのニーズを充足するからです。


2 社会保険は保険料の拠出を給付の前提とし,公的扶助は事前の納税を給付の前提としている。


公的扶助は,貧困層を対象としています。


生活保護は,憲法第25条の生存権保障,つまりは「健康で文化的な最低限度の生活保障」のための法律です。


事前の納税を前提としていたら,セーフティネットとしての機能は果たさなくなってしまいます。


もちろんこんな規定はありません。


よって×。


3 社会保険では個別の事情に応じた給付が行われるのに対し,公的扶助では最低限度の生活を保障するために定型的に一律の給付が行われる。


社会保険は,その保険が設定した保険事故が発生した場合に給付されます。


個別の事情は考慮されません。


公的扶助は,最低限度の生活を維持できない不足分を給付するものです。


社会保険の記述も公的扶助の記述もどちらも間違いです。


よって×。


4 社会保険は貧困に陥った後に給付が開始され,公的扶助は貧困に陥らないように事前に支給される。


社会保険は,貧困に陥らないように防貧的に機能します。


公的扶助は貧困に陥った人を救うために機能します。


よって×。


5 社会保険では保有する資産に関係なく給付が行われるが,公的扶助では資産調査を経て給付が行われる。


これは正解です。資産調査(ミーンズテスト)が行われるのは,公的扶助です。


「貧困に対する支援」は,覚えるアイテムが少ないので,法制度系の科目の中では最も点数が取りやすい科目です。

2024年4月23日火曜日

現場を知っていることで引っ掛けられることもある

福祉現場を知らないよりは,知っていた方が法制度の理解はしやすいので有利だと思います。学生もおそらく自分が実習した領域は他の領域よりもきっと理解しやすいはずです。


しかし,実際に働いていることで,逆に間違ってしまうこともあるので注意したいです。


例えば,今日の問題で取り上げる「生活福祉資金貸付制度」です。


この制度の対象世帯は,低所得者世帯,障害者世帯,高齢者世帯となっています。


母子世帯は対象世帯に入っていません。


母子世帯には,母子父子寡婦福祉資金があるからです。


ただし,母子世帯であっても同資金を利用できない時に生活福祉資金を利用する場合もあります。


しかし,制度上は,母子世帯は対象としていないと覚えなければなりません。


今日の問題です。


第26回・問題69 

生活福祉資金貸付制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 生活福祉資金の借入れの申込みは民生委員を介して行わなければならない。

2 生活福祉資金の貸付金を償還期限までに返却しなかった場合,延滞利子を付して返済しなければならない。

3 連帯保証人を立てないと生活福祉資金の貸付を受けることができない。

4 生活福祉資金は重複貸付が禁止されているため,総合支緩資金の貸付を受けた場合,教育支援資金の貸付を受けることはできない。

5 生活福祉資金の借入れの申込み先は福祉事務所である。


生活福祉資金貸付制度は,生活困窮者自立支援法が出来たことで平成27年に多少変更されています。


変更点は,


生活困窮者自立支援制度の利用の要件化

総合支援資金・緊急小口資金等(臨時特例つなぎ資金を含む)の貸付は,自立相談支援事業の利用を要件とする(原則)。


緊急小口資金の見直し

公共料金の必要最小限の滞納分の解消などで緊急的支援が必要な場合,生活困窮者自立支援制度と連携して貸付対象とする。


それでは詳しく見ていきます。


1 生活福祉資金の借入れの申込みは民生委員を介して行わなければならない。


生活福祉資金を利用するに当たっては,民生委員の支援を受けますが,申し込みの際に民生委員を介する必要はありません。


よって×。


利用前なら,自分の地区の担当している民生委員は誰かも知らないかもしれません。


2 生活福祉資金の貸付金を償還期限までに返却しなかった場合,延滞利子を付して返済しなければならない。


これはその通りです。正解です。


ただし,手続きをして認められれば,返済の猶予や免除があります。

その手続きをしないと,この選択肢のように,延滞利子を付して返済することとなります。


この選択肢を出題した意味がわかるでしょう。


3 連帯保証人を立てないと生活福祉資金の貸付を受けることができない。


連帯保証人を立てなければならない資金も中にはありますが,多くの資金の貸付には連帯保証人を立てなくても利用できます。


ただしその場合は有利子になります。


緊急小口資金・教育支援費・就学支度費は,もともと保証人不要で無利子で貸し付けが受けられます。


よって×。


4 生活福祉資金は重複貸付が禁止されているため,総合支緩資金の貸付を受けた場合,教育支援資金の貸付を受けることはできない。


必要であれば,重複して貸付を受けることはできます。


よって×。

これは何度も出題されています。


5 生活福祉資金の借入れの申込み先は福祉事務所である。


生活福祉資金の実施主体は,都道府県社協です。


窓口は市町村社協です。


窓口が市町村社協ですし,パンフレットを配布しているのも市町村社協なので実施主体も市町村社協だと思われがちですが,実施主体は都道府県社協です。間違えないように注意してください。

2024年4月22日月曜日

社会福祉士が忘れてならないもの

今日は,自立支援プログラムです。

出題されるポイントは,明確です。


さて,それでは今日の問題です。


第26回・問題68 

事例を読んで,自立支援プログラムによる支緩の進め方に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事例)

 Cさんは重いうつ病を発症し療養に専念するために退職したが,経済的に困窮したため生活保護を申請した。保護開始後,Cさんは療養を要するものの病状は安定してきた。しかしCさんには,なお就労に対する躊躇があるようである。

1 Cさんには,できるだけ早期に保護から脱却することを目指す就労支援プログラムへの参加が提案された。

2 Cさんの自立支援プログラムへの参加は,ケースワーカーの判断で決定された。

3 Cさんの自立支援の内容は,共通の統一した支援目標に基づき作成されることになった。

4 Cさんに対しては,自立支援プログラムに参加することが,生活保護を継続するための必要条件であるとの説明がなされた。

5 Cさんには,ボランティア活動や試行雇用の機会の提供を視野に入れた自立支援プログラムが提案された。

 

まずは,自立支援プログラムを勉強しましょう。


自立支援プログラムとは

生活保護受給者への就労支援であり,福祉事務所が事前に類型化した自立支援プログラムを実施する人を選んで,本人の同意を得て実施するものです。


ポイントは,自立支援プログラムは,本人の同意を得て実施するものであり,実施を拒否したからといって,保護の停止&廃止が行われるものではありません。


それでは詳しく見ていきましょう。



1 Cさんには,できるだけ早期に保護から脱却することを目指す就労支援プログラムへの参加が提案された。


Cさんはうつ病です。回復期が大切です。

焦っちゃだめです。

よって×。



2 Cさんの自立支援プログラムへの参加は,ケースワーカーの判断で決定された。


自立支援プログラムは,あくまでも本人の同意を得て実施されるものです。

よって×。



3 Cさんの自立支援の内容は,共通の統一した支援目標に基づき作成されることになった。


自立支援プログラムは類型化して作成されています。つまりプログラムは何種類かありますが,個別に作っているわけではありません。共通の統一した支援目標に基づき作成されるのであれば個別化は完全になくなってしまいます。

よって×。


もともと自立支援プログラムが始まった背景には,優れたケースワーカーの取組みをみんなで共有しようとしたことがあります。


類型化されたプログラムを使って支援したとしても,支援目標は個別化されるものだと思います。


 4 Cさんに対しては,自立支援プログラムに参加することが,生活保護を継続するための必要条件であるとの説明がなされた。


自立支援プログラムの参加を拒否しても,保護が廃止されることを意味するものではありません。


保護は最低限度の生活保障です。


もし,参加を拒否することによって保護が廃止されるのだったら,


「自立支援プログラムへの参加を拒否しましたね。あなたは自立する意欲はありません。よって保護しません。死んでください」ということにつながってしまいます。



5 Cさんには,ボランティア活動や試行雇用の機会の提供を視野に入れた自立支援プログラムが提案された。


自立支援プログラムは,就労に結びつけるためのきっかけとなるものです。


ここに優秀ケースワーカーの実践力がプログラムとなって活かされてきます。


正解はこの選択肢しか有り得ません。


絶対に覚えておいていだたきたいのは,保護の廃止は,最低限度の生活保障として機能するセーフティネットの役割を放棄することになることです。


セーフティネットは最後の最後に機能するものです。

その先はありません。

2024年4月20日土曜日

第26回国試は国試突破のヒント満載!

ずっと第26回国試を見てきています。

なぜこんな古い問題を引っ張ってきているのか不思議に思っている人もいるでしょう。


直近3年間の国試よりもそれ以前の国試から同様の問題が出題されることが多い傾向があります。それに加えて,第26回は仕切り直しの回です。

第25回の反省でスタンダードな出題が多いために,過去問を使っての勉強にとても向いた問題がそろっています。


それでは,今日の問題です。


第26回・問題66 

生活保護法で規定されている被保護者の権利及び義務に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 被保護者は,給付される保護金品に対して租税その他の公課を課せられることがない。

2 被保護者が文書による指導・指示に従わない場合は,保護の実施機関は直ちに保護の停止・廃止の処分を行わなくてはならない。

3 収入,支出その他生計の状況について変動があったときは,速やかに被保護者の住所地を担当する民生委員に届け出なければならない。

4 被保護者は,絶対的扶養義務関係にある同居の親族に限り,保護を受ける権利を譲り渡すことができる。

5 被保護者が生活の維持向上に向けて努力を怠っていると認められる場合は,福祉事務所長はその費用の全部又は一部を,その者から徴収することができる。


よくぞここまでスタンダードな問題をそろえたと思います。


第25回では,本来合格すべき実力をもった人も不合格になった国試です。


それでもあきらめることなく,勉強を続けて受験した人はとてもよい点数で合格しました。


スタンダードな問題をそろえたのは,前回のしょく罪であったように思えます。


それ以来,勉強した人は得点できるような出題が続いています。良い時代になったものです。


だからと言って勉強不足の人を簡単に合格させてくれるような試験ではないことは間違いありません。


被保護者の権利及び義務


不利益変更の禁止

被保護者は,正当な理由がなければ,既に決定された保護を,不利益に変更されることがない。


公課禁止

被保護者は,保護金品を標準として租税その他の公課を課せられることがない。


差押禁止

被保護者は,既に給与を受けた保護金品又はこれを受ける権利を差し押えられることがない。


譲渡禁止

保護又は就労自立給付金の支給を受ける権利は,譲り渡すことができない。


生活上の義務

被保護者は,常に,能力に応じて勤労に励み,自ら,健康の保持及び増進に努め,収入,支出その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り,その他生活の維持及び向上に努めなければならない。


届出の義務

被保護者は,収入,支出その他生計の状況について変動があつたとき,又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは,すみやかに,保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。


指示等に従う義務

①被保護者は,保護の実施機関が,被保護者に対し,必要な指導又は指示をしたときは,これに従わなければならない。

②保護施設を利用する被保護者は,保護施設の管理規程に従わなければならない。

③保護の実施機関は,被保護者が義務に違反したときは,保護の変更,停止又は廃止をすることができる。

④保護の実施機関は,保護の変更,停止又は廃止の処分をする場合には,当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合は,あらかじめ,当該処分をしようとする理由,弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。


費用返還義務

被保護者が,急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたときは,保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して,すみやかに,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。


覚えるべき項目はこれだけです。


これをもとに詳しくみていきましょう。


1 被保護者は,給付される保護金品に対して租税その他の公課を課せられることがない。


公課禁止です。これが正解です。


2 被保護者が文書による指導・指示に従わない場合は,保護の実施機関は直ちに保護の停止・廃止の処分を行わなくてはならない。


指示等に従う義務④保護の実施機関は,保護の変更,停止又は廃止の処分をする場合には,当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合は,あらかじめ,当該処分をしようとする理由,弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。


「直ちに」ではありません。「弁明の機会」が与えられています。


よって×。


職権保護は現行法に残っていますが,それは国民の権利を擁護するためのものです。指示等に従う義務のこの項も国民の権利性を色濃く出していると思いませんか?


生活保護法は憲法第25条の生存権規定に基づくものです。直ちに保護の停止・廃止の処分を行うことはありえません。


3 収入,支出その他生計の状況について変動があったときは,速やかに被保護者の住所地を担当する民生委員に届け出なければならない。


届出の義務

被保護者は,収入,支出その他生計の状況について変動があつたとき,又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは,すみやかに,保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。


よって×。


余談です。


法律用語には,

①ただちに

②すみやかに

③遅滞なく

があります。


最もスピードが求められるのは「①ただちに」です。届出の義務は「②すみやかに」です。なるべく早く,という意味です。こんなところにも権利性が見えてきます。


「③遅滞なく」は,福祉計画でよく見られます。滞りなく,という意味でスピードは求められません。「遅滞なく都道府県知事に提出しなければならない」といった具合です。少々遅くても提出すればよいわけです。


保護を受けることが国民の権利だったなら「遅滞なく」でも良いのでは,と思われるかもしれません。


しかし,「遅滞なく」では,「少々遅くても」の少々の範囲があいまいなので,被保護者の現況を把握するためには,不適切なのです。


4 被保護者は,絶対的扶養義務関係にある同居の親族に限り,保護を受ける権利を譲り渡すことができる。


譲渡の禁止

保護又は就労自立給付金の支給を受ける権利は,譲り渡すことができない。


誰に対しても譲渡することはできません。よって×。


5 被保護者が生活の維持向上に向けて努力を怠っていると認められる場合は,福祉事務所長はその費用の全部又は一部を,その者から徴収することができる。


指示等に従う義務及び費用返還義務はありますが,被保護者が生活の維持向上に向けて努力を怠っているからといって,返還しなければならない,という規定ありません。


今日の問題はとても優れているものだと思います。



まず1つめの選択肢です。


公課禁止は,生活保護は,最低限度の生活保障(ナショナルミニマム)なので,税金が課せられると最低限度の基準を下回ってしまうからです。


ここで「あれ?」と思う人もいると思います。

あれとは消費税のことです。


この問題をクリアするためには

①受給者証を示して,消費税を免除する

②あらかじめ消費税分を多く給付しておく

といった方法が考えられます。


日本政府が選んだ方法は②です。

生活保護法に照らし合わせると消費税も払うことは必要とされない,と考えられます。

しかし日本の官僚は極めて優秀なので,効率的な手法を考えます。


それが②の方法です。個別対応で免除するのではなく,先に消費税分を多く給付しておけば,個別対応する手間が必要なくなります。福祉政策を国民に受け入れやすくするためには工夫が必要です。


①を選択すれば,「私は被保護者です」と宣言することになり,スティグマ感を強めることになります。さらに各事業所では,一般世帯と被保護世帯に対して別の対応が必要となり,課税システムが複雑となります。



公課禁止から考えると,被保護者から消費税徴収は整合性はないと言えるのかもしれませんが,それを荒立てても誰の利益にはなりません。


2つめの選択肢


被保護者が文書による指導・指示に従わない場合は,保護の実施機関は直ちに保護の停止・廃止の処分を行わなくてはならない。


保護を受けることは国民の権利です。権利を突然奪うことはあり得ません。


ちゃんと弁明のチャンスを与えることによって,国民の権利を守っているのです。


今日の問題を教材に学生に考えさせる教員もいることでしょう。国試はいろいろ学ぶ情報の宝庫です。


今日の問題で,考えておきたいものは5つめの選択肢です。


被保護者が生活の維持向上に向けて努力を怠っていると認められる場合は,福祉事務所長はその費用の全部又は一部を,その者から徴収することができる。


法制度にあいまいさがあると「ストリートレベルの官僚」(法を実行する官僚)の恣意的な運用を認めてしまうことになります。

「被保護者が生活の維持向上に向けて努力を怠っている」とストリートレベルの官僚がどのように判定するのでしょうか。


法はこのようなあいまいさは許されません。

もしそのようなあいまいさが残る法は,極めて危険なものとなります。


生活保護は,最低限度の生活保障です。給付される額は最低限度の生活を守るためのものです。もしそこから徴収するようなことがあれば,「あなたは努力していないので,生きる権利はありません。死になさい」と言っていることと同じです。


社会福祉士の国試には,医師の国家試験にあるようないわゆる「ドボン問題」(合格基準点に到達していても間違っていたら不合格とする問題のこと)はありません。


しかし,もしドボン問題を設定するなら,この選択肢でしょう。

今日の問題自体は決して難しくはありませんが,実は社会福祉士としての資質を問う問題だと考えられます。

2024年4月19日金曜日

あと数点得点を上げる勉強法

 あいまいな知識が4,000あるより

確実な2,000の知識が必要です!


確実な知識は,法制度にかかわるもののほうがつけやすいです。


理論系は,確実な知識にするのはそんなに簡単ではありません。


今は,どの辺りの科目をやっていますか? 


参考書は国試の出題順に作られているものが多いので,医学概論は別にして,理論系科目が続きます。


心理学と社会学,そしてその次の原理,理論系科目が続きます。


そこに時間をかけすぎて,得点しやすい科目が手薄になってしまうのは,もっとも不適切な勉強法です。


法制度は勉強すればそのまま得点になります。


不合格になる人の多くは,理論系も法制度系も確実な知識になっていない状態で国試に臨む傾向があります。


本来得点できなければならない問題は確実に得点する。


当たり前に思えるかもしれませんが,意外とこれができていない人が多いです。


勉強時間には科目ことにメリハリをつけて行うこと。


結局は,これが一番得点を上げるための方法だと言えます。


それでは今日の問題です。


第26回・問題65 

生活保護における扶助の種類とその内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 光熱費・家具什器等の世帯単位の経費は,生活扶助の第1類費に含まれる。

2 被保護者が,入退院,通院をした場合に要した交通費は,生活扶助に含まれる。

3 介護施設に入所している被保護者の基本的な日常生活に要する費用は,介護扶助に含まれる。

4 小・中学校の入学準備金は,生活扶助に含まれる。

5 介護保険の保険料は,介護扶助に含まれる。


「貧困に対する支援」は,法制度が単純な科目なので,勉強した分,すぐ実力に変わる科目です。


歴史も出題されますが,他の科目とつながるものが多いのが特徴です。


この科目に勉強時間をかけないのは実にもったいないことです。


生活保護には,現在は8つの扶助があります。


それぞれはそんなに複雑ではないので,すぐ覚えることができることでしょう。


さて,それでは詳しく見ていきましょう。


1 光熱費・家具什器等の世帯単位の経費は,生活扶助の第1類費に含まれる。


生活扶助の基準生活費には,個人単位の第1類と世帯単位の第2類があります。

よって×。


2 被保護者が,入退院,通院をした場合に要した交通費は,生活扶助に含まれる。


医療扶助にかかる費用は,生活保護費全体の半分を占めます。


入退院,通院をした場合に要した交通費,つまり移送費は医療扶助に含まれます。


よって×。


3 介護施設に入所している被保護者の基本的な日常生活に要する費用は,介護扶助に含まれる。


介護扶助は,介護保険のサービスを受けたときの利用料に対して給付されるものです。


生活保護を受けていない一般の人のホテルコストは,介護保険から給付されず自己負担となっています。


なぜなら施設入所した方が,生活費が安くなる,ということでは居宅生活者とのバランスが取れないためです。


生活保護の居宅生活者には生活扶助から基準生活費が給付されます。


施設入所すると基準生活費は給付されず,その代わりに介護施設入所者基本生活費が給付されます。


よって×。


4 小・中学校の入学準備金は,生活扶助に含まれる。



生活扶助には,臨時に必要になった場合に給付される一時扶助費があります。

これには,入学準備金も含まれます。


よって〇。


5 介護保険の保険料は,介護扶助に含まれる。


介護扶助は,先述したように,介護保険のサービスを受けたときの利用料に対して給付されるものです。


よって×。


介護保険料は,生活扶助の介護保険料加算が対応します。


今日の問題は,知識がないと正解できません。しっかり覚えたいです。

2024年4月17日水曜日

生存権は20世紀的権利です

 現・生活保護法は憲法第25条の理念を具現化するものです。


この第25条は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」としています。いわゆる生存権です。


古典的な市民権は,自由権です。国家からの干渉を受けない自由を求めて,フランス革命などの市民革命が起きました。自由権は市民が主役です。


それに対して,生存権を含む社会権は,歴史的に見れば,比較的新しい権利です。


さて,現・生活保護法ができる前に,1946年に旧・生活保護法が成立しています。


あとで基本原理・原則を紹介しますが,その中の一つに無差別平等があります。


困窮に陥った原因は問わない,という原則ですが,旧法でも無差別平等が規定されていましたが,実際には働く気のない者や素行が悪い者は保護しないこととなっていました。


前置きはこの辺までにして,今日の問題に入りましょう。


第26回・問題64 

生活保護法で規定されている基本原理,原則に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 保護は,個人を単位としてその要否及び程度を定めるものとされている。ただし,これによりがたいときは,世帯を単位として定めることができる。

2 生活保護法により保障される最低限度の生活は,肉体的な生存を維持する程度とされている。

3 保護の申請は,要保護者,その扶養義務者のほか,要保護者の同居の親族がすることができる。

4 保護は,都道府県知事の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度のものとされている。

5 生活保護法は,最低限度の生活を保障するとともに,社会的包摂を助長することを目的とすると定めている。


生活保護法の基本原理・原則はかなりの確率で出題されます。


必ず覚えておきましょう。


生活保護の原理は,


国家責任

無差別平等

最低生活

保護の補足性


です。


生活保護の原則は,


申請保護の原則

基準及び程度の原則

必要即応の原則

世帯単位の原則


です。


このうち分かりにくいのは,保護の補足性,基準及び程度の原則,必要即応の原則でしょう。


保護の補足性とは

使えるものは活用して,それでも最低限度の生活に不足する場合に保護すること。扶養義務者の扶養が生活保護法による保護に優先して行われることも補足性の原理。


基準及び程度の原則とは

厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者が金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。

前項の基準は,要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて,且つ,これをこえないものでなければならない。


注意すべきなのは,


これをこえないものでなければならない


生活保護の基準は,最低限度の生活ですから,これをこえても下回ってもだめで,その基準ライン上でなければなりません。


話は飛びます。


イギリスの改正救貧法では,劣等処遇の原則が示されますが,これは自活する労働者よりも下の基準となります。そのライン上ではだめです。


必要即応の原則

保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して,有効且つ適切に行うものとする。


それでは詳しく見ていきましょう。


1 保護は,個人を単位としてその要否及び程度を定めるものとされている。ただし,これによりがたいときは,世帯を単位として定めることができる。


世帯単位の原則があります。


よって×。


2 生活保護法により保障される最低限度の生活は,肉体的な生存を維持する程度とされている。


最低限の生活は,憲法第25条の「健康で文化的な生活」を維持するものです。これは簡単ですね。


「肉体的な生存を維持する」でぴーんと来た人は,かなり勉強が進んでいる方です。この調子でがんばりましょう。


産業革命は多くの雇用を生み出しました。


それと同時に多くの貧困も生み出しました。ブースによるロンドンの調査,ラウントリーによるヨークの調査で,貧困が発見されました。


ラウントリーは,マーケットバスケット方式という科学的手法で,肉体的な生存を維持する程度の貧困を「第一次貧困」,ギャンブルや飲酒などをしなければ生活できる程度の貧困を「第二次貧困」としました。


因みにこの時代の貧困は「絶対的貧困」です。

周りの人と比べて劣っていることを貧困「相対的貧困」の概念が生まれてくるのは1950年なので,かなり後の時代です。


3 保護の申請は,要保護者,その扶養義務者のほか,要保護者の同居の親族がすることができる。


これが正解です。旧・生活保護法までは,職権保護でした。


現行法で保護請求権が認められて,不服申立制度ができました。


ただし,現在でも職権保護は残ります。


 4 保護は,都道府県知事の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度のものとされている。


保護は国家責任によって行われます。基準を定めるのは,厚生労働大臣です。


よって×。


最低限度の生活は,地域によって変わるので,生活扶助,住宅扶助,葬祭扶助には地域ごとに給地区分があります。



 5 生活保護法は,最低限度の生活を保障するとともに,社会的包摂を助長することを目的とすると定めている。



社会的包摂(ソーシャルインクルージョン)の概念が生まれたのは1980年代のヨーロッパです。


誰もが排除されず,包み込まれる社会の実現を目指すものです。


助長するのは自立です。


よって×。


自立は,就労による経済的自立だけではありません。

日常の生活管理ができる日常生活自立

社会の中で生活できる社会生活自立


もあります。

2024年4月16日火曜日

どのくらいの知識量があれば合格できるか?

社会福祉士の国試の特徴は・・・


出題範囲が広い


ケアマネ試験と社会福祉士国試の試験の違い


ケアマネ ⇒ 基本は介護保険法

社会福祉士 ⇒ 社会保障制度全般


法制度だけでもこれだけ違います。


これにソーシャルワーク理論,心理学・社会学,福祉政策などが加わります。


ケアマネと同じように短期決戦で国試に臨むことの危険性がよくわかることでしょう。


社会福祉士の試験のもう一つの特徴は・・・


深い知識は求められない


一見すると深そうに見えるかもしれません。


しかしそれほど深い知識は求められていないのです。

それなのに,なぜ簡単には解けないのでしょうか。


試験委員は,国試問題を作る時は,過去問の焼き直しをしないからです。


法制度のように法の条文を変えて出題するものは大きくは変化しません。


しかし心理学や社会学などの理論に基づくものは,法の条文のように定型文がないため,表現が変わります。


そのため,丸暗記は通用しません。


国試に詳しいある方に,伺ったところ,国試合格に必要な知識は,19科目で2,000~4,000だとのことです。


19科目あるので,1科目に割ると,100~200という数になります。


この数が多いか少ないかは,人によって感じ方が違うと思いますが,「意外と少ない」と感じる人が多いように感じます。


少なくても済む理由は,科目ごとに内容が完全に独立しているわけではなく,それぞれが関連し合っているからです。


国試で重要なのは,必要以上の多くの知識を持つことではありません。


想像力=創造力


テキストを読むだけが勉強ではなく,日常にあるものすべてが勉強です。


特に社会科学系の知識は,日常から得られるものは多いです。


勉強することで情報の感度が上がると,今まで素通りしていた情報が耳にとどまるようになります。


その積み重ねは実に大きいと思います。


先生によっては「参考書をひたすら読むこと」と言う人もいるかもしれません。


その方法も決して間違いではありません。参考書は正しい文章で書かれているので,間違いの文章に出会うと「違和感」を感じるようになります。


これが参考書をひたすら読むこと,という勉強法の意味だと考えます。


頭に残るまで読むということになると,人によって違いは大きいと思いますが,少なくても3回は必要だと思います。せっかくなら,自分なりに理解しながら読んでいきたいものです。


それでは,今日の問題です。


第26回・問題63 

2001年度(平成13年度)以降の生活保護の全国的な動向に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 被保護世帯及び被保護人員ともに2008年のリーマンショックを契機に増加に転じた。

2 医療扶助費の生活保護費全体に占める割合は,他法の医療制度の充実により,この間,大きく減少する領向にある。

3 保護廃止人員は,一貫して増加している。

4 保護受給期間別の被保護世帯数の推移をみると「3年~5年未満」が一貫して多い。

5 世帯類型別にみた被保護世帯の構成比をみると,「その他の世帯」の割合が大きく増加している。



今日から「貧困に対する支援」に入ります。


この科目を苦手とする人もいると思いますが,覚えなければならないものはとても数少ないです。


その点では,得点しやすい科目になりますし,問題によっては,満点を取ることも十分可能な科目です。


この科目のメインの法制度である生活保護法の出題ポイントはほぼ決まっています。


それでは詳しく見ていきましょう。


1 被保護世帯及び被保護人員ともに2008年のリーマンショックを契機に増加に転じた。


昭和の最末期から平成初期にかけてバブル景気というものがありました。ところが近年ではバブル景気と呼ばず,平成景気と呼ぶらしいです。


第29回国試でそのように出題されてびっくりした人もいたのではないかと思います。


いつ平成景気が終わったのかは諸説ありますが,少なくとも1991年前半には終わっていました。


この好景気の期間は,平成と比べると昭和の方が長いので,平成景気と呼ぶのは違和感があります。いわゆるバブル景気が終わったことに国民が気づくのはまだ先のことです。そういった意味では,「平成景気」という名称は適切なのかもしれません。


バブルの象徴として紹介されるのは,ジュリアナ東京というディスコです。開業したのは1991年5月,閉店したのは1994年8月です。実はバブルがはじけたあとです。


バブルがはじけて企業ががたついていた時期でも,バブルの味を覚えた人は消費をすぐ引き締めることはしません。


法人税収入より消費税の方が安定した税収となることがわかると思います。


保護率を示したグラフを見るとすぐ分かりますが,平成景気後もしばらく保護率は低下し,1995年の0,7パーセントを底として上昇し,現在では1.5パーセントを超えたところにあります。


リーマンショックも大きかったですが,そこから上昇が始まったわけではありません。

もっと前から上昇しています。


よって×。


平成景気後,「失われた30年」とも言われる1990年代以降は,企業がそれまでの経営システムを大きく変え,雇用形態も変えました。


2 医療扶助費の生活保護費全体に占める割合は,他法の医療制度の充実により,この間,大きく減少する領向にある。


生活保護費は約4兆円です。社会保障給付費が120兆円を超える中,生活保護費の占める割合はほんのわずかです。


生活扶助基準を引き下げても全体から比べると大した額にはなりません。


医療扶助費は全体の約半分を占めますので,約2兆円です。もし生活保護費を本気で引締めするのであれば,医療扶助が効果的です。


よって×。


扶助費を多い順から並べると,医療扶助,生活扶助,住宅扶助の順ですが,実にこの3つで90%を占めます。


3 保護廃止人員は,一貫して増加している。


保護の廃止理由で一般多いのは,死亡です。


これがわかっていると,廃止人員が一貫して増加するとは考えにくいです。


実際には増えたり,減ったりして推移しています。


よって×。



4 保護受給期間別の被保護世帯数の推移をみると「3年~5年未満」が一貫して多い。



以前は,5~10年未満が最も多い時もありましたが,近年多いのは1~3年未満です。


よって×。



5 世帯類型別にみた被保護世帯の構成比をみると,「その他の世帯」の割合が大きく増加している。


最も多い世帯は「高齢者世帯」です。


高齢者世帯はもともと数が多いので,当然割合も大きくなります。


その他の世帯は,割合は少ないものの,2005年から2013年までで,一番伸び率が大きく,実に7倍にもなっているそうです。


ミクロの視点で見ていると,よく分からないものでも,全体を俯瞰してみると分かることはよくあります。

2024年1月19日金曜日

福祉事務所の就労支援員の業務

福祉事務所は,就労自立を目指して就労支援も行っています。

ハローワークも,就労支援を行っています。

 

福祉事務所には,就職支援コーディネーター就労支援員が配置されています。

 

ハローワークには,就職支援ナビゲーターが配置されています。

 

さて,今日のテーマは,そのうちの福祉事務所の就労支援員の業務です。

 

なぜ,わざわざ「福祉事務所の」とつけているかと言えば,就労支援員は,就労支援事業所にも配置されているからです。

 

福祉事務所の就労支援員の業務

・ハローワークへの同行訪問

・履歴書の書き方の指導

・面接の練習 など 

 

それでは,今日の問題です。

 

32回・問題145 

福祉事務所の就労支援員の業務に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 公共職業安定所(ハローワーク)への同行支援

2 障害者雇入れ計画の策定指導

3 健康管理の指導

4 職業能力開発促進法に基づく公共職業訓練

5 職場適応のためのジョブコーチ支援計画の策定

 

これまでにはあまりないタイプの問題です。

 

これからはこういったピンポイントの問題も出題されるようになるのでしょう。

 

知識のありなしが明確に現われるので,受験者泣かせと言えるのかもしれません。

 

それでは,解説です。

 

1 公共職業安定所(ハローワーク)への同行支援

 

これが正解です。公共職業安定所(ハローワーク)への同行支援は,福祉事務所に配置される就労支援員の業務の一つです。

 

2 障害者雇入れ計画の策定指導

 

障害者雇入れ計画とは,障害者雇用促進法に基づくもので,障害者雇用率を満たせなかった企業が策定するものです。

 

あまり知られていないかもしれませんが,外国人雇用や障害者雇用の届出先は,ハローワークです。

 

ハローワークでは,その報告書を見て,企業に指導を行います。

 

3 健康管理の指導

 

健康管理の指導を行うのは,保健師等です。

 

4 職業能力開発促進法に基づく公共職業訓練

 

職業能力開発促進法に基づく公共職業訓練をあっせんするのは,ハローワークの業務です。

 

5 職場適応のためのジョブコーチ支援計画の策定

 

ジョブコーチ支援計画を策定するのは,ジョブコーチです。

 

〈今日の注意ポイント〉

 

今日の問題には,登場していませんが,ハローワークには,就職支援ナビゲーターが配置されています。

 

ハローワークの就職支援ナビゲーターの業務

・職業相談

・職業紹介

・履歴書・職務経歴書の個別添削 など

 

ハローワークでも福祉事務所の就労支援員と同じような業務を行っていることがわかりますね。

 

ハローワークの就職支援ナビゲーターと福祉事務所の就労支援員の業務を比較すると,福祉事務所の就労支援員の業務の「公共職業安定所(ハローワーク)への同行支援」が明確です。

 

そのためにこれを正解にした問題を作ったのではないかと思います。

 

福祉事務所に配置される就職支援コーディネーターは,コーディネーターという名称のとおり,ハローワーク等と連携する役割を担います。

 

それよりも重要なことは,

 

福祉事務所 コーディネーター

ハローワーク ナビゲーター

 

これをしっかり覚えたいです。

2023年11月3日金曜日

生活保護の種類と内容で間違いやすいもの

生活保護の扶助の種類は現在8つあります。

 

そのうち,間違いやすいものは以下の通りです。

 

〈間違いやすいもの〉

小中学校等の入学にかかる費用

生活扶助

高等学校の授業料

生業扶助

介護保険サービスの利用料

介護扶助

介護保険料

生活扶助

入院した時の生活費

生活扶助

施設入所した時の生活費

生活扶助

 

それでは,今日の問題です。


32回・問題65

生活保護の種類と内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 生活扶助は,衣料品費,食料品費,葬祭費などを給付する。

2 教育扶助は,高等学校の就学に係る学用品費について給付する。

3 住宅扶助は,家賃等のほか,補修その他住宅の維持に必要なものを給付する。

4 医療扶助は,原則として金銭給付によって行うものとする。

5 出産扶助は,原則として現物給付によって行うものとする。

 

ものすごくスタンダードな問題です。

この問題に限らず,「貧困に対する支援」の問題は,スタンダードな内容が多い傾向にあります。

 

確実に押さえて,得点したいです。

 

それでは,解説です。

 

1 生活扶助は,衣料品費,食料品費,葬祭費などを給付する。

 

衣料品費と食料品費は,生活扶助が対応します。

しかし,葬祭費に対応するのは,葬祭扶助です。

 

2 教育扶助は,高等学校の就学に係る学用品費について給付する。

 

高等学校の就学に係る学用品費に対応するのは,生業扶助の高等学校等就学費です。

教育扶助が対象とするのは,義務教育に関する費用です。

 

3 住宅扶助は,家賃等のほか,補修その他住宅の維持に必要なものを給付する。

 

これが正解です。

 

4 医療扶助は,原則として金銭給付によって行うものとする。

5 出産扶助は,原則として現物給付によって行うものとする。

 

現物給付が規定されているのは,医療扶助と介護扶助です。

 

それ以外は,金銭給付を原則とします。

 

〈今日の注意ポイント〉

 

医療扶助が現物給付なので,出産扶助も現物給付だと思いがちです。

 

しかし,解説に書いたように,現物給付を原則とするものは,医療扶助と介護扶助しかありません。

 

このようになるべくシンプルに覚えるのが,知識を確実にするコツです。

2023年11月2日木曜日

生活保護法の基本原理・原則の注意ポイント

 生活保護法には,基本原理,基本原則が示されています。

高頻度で出題されています。


<生活保護法の基本原理・原則>

 

国家責任の原理 ➡ 国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行う。

 

保護は国の責任で行います。国家責任は,GHQの指令書「社会救済(SCAPIN775)」で要求されたもので,旧・生活保護法から貫かれています。

 

 

無差別平等の原理 ➡ 困窮に陥った理由により差別を受けることなく,また信条・性別・社会的身分によって差別されることなく,保護を受けることができる。

 

無差別平等もGHQの指令書「社会救済(SCAPIN775)」で要求されたもので,旧・生活保護法から貫かれています。

 

旧法と現行法の違いは,旧法は欠格条項があるのに対して,現行法で本来の無差別平等が実現しています。

 

 

最低生活の原理 ➡ この法律により保障される最低限度の生活は,健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。

 

最低限度の生活保障は,憲法第25条「生存権」が根拠となっています。最低限度の生活は「健康で文化的」な生活です。

 

 

補足性の原理 ➡ 保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。扶養義務者による扶養が保護に優先して行われる。

 

保護は最低限度の生活を送るのに不足する分を扶助するものです。

 

 

申請保護の原則 ➡ 保護は,要保護者,その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し,要保護者が急迫した状況にあるときは,保護の申請がなくても,必要な保護を行うことができる。

 

 

保護は申請に基づき行われますか,急迫した場合は職権保護も行われます。職権保護は,恤救規則以来ずっとあります。

 

しかし現・生活保護法がそれまでと違う点は,「国民は保護を受ける権利があること」が前提としていることです。

 

 

基準及び程度の原則 ➡ 保護は,厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者が金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。

 保護基準は,要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,これをこえないものでなければならない。

 

保護は「最低限度の生活保障」(ナショナルミニマム)です。

 

基準のラインで保護がなされます。

 

この基準をこえても下回ってもだめなのです。

生活扶助には各種加算があります。加算がある理由は加算がないと基準を下回ってしまうからです。

 

必要即応性の原則 ➡ 保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して,有効且つ適切に行うものとする。

 

保護は,個別の必要(ニード)を考慮して行います。有効且つ適切に行うもので画一的に行うものではありません。

 

 

世帯単位の原則 ➡ 保護は,世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し,これによりがたいときは,個人を単位として定めることができる。

 

保護は世帯単位が原則ですが,家族の抱えている問題によっては世帯分離も行われます。

 

 

それでは,今日の問題です。

 

32回・問題64 

生活保護法が規定する基本原理・原則に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 日本国憲法第26条に規定する理念に基づく。

2 保護は,世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。

3 保障される最低限度の生活とは,肉体的に生存を続けることが可能な程度のものである。

4 生活困窮に陥った年齢によって,保護するかしないかを定めている。

5 生活保護の基準は,厚生労働省の社会保障審議会が定める。

 

基本原理・原則は,出題頻度が極めて高いにもかかわらず,言葉が分かりにくいこともあり,難しいと思う人が多いようです。

 

それでは解説です。

 

1 日本国憲法第26条に規定する理念に基づく。

 

26条ではなく,第25条です。

 

25条は,生存権を規定しています。

 

こんな問題を出題するのは変だと思っていましたら,第35回では,第21条と出題されていました。

 

少なくとも第25条くらいは覚えておいてほしいものです。

 

2 保護は,世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。

 

これが正解です。

 

世帯単位の原則です。

 

 

3 保障される最低限度の生活とは,肉体的に生存を続けることが可能な程度のものである。

 

最低限度の生活は,健康で文化的な生活水準を維持することができるものです。

 

 

4 生活困窮に陥った年齢によって,保護するかしないかを定めている。

 

現・生活保護法には,無差別平等の原理が規定されています。

 

5 生活保護の基準は,厚生労働省の社会保障審議会が定める。

 

保護基準を定めるのは,厚生労働大臣です。


〈今日の注意ポイント〉


基準及び程度の原則では,「保護基準は,要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,これをこえないものでなければならない」と規定されています。


「こえるものではなければならない」ではなく,「こえないものでなければならない」です。

こえても下回ってもだめです。

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