福祉現場を知らないよりは,知っていた方が法制度の理解はしやすいので有利だと思います。学生もおそらく自分が実習した領域は他の領域よりもきっと理解しやすいはずです。
しかし,実際に働いていることで,逆に間違ってしまうこともあるので注意したいです。
例えば,今日の問題で取り上げる「生活福祉資金貸付制度」です。
この制度の対象世帯は,低所得者世帯,障害者世帯,高齢者世帯となっています。
母子世帯は対象世帯に入っていません。
母子世帯には,母子父子寡婦福祉資金があるからです。
ただし,母子世帯であっても同資金を利用できない時に生活福祉資金を利用する場合もあります。
しかし,制度上は,母子世帯は対象としていないと覚えなければなりません。
今日の問題です。
第26回・問題69
生活福祉資金貸付制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 生活福祉資金の借入れの申込みは民生委員を介して行わなければならない。
2 生活福祉資金の貸付金を償還期限までに返却しなかった場合,延滞利子を付して返済しなければならない。
3 連帯保証人を立てないと生活福祉資金の貸付を受けることができない。
4 生活福祉資金は重複貸付が禁止されているため,総合支緩資金の貸付を受けた場合,教育支援資金の貸付を受けることはできない。
5 生活福祉資金の借入れの申込み先は福祉事務所である。
生活福祉資金貸付制度は,生活困窮者自立支援法が出来たことで平成27年に多少変更されています。
変更点は,
生活困窮者自立支援制度の利用の要件化
総合支援資金・緊急小口資金等(臨時特例つなぎ資金を含む)の貸付は,自立相談支援事業の利用を要件とする(原則)。
緊急小口資金の見直し
公共料金の必要最小限の滞納分の解消などで緊急的支援が必要な場合,生活困窮者自立支援制度と連携して貸付対象とする。
それでは詳しく見ていきます。
1 生活福祉資金の借入れの申込みは民生委員を介して行わなければならない。
生活福祉資金を利用するに当たっては,民生委員の支援を受けますが,申し込みの際に民生委員を介する必要はありません。
よって×。
利用前なら,自分の地区の担当している民生委員は誰かも知らないかもしれません。
2 生活福祉資金の貸付金を償還期限までに返却しなかった場合,延滞利子を付して返済しなければならない。
これはその通りです。正解です。
ただし,手続きをして認められれば,返済の猶予や免除があります。
その手続きをしないと,この選択肢のように,延滞利子を付して返済することとなります。
この選択肢を出題した意味がわかるでしょう。
3 連帯保証人を立てないと生活福祉資金の貸付を受けることができない。
連帯保証人を立てなければならない資金も中にはありますが,多くの資金の貸付には連帯保証人を立てなくても利用できます。
ただしその場合は有利子になります。
緊急小口資金・教育支援費・就学支度費は,もともと保証人不要で無利子で貸し付けが受けられます。
よって×。
4 生活福祉資金は重複貸付が禁止されているため,総合支緩資金の貸付を受けた場合,教育支援資金の貸付を受けることはできない。
必要であれば,重複して貸付を受けることはできます。
よって×。
これは何度も出題されています。
5 生活福祉資金の借入れの申込み先は福祉事務所である。
生活福祉資金の実施主体は,都道府県社協です。
窓口は市町村社協です。
窓口が市町村社協ですし,パンフレットを配布しているのも市町村社協なので実施主体も市町村社協だと思われがちですが,実施主体は都道府県社協です。間違えないように注意してください。