今年の国試が終わってから2か月が経ちました。
この間,問題を改めて解いてみましたか。
タイプ1
後から問題を読んだら解けた問題があり,そこで点数が取れていたら合格基準点を上回っていたという方。
タイプ2
後から問題を読んでも,合格基準点は上回ることができなかったという方。
タイプ1の方へ
数点差でだめだった,というタイプは間違いなくこのタイプです。もちろん知識はたくさんあることに越したことはありません。
しかし,先日ご紹介したようにあいまいな知識が4,000あるよりも確実な知識が2,000あるほうが得点力は確実につきます。
「知識をもっとつけなければ・・・」
複数の参考書を使おうと思っている人は気を付けましょう。
二兎を追うものは一兎を得ず
複数の参考書を使う意味を逆説的に言うと・・・
①両方に書かれているものは,必要,つまり出る確率が高いもの。
②どちらかにしか書かれていないものは,出る確率が低いもの。
②は覚えない。
覚える量を絞り込むという使い方です。
しかし,2つの参考書を比べるのは時間がもったいないです。
2種類の参考書をもつのはナンセンスであることがわかることでしょう。
なお,要点まとめになっているようなものをもう一冊もつのは悪くないと思います。
タイプ2の方へ
タイプ2の場合は,合格するだけの知識が不足していたタイプです。まずは基礎力をつけることから始めなければなりません。
だからと言って国試に合格された方と比べて決して勉強不足ではないと思います。何度か受験されている方は特にそうです。
問題を見ると毎年まったくわからない出題があり,「どれだけ勉強したら合格点に達するのだろうか」と不安になる方もいらっしゃることでしょう。
しかし・・・
勉強法さえ間違えなければ,合格基準点は確実に超えることができます。
間違った勉強法とは・・・
3年間の過去問を完全に覚えても絶対に合格できる知識はつかない
過去問は国試合格のヒントが満載です。そこに目を向けることなく,過去問で勉強するなら,その時間は参考書を覚える時間に使ったほうが良いです。
なぜなら・・・
国試は同じような問題でありながら,同じように出題されることは決してないからです。
チームfukufuku21は,問題の解き方のヒントを一緒に考えていきたいと思っています。
それでは,今日の問題です。
第26回・問題62
「障害者雇用促進法」が定める事業主の雇用義務に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 民間企業における法定雇用率は1.8%である。
2 法定雇用率を下回っている場合は障害者雇用納付金を徴収する仕組みがある。
3 障害者を雇用する事業所においては,障害者雇用推進者を選任し,障害のある従業員の職業生活に関する相談指導を行わせるよう努めなければならない。
4 精神障害者保健福祉手帳を所持している従業員を,雇用している障害者の数に算定することはできない。
5 都道府県知事は雇用率未達成の事業主に対して,雇入れ計画の作成を命ずる。
この問題は,タイプ1の方にとっては,そんなに難しくないことでしょう。
この問題の正解が分からなければ,タイプ2の方だと言えます。まずは基礎知識をつけましょう。そうしないと試験委員のトラップに引っ掛けられて迷いの道に深く深く入り込みます。
それでは,詳しく見ましょう。
1 民間企業における法定雇用率は1.8%である。
法定雇用率は,数年ごとに見直されています。
現在の法定雇用率は,各自で調べてください。
なお,この問題が出題された時点では,民間企業の法定雇用率は2.0%だったので,誤りです。
精神障害者は,精神保健福祉手帳を持っている精神障害者を雇用した場合は,法定雇用率の算定ができます。
2 法定雇用率を下回っている場合は障害者雇用納付金を徴収する仕組みがある。
障害者を雇用するには,一般企業にとって痛みを伴います。
そのため,障害者を社会全体で支えるために,法定雇用率を達成できなかった企業からは,不足した障害者の数に応じて納付金を徴収し,法定雇用率を達成した企業に調整金を支給する「障害者雇用納付金制度」を設けています。
よって正解です。
法定雇用率を達成できないと納付金を納付することになります。しかしそれはペナルティの意味であり,障害者の雇用義務が免除されたという意味ではないので注意です。
3 障害者を雇用する事業所においては,障害者雇用推進者を選任し,障害のある従業員の職業生活に関する相談指導を行わせるよう努めなければならない。
障害者雇用推進者を聞いたことがある人はそんなにいないかもしれません。
一定以上の障害者を雇用する事業主に対して,障害者雇用推進者を選任するように努めなければならない,とされています。つまり努力義務です。
障害者雇用推進者の業務は,障害者の雇用の促進,雇用の継続を図るために必要な施設などの整備などです。どちらかいうと管理的な業務と言えるでしょう。
それに対して,障害者職業生活相談員があります。
障害者職業生活相談員の業務は,当該事業所に雇用されている障害者である労働者の職業生活に関する相談及び指導です。
問題では,障害のある従業員の職業生活に関する相談指導とあるので,障害者雇用推進者ではなく,障害者職業生活相談員であることが分かります。
よって誤りです。
4 精神障害者保健福祉手帳を所持している従業員を,雇用している障害者の数に算定することはできない。
精神障害者の場合は,精神障害者保健福祉手帳を所持している従業員を算定することができます。
よって誤りです。
なお,発達障害者は,雇用義務もなく,算定対象とすることもできません。
5 都道府県知事は雇用率未達成の事業主に対して,雇入れ計画の作成を命ずる。
実雇用率の低い事業主に対して,「雇入れ計画」の作成を命ずることがあります。
命ずるのは,厚生労働大臣です。
よって誤りです。
雇入れ計画が適切でなかった場合,改善を勧告することがあります。
勧告に従わなかった場合,企業名を公表することがあります。
雇入れ計画の作成を命じられても,多くの企業は,それに対応しているので,実際に企業名を公表されているのは,数社だけです。
障害者の就労支援に関しては,障害者雇用促進法と障害者総合支援法の2つの法律があります。
障害者雇用促進法は,一般就労に向けたもの
障害者総合支援法は,福祉的就労に向けたもの
という違いがあります。
どちらも覚えるポイントは,とても少ないので,得点出来るようにしっかり覚えていきましょう。