法制度に関する問題は,知っていれば解けますし,知らなければ解けません。
参考書は,過去問を分析して作られます。
法制度に関する問題は,知らないものも出題されてくると思いますが,必ずヒントを挟み込んできます。それが社会福祉士の国家試験の特徴です。
そのため,過去に出題されたものは確実に押さえておくことが何よりも大切です。
さて,それでは今日の問題です。
第26回・問題45
福祉計画等と事業の財源との関係に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 市町村は,市町村介護保険事業計画に規定する介護サービスの見込量に基づき,その市町村に居住する第2号被保険者の保険料額を定めなければならない。
2 国は,市町村健康増進計画に基づいて,住民の健康増進のために必要な事業を行う市町村に対し,予算の範囲内で事業費の一部を補助することができる。
3 市町村は,都道府県医療費適正化計画に規定される医療費の見通しに基づいて,国民健康保険料を定めなければならない。
4 市町村は,市町村障害福祉計画に規定する障害福祉サービスの見込量に基づき,利用者負担額を定めなければならない。
5 都道府県は,市町村老人福祉計画に規定するサービスの見込量に基づき,市町村に対し,養護老人ホームの入所に係る措置費の一部を補助することができる。
この問題は,この科目らしく,とても難易度の高い問題だと思います。
それでは詳しく見て行きましょう。
1 市町村は,市町村介護保険事業計画に規定する介護サービスの見込量に基づき,その市町村に居住する第2号被保険者の保険料額を定めなければならない。
第2号被保険者の保険料についての問題です。
第2号被保険者の保険料の算出方法は,「総報酬割」という仕組みが採用されています。
以前は,各医療保険の保険者が納める「介護給付金」の額は,各医療保険の加入者の数で決まっています。
この仕組みだと,A組合は加入者1万人で月収平均20万円,B組合は加入者5千人で月収平均40万円だとします。総報酬は,どちらも2千万円です。
A組合の方が加入者数が多いので,B組合よりも高額の介護納付金が課せられます。
介護給付金を加入者の数ではなく,総報酬から算出しようというのが総報酬割です。
それでは第1号被保険者の保険料はどのように決められていると思いますか。
市町村は介護サービス給付費の3年間の見込みを立て,市町村に住む65歳以上の人数で割ったものが第1号被保険者の保険料となります。
市町村が保険料を定めるのは,第1号被保険者の保険料となります。
よっで×。
2 国は,市町村健康増進計画に基づいて,住民の健康増進のために必要な事業を行う市町村に対し,予算の範囲内で事業費の一部を補助することができる。
結論を言うとこれが正解です。
3 市町村は,都道府県医療費適正化計画に規定される医療費の見通しに基づいて,国民健康保険料を定めなければならない。
都道府県医療費適正化計画は,高齢者の医療の確保に関する法律に基づいて策定されます。
医療費適正化計画は,医療費の見通し(必須記載事項),健康の保持の推進に関する目標・具体的な取組,医療の効率的な提供の推進に関する目標・具体的な取組(任意記載事項)を定めます。
さて,話は戻ります。国保の保険料は,市町村の条例で定めています。医療費の見通しに基いて定めているものではありません。
よって×。
4 市町村は,市町村障害福祉計画に規定する障害福祉サービスの見込量に基づき,利用者負担額を定めなければならない。
障害福祉サービスの利用料は,応能負担となっています。見込量に基いて定めているものではありません。
よって×。
5 都道府県は,市町村老人福祉計画に規定するサービスの見込量に基づき,市町村に対し,養護老人ホームの入所に係る措置費の一部を補助することができる。
これはとても難しいです。おそらく2の選択肢を正解にできなかった人はこれを正解にしたのではないかと思います。しかし間違いです。
まず,市町村老人福祉計画に規定するサービスの見込量に基づいて補助していることではないこと,また,補助の対象は,介護保険の居宅系サービスを利用できない時に,老人福祉法で定める施設利用に対するものであり,養護老人ホームの措置費には補助されません。
よって×。
<今日の一言>
無理に知識を広げようとするのは,失敗の源です。
今まで出題されたものが手掛かりになります。
それでも解けない問題は,誰もが解けません。解けなくても良い問題だと言えます。
必ず解けなければならないものを確実に得点することが合格への最短距離です。