法制度からの出題は,法の条文を基本として出題するので,言い回しをこねくり回して出題する理論系の問題よりも取り扱いやすいと言えます。
また,法制度は必然性があって作られる極めて合理性の高いものなので,覚え方を工夫すればどんどん覚えられる即効性の高い問題と言えます。
場合によっては,知らなくても想像することでカバーできることもあるくらいです。
さて,それでは今日の問題です。
第26回・問題42
「市町村の権限に属する事務」に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 介護保険における介護給付等に要する費用の適正化のための事業は,市町村が行うことができる。
2 母子福祉資金の貸付に関する審査及び决定は,市町村が行う。
3 要保護児童に対する児童福祉施設への入所等の措置は,市町村が行う。
4 発達障害の早期発見,専門的な発達支援等の業務は,市町村長が発達障害者支援センターに行わせ,又は自ら行うことができる。
5 障害児が指定障害児入所施設等に入所又は入院したときは,その保護者に対し,市町村が障害児入所給付費を支給する。
(注)「市町村の権限に属する事務」には,政令指定都市及び中核市が実施するものは含まない。
この問題は旧カリでは「福祉行財政と福祉計画」で出題されたもので,新カリでは「地域福祉と包括的支援体制」の内容に含まれます。
他の科目は領域別になっているのに対し,この科目は,科目を横断するような内容が多くなるのが特徴です。
その分,似たような選択肢が並ぶ出題になるので,しっかり覚えておかなければ,混乱することとなりますので,自分で表をつくるなりして対応しましょう。
この問題は,市町村の役割を問うものです。都道府県と市町村の役割は,とても重要です。
1 介護保険における介護給付等に要する費用の適正化のための事業は,市町村が行うことができる。
高齢者分野にいる人なら答えられそうですが,ちょっと難しいです。とりあえずは▲をつけておきます。
結論を言うとこれが正解です。
地域支援事業は,地域包括ケアシステムを目指して,改変,改正が行われてきています。
その中で,介護給付等に要する費用の適正化のための事業は従来からあるもので,平成24年改正のものではありません。新しいものは出題しないで,市町村の地域支援事業はとても重要なことを示唆しています。
2 母子福祉資金の貸付に関する審査及び决定は,市町村が行う。
母子福祉資金は,母子及び父子並びに寡婦福祉法に定めがある制度です。結論を言うと,市町村ではなく都道府県(政令指定都市・中核市)が取り扱っているので×です。
市町村は,地域住民に身近な基礎的自治体であり,福祉サービスの提供にかかわるものについては,市町村の役割が多いです。
しかし規模が小さい町村では,一人の職員がいくつもの係を兼務することも多く,いろいろなものを担うだけの体力がないこともあります。
そのため,専門性の高いものや市町村が担うには荷が重いような事務に関するものは,福祉サービスであっても都道府県が担うような役割分担がなされています。
自治体ではないですが,母子福祉資金に似た制度では,都道府県社協・政令指定都市社協の生活福祉資金があります。
福祉資金はどちらも市町村(あるいは市町村社協)ではないので,覚えやすいですね。
なお,生活福祉資金の窓口は市町村社協なので実施主体だと思われがちですが,実施主体は都道府県社協・政令指定都市社協なので間違わないように覚えておきたいです。
3 要保護児童に対する児童福祉施設への入所等の措置は,市町村が行う。
児童福祉施設への入所措置は,児童相談所が行っています。
よって×。
4 発達障害の早期発見,専門的な発達支援等の業務は,市町村長が発達障害者支援センターに行わせ,又は自ら行うことができる。
発達障害者支援センターは,「障害者」で学びますが,発達障害者支援法に定めがあります。都道府県(または政令指定都市)が自ら設置するか,適切なところをセンターとして指定をしています。必置ではありません。
発達障害者支援センターの業務
・発達障害者に対し、専門的な発達支援及び就労の支援を行うこと。
・医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体並びにこれに従事する者に対し発達障害についての情報の提供及び研修を行うこと。
・発達障害に関して、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体との連絡調整を行うこと。
いろいろな分野で研修を実施する事業のほとんどは都道府県が担っていることを覚えておきましょう。
5 障害児が指定障害児入所施設等に入所又は入院したときは,その保護者に対し,市町村が障害児入所給付費を支給する。
これもちょっと難しいですね。しかし,介護保険や健康保険を見ても,市町村が支給していないので,市町村ではなさそうだと思えそうです。とりあえず▲をつけておきましょう。
結果的にはこれは都道府県の役割なので×です。
ここで,▲で残ったのは1と5です。
どちらが間違いっぽいかを考えた時は,先述のように5が市町村っぽくないので×にして1を正解に昇格させます。
この科目は結構複雑です。なかなか高得点は取れない科目だということができるくらいです。そのため,今日やったみたいな,勘を働かせないと得点できない問題もあります。
たくさん過去問を解いていくと,勘が働くようになるでしょう。