3年間の過去問をしっかりやったら合格するよ
このようにおっしゃる方は多いです。
試験に失敗する多くの理由は・・・
間違った勉強法によるものと考えます。
間違った勉強法は・・・
3年間の過去問を買ってきて,それを解きながら分からないところを調べていくだけの勉強です。
なぜそれが間違った勉強法かと言うと・・・
出題基準に照らし合わせてみると一目瞭然ですが,3年間の問題では,出題基準の範囲はカバーしないのです。つまりスカスカの知識にしかなりません。
3年間の過去問で合格できるなら,3年間の過去問をやるとかなり毎年同じ問題が出題されていなければなりません。
しかし,そんなことは実際にはなく,2年連続で出題される問題は本当に少ないです。3年分解いてみれば一目瞭然です。
勉強法を知らないというのは怖いものだと強く思います。
過去問をうまくまとめて試験対策にしているものが参考書と呼ばれる類いの本です。
基本は参考書を使って基礎を押さえることです。
過去問は問題に慣れるためには重要です。
しかしこれだけやっていても,合格するのはとても難しいものだと考えています。
3年間の過去問だけで合格できるほど簡単な試験ではないです。
大学生なら卒論を終えてからの集中学習という技が使えます。しかし,もしあなたが社会人だったとしたら,その手は使えません。
ここでしっかり学習計画を立てて,国試に向けて頑張っていきましょう!!
過去3年間に出題されたものを完璧に覚えても,合格できる知識には足りません!!
勉強法を間違うと本当に怖いものだと強く思います。過去問は問題を解くためのヒントの宝庫。これを意識して過去問に取り組むことが過去問を解く本当の意味です。
さて,今日の問題です。
第26回・問題80
成年後見制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者については,家庭裁判所は,職権で補助開始の審判をすることができる。
2 成年被後見人のなした日常生活に関する法律行為については,成年後見人が取り消すことができる。
3 家庭裁判所は,成年後見開始の審判をするときは,職権で成年後見人を選任し,保佐人及び補助人についても同様に職権で選任する。
4 成年後見人は,いつでも家庭裁判所に届け出ることによって,その任務を辞することができる。
5 家庭裁判所は,破産者を成年後見人に選任することはできないが,未成年者を成年後見人に選任することはできる。
今日の問題は,この科目の中でも最も中心的な成年後見制度です。
絶対に押さえておかなければなりません。
成年後見制度は,介護保険法施行と同時の2000年の民法改正によって,それまでの禁治産・準禁治産制度に変わって生まれた制度です。
その当時は,介護保険と成年後見制度は高齢者を支える車の両輪と呼ばれることもありました。
旧制度の禁治産制度は後見となり,準禁治産制度は保佐となりました。補助は現制度で新しく生まれたものです。
さて,それでは詳しく見ていきましょう。
1 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者については,家庭裁判所は,職権で補助開始の審判をすることができる。
後見,保佐,補助いずれも,「本人」「配偶者」「四親等以内の親族」「検察官」等の申立権者の申立てによって,開始の審判が行われます。
家庭裁判所の職権で開始の審判が行われるわけではありません。
それにもかかわらず,なぜこのような問題がよく出されるかというと,開始の審判は申立て権者の申立てによって行われますが,後見人,保佐人,補助人の選任は家庭裁判所の職権で行われるからです。
職権で選任したものは,職権で解任することができます。
職権で選任が行われるというのはどのようなことを指しているかというと,審判開始の請求を行う時に,候補をあげてもその人が必ずしも選任されるものではない,ということを意味しています。
話は戻りますが,家庭裁判所の職権で開始の審判を行うわけではありません。
よって×。
2 成年被後見人のなした日常生活に関する法律行為については,成年後見人が取り消すことができる。
被後見人がなした法律行為は,成年後見人は取消権を持っているので取り消すことができます。
ただし「日用品の購入その他日常生活に関する法律行為」は取り消すことができません。
よって×。
なお,結婚,離婚などの身分行為も取り消すことができません。
日用品の購入などに対して取消権がない理由は・・・
日用品の購入などにはそれほど大きな費用を必要としないので,そのくらいは自由を認めましょう,という人権保護の観点からです。
3 家庭裁判所は,成年後見開始の審判をするときは,職権で成年後見人を選任し,保佐人及び補助人についても同様に職権で選任する。
これは先に述べたように正解です。
4 成年後見人は,いつでも家庭裁判所に届け出ることによって,その任務を辞することができる。
後見人は,家庭裁判所が選任します。
簡単に辞められてしまったら困ります。
辞めることを届け出ただけでは辞めさせてはくれません。
辞めることができるのは,その理由が正当な事由があって,その上で家庭裁判所の許可がある場合です。
よって×。
後見人は職権で選任されていることを理解しておくことが大切です。
職権で選んだ人は,職権で解任することができます。
後見人として適切な業務が行えない時,本人が「辞めたくないよ~」と言っても職権で解任されます。
5 家庭裁判所は,破産者を成年後見人に選任することはできないが,未成年者を成年後見人に選任することはできる。
未成年者も民法に規定されています。
(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
これから分かるように未成年者は親権者などの法定代理人の同意があって法律行為ができます。未成年者も行為能力が制限されています。
行為能力の制限者が後見人になることはできません。だって未成年者自身が,自らの法律行為が取り消されてしまう行為能力の制限者なのですから,他人の後見人になれるはずがありません。
よって×。
成年後見制度は知らないと複雑なように思われるかもしれません。後見,保佐,補助に,「共通するもの」「,違うもの」を整理して覚えていけば,とりあえず第一歩は踏み込めることでしょう。
未成年後見制度,任意後見制度を含めて,社会福祉士ならしっかり押さえておきたいです。