社会福祉士の国試の特徴は・・・
出題範囲が広い
ケアマネ試験と社会福祉士国試の試験の違い
ケアマネ ⇒ 基本は介護保険法
社会福祉士 ⇒ 社会保障制度全般
法制度だけでもこれだけ違います。
これにソーシャルワーク理論,心理学・社会学,福祉政策などが加わります。
ケアマネと同じように短期決戦で国試に臨むことの危険性がよくわかることでしょう。
社会福祉士の試験のもう一つの特徴は・・・
深い知識は求められない
一見すると深そうに見えるかもしれません。
しかしそれほど深い知識は求められていないのです。
それなのに,なぜ簡単には解けないのでしょうか。
試験委員は,国試問題を作る時は,過去問の焼き直しをしないからです。
法制度のように法の条文を変えて出題するものは大きくは変化しません。
しかし心理学や社会学などの理論に基づくものは,法の条文のように定型文がないため,表現が変わります。
そのため,丸暗記は通用しません。
国試に詳しいある方に,伺ったところ,国試合格に必要な知識は,19科目で2,000~4,000だとのことです。
19科目あるので,1科目に割ると,100~200という数になります。
この数が多いか少ないかは,人によって感じ方が違うと思いますが,「意外と少ない」と感じる人が多いように感じます。
少なくても済む理由は,科目ごとに内容が完全に独立しているわけではなく,それぞれが関連し合っているからです。
国試で重要なのは,必要以上の多くの知識を持つことではありません。
想像力=創造力
テキストを読むだけが勉強ではなく,日常にあるものすべてが勉強です。
特に社会科学系の知識は,日常から得られるものは多いです。
勉強することで情報の感度が上がると,今まで素通りしていた情報が耳にとどまるようになります。
その積み重ねは実に大きいと思います。
先生によっては「参考書をひたすら読むこと」と言う人もいるかもしれません。
その方法も決して間違いではありません。参考書は正しい文章で書かれているので,間違いの文章に出会うと「違和感」を感じるようになります。
これが参考書をひたすら読むこと,という勉強法の意味だと考えます。
頭に残るまで読むということになると,人によって違いは大きいと思いますが,少なくても3回は必要だと思います。せっかくなら,自分なりに理解しながら読んでいきたいものです。
それでは,今日の問題です。
第26回・問題63
2001年度(平成13年度)以降の生活保護の全国的な動向に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 被保護世帯及び被保護人員ともに2008年のリーマンショックを契機に増加に転じた。
2 医療扶助費の生活保護費全体に占める割合は,他法の医療制度の充実により,この間,大きく減少する領向にある。
3 保護廃止人員は,一貫して増加している。
4 保護受給期間別の被保護世帯数の推移をみると「3年~5年未満」が一貫して多い。
5 世帯類型別にみた被保護世帯の構成比をみると,「その他の世帯」の割合が大きく増加している。
今日から「貧困に対する支援」に入ります。
この科目を苦手とする人もいると思いますが,覚えなければならないものはとても数少ないです。
その点では,得点しやすい科目になりますし,問題によっては,満点を取ることも十分可能な科目です。
この科目のメインの法制度である生活保護法の出題ポイントはほぼ決まっています。
それでは詳しく見ていきましょう。
1 被保護世帯及び被保護人員ともに2008年のリーマンショックを契機に増加に転じた。
昭和の最末期から平成初期にかけてバブル景気というものがありました。ところが近年ではバブル景気と呼ばず,平成景気と呼ぶらしいです。
第29回国試でそのように出題されてびっくりした人もいたのではないかと思います。
いつ平成景気が終わったのかは諸説ありますが,少なくとも1991年前半には終わっていました。
この好景気の期間は,平成と比べると昭和の方が長いので,平成景気と呼ぶのは違和感があります。いわゆるバブル景気が終わったことに国民が気づくのはまだ先のことです。そういった意味では,「平成景気」という名称は適切なのかもしれません。
バブルの象徴として紹介されるのは,ジュリアナ東京というディスコです。開業したのは1991年5月,閉店したのは1994年8月です。実はバブルがはじけたあとです。
バブルがはじけて企業ががたついていた時期でも,バブルの味を覚えた人は消費をすぐ引き締めることはしません。
法人税収入より消費税の方が安定した税収となることがわかると思います。
保護率を示したグラフを見るとすぐ分かりますが,平成景気後もしばらく保護率は低下し,1995年の0,7パーセントを底として上昇し,現在では1.5パーセントを超えたところにあります。
リーマンショックも大きかったですが,そこから上昇が始まったわけではありません。
もっと前から上昇しています。
よって×。
平成景気後,「失われた30年」とも言われる1990年代以降は,企業がそれまでの経営システムを大きく変え,雇用形態も変えました。
2 医療扶助費の生活保護費全体に占める割合は,他法の医療制度の充実により,この間,大きく減少する領向にある。
生活保護費は約4兆円です。社会保障給付費が120兆円を超える中,生活保護費の占める割合はほんのわずかです。
生活扶助基準を引き下げても全体から比べると大した額にはなりません。
医療扶助費は全体の約半分を占めますので,約2兆円です。もし生活保護費を本気で引締めするのであれば,医療扶助が効果的です。
よって×。
扶助費を多い順から並べると,医療扶助,生活扶助,住宅扶助の順ですが,実にこの3つで90%を占めます。
3 保護廃止人員は,一貫して増加している。
保護の廃止理由で一般多いのは,死亡です。
これがわかっていると,廃止人員が一貫して増加するとは考えにくいです。
実際には増えたり,減ったりして推移しています。
よって×。
4 保護受給期間別の被保護世帯数の推移をみると「3年~5年未満」が一貫して多い。
以前は,5~10年未満が最も多い時もありましたが,近年多いのは1~3年未満です。
よって×。
5 世帯類型別にみた被保護世帯の構成比をみると,「その他の世帯」の割合が大きく増加している。
最も多い世帯は「高齢者世帯」です。
高齢者世帯はもともと数が多いので,当然割合も大きくなります。
その他の世帯は,割合は少ないものの,2005年から2013年までで,一番伸び率が大きく,実に7倍にもなっているそうです。
ミクロの視点で見ていると,よく分からないものでも,全体を俯瞰してみると分かることはよくあります。