社会福祉法は,地域共生社会の実現に向けて,近年は頻繁に改正を重ねています。
現在の地域福祉の推進については,以下のように規定されています。
(地域福祉の推進) 第四条 地域福祉の推進は、地域住民が相互に人格と個性を尊重し合いながら、参加し、共生する地域社会の実現を目指して行われなければならない。 |
この中で注意すべきなのは,2点あります。
①地域福祉の推進主体
・地域住民
・社会福祉を目的とする事業を経営する者
・社会福祉に関する活動を行う者
これらは「地域住民等」と表記されます。
②地域住民等は,生活課題を把握し,支援関係機関との連携等によりその解決を図るよう特に留意するものとする。
地域住民等と表記されると違和感がありますが,これで良いのです。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題36 社会福祉法に規定されている地域福祉に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 地域住民等は,地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に努めなければならない。
2 市町村は,市町村地域福祉計画を市町村社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画と一体的に策定しなければならない。
3 都道府県は,福祉サービスを必要とする地域住民の地域生活課題を把握し,支援関係機関と連携して解決を図るよう留意しなければならない。
4 社会福祉を目的とする事業を経営する者は,地域福祉の推進に係る取組を行う他の地域住民等に助言と指導を行わなければならない。
5 国及び地方公共団体は,地域福祉の推進のために必要な各般の措置を講ずるよう努めなければならない。
知識がなければ,正解するのはかなり難しいと思うかもしれません。
しかしおかしな内容の選択肢もあるので,落ち着いて問題を読めば,正解できなくもないでしょう。
この問題の正解は,選択肢5です。
5 国及び地方公共団体は,地域福祉の推進のために必要な各般の措置を講ずるよう努めなければならない。
迷うのは,義務なのか,努力義務なのか,だと思いますが,丁寧に読んでいけば,消去法でこの選択肢が残ります。
それでは,消去していきたいと思います。
1 地域住民等は,地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に努めなければならない。
体制の整備は,国あるいは地方公共団体が行うものです。
この場合(域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制)の整備を行うのは,市町村の役割です。
2 市町村は,市町村地域福祉計画を市町村社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画と一体的に策定しなければならない。
市町村によっては,地域福祉活動計画は,市町村地域福祉計画と一体のものとして作成しているところもあります。
しかし,だからといって,法で規定されていると考えるのは浅はかです。こんな規定はありませんし,地域福祉活動計画は根拠法はない民間計画です。かなり重要なことだと思いますが,意外とこの視点が抜け落ちるみたいです。
3 都道府県は,福祉サービスを必要とする地域住民の地域生活課題を把握し,支援関係機関と連携して解決を図るよう留意しなければならない。
地域住民に対して,直接的なサービスを行うのは,市町村です。
都道府県が行うのは,広域的な立場から行うものや専門性の高いものなどです。
この基本を押さえておくと何かと役立つと思います。
4 社会福祉を目的とする事業を経営する者は,地域福祉の推進に係る取組を行う他の地域住民等に助言と指導を行わなければならない。
このような規定はありません。
ということで,選択肢5が残ります。
こういった問題を解く際,重要なことは慌てて答えを選ばないことです。
どこかにヒントはあるものです。試験委員もそのように作っている様子が問題からうかがえます。