繰り返しになりますが,ソーシャルワークは欧米生まれです。
なじみのない外国語がたくさん使われますが,苦手だと思うととても損です。
さて,今日のテーマは「ジェネラリスト・アプローチとは何だろう?」です。
まずは前回の復習からです。
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。
その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。
その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム理論に影響を受けたジェネラリスト・ソーシャルワークとなっていきます。
それでは,今日の問題です。
第25回・問題97 ジェネラリスト・アプローチに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 生活上の逆機能が現れた問題の内的・心理的原因と外的・社会的原因の両方を認識し,個人が社会関係のなかで自らのニーズを充足することを目指す。
2 従来のソーシャルワークの分類の枠を超えて,社会構成主義の立場から包括的に援助を展開することを目指す。
3 ケアマネジメントと類似点が多いこともあって,我が国においては高齢者福祉分野に特化して用いられている。
4 総合的包括的な視点からのニーズの把握と生活への介入が,セルフアドボカシーなど当事者運動の立場からは,生活の管理統制につながるとして批判を受けることがある。
5 援助の過程においては,ミクロ,メゾ,マクロの各レベルごとに,それぞれ異なるジェネラリスト・アプローチ固有の方法が開発されている。
前回と違って,設問の中にヒントはありません。
難易度がかなり上がります。
それだけではなく,「魔の第25回国試」の問題です。
言い回しの難解さが際立っています。
それでは解説です。
1 生活上の逆機能が現れた問題の内的・心理的原因と外的・社会的原因の両方を認識し,個人が社会関係のなかで自らのニーズを充足することを目指す。
これは間違いです。
何を言っているのか,勉強した人でも訳がわからないのではないでしょうか。
これが「魔の第25回国試」の実態です。
簡単に言えば・・・
生活上の問題が起きたとき,心理的問題と社会的問題を自覚して,自らが問題解決を目指すアプローチである。
といったものです。
2 従来のソーシャルワークの分類の枠を超えて,社会構成主義の立場から包括的に援助を展開することを目指す。
これも間違いです。
「従来のソーシャルワークの分類の枠を超えて」の部分は正しいですが,
「社会構成主義」と言えば,ナラティブアプローチです。
社会構成主義とは,簡単に言えば「人が社会をつくる」という概念です。
捉え方次第で,社会は変わる,というものです。
そこから,語りによって,新しい社会をつくり出すナラティブアプローチにつながっていきます。
ジェネラリスト・アプローチが影響を受けているのは,システム理論です。
3 ケアマネジメントと類似点が多いこともあって,我が国においては高齢者福祉分野に特化して用いられている。
これも間違いです。
ジェネラリスト・アプローチという意味がわからない人のために用意された選択肢です。
ケアマネジメントは,ソーシャルワークの一手法を取り出したものです。
ケアマネジメントとジェネラリスト・アプローチには親和性があるのは当然のことです。
しかし,高齢者福祉分野に特化されたものではありません。
というか,分野を飛び越えるのがジェネラリスト・アプローチです。
4 総合的包括的な視点からのニーズの把握と生活への介入が,セルフアドボカシーなど当事者運動の立場からは,生活の管理統制につながるとして批判を受けることがある。
これが正解です。
しかし,結果的にこれが正解になっているだけで,これをすぐ正解にできる人はいないでしょう。
これが「魔の第25回国試」です。
とはいうものの,正解になる要素はあります。
「ことがある」は,間違いになりにくいからです。
というか,「ことがある」はほとんどが正解になると言っても良いでしょう。
5 援助の過程においては,ミクロ,メゾ,マクロの各レベルごとに,それぞれ異なるジェネラリスト・アプローチ固有の方法が開発されている。
これも間違いです。
ジェネラリスト・アプローチは,システム理論に影響を受けたものです。
各レベルで異なるアプローチがある,というのはいかにも間違いっぽいと言えるでしょう。
もちろん間違いです。
<今日の一言>
「ことがある」という選択肢は間違いになりにくいものです。
第26回~31回では,では以下が正解になっています。
第26回
呼吸筋障害による呼吸不全をきたすことがある。
正常圧水頭症による認知症は,外科手術で回復することがある。
注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療には,薬物を用いることがある。
官僚制は形式合理性を重視するがゆえに,実質合理性を失って,逆機能的になることがある。
薬事法上は承認されたが,薬価基準に収載されておらず医療保険が適用されない医薬品を用いて治療を行う場合,保険外併用療養費が支給されることがある。
第27回
1 号観察も2 号観察も,対象者が成人(20 歳)に達した後でも行われることがある。
第29回
サービス供給体制の整備に伴い,潜在的な福祉ニードが顕在化することがある。
第31回
半構造化面接では,面接中に新たな質問項目を追加することがある。
正解になっていないのは以下のみです。
第29回
統合化の背景には,専門分化されたソーシャルワーク実践が多様化する社会問題に対応できていたことがある。
同じことがあるでも,内容が違った「ことがある」であることが分かります。
「ことがある」は,正解になる確率が高いと言えます。
こういったものが頭に入っているか否かによって,正解できることもあります。
迷ったときの優先順位の高いものと言えるでしょう。
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