合格基準はおおむね6割程度です。
問題の難易度によって上下するのが,面倒なところです。
しかし,難易度によって合格基準点が上下するだけであり,合格基準が今年は7割程度,来年は5割程度といったように変化しているわけではありません。
受験生が勉強すべき内容が変わるものではありません。
第30回国試の合格基準点が99点,第31回国試が89点と大きく上下しているので,受験生は混乱しそうですが,押さえるべき問題をしっかり押さえていけば,合格基準点は超えられます。
合格基準点を超えられないとすれば,押さえるべきものを押さえていないということに他なりません。
国試では,対策が取れる問題と対策が取れない問題があります。
また,解けなければならない問題と解けなくてもよい問題があります。
解けなくても良い問題が出題されることが多い科目は「社会理論と社会システム」と「現代社会と福祉」です。
「相談援助の基盤と専門職」にもたまにそのような出題があります。
今日はそんな問題を取り上げたいと思います。
第27回・問題94 人権に関する国際的な条約などについての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」では,締約国が母性保護を目的とした特別措置をとることは,差別と解してはならないと定められている。
2 「高齢者のための国連原則」では,高齢者と開発,高齢に至るまでの健康と福祉の増進,支援環境の整備の三つの優先的方針が定められている。
3 「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」では締約国がアタッチメント促進のための特別措置をとることは,差別と解してはならないと定められている。
4 「児童の権利に関する条約」では,締約国は結社の自由についての児童の権利を制限できると定められている。
5 「障害者の権利に関する条約」では,自立,参加,ケア,自己実現,尊厳の五つの一般原則が定められている。
問題だけを見ると,まるで「現代社会と福祉」のようです。
正解は,選択肢1です。
選択肢2は,「高齢者のための国連原則」ではなく,「高齢化に関するマドリッド国際行動計画」です。
選択肢3は,条約名は存在しますが,内容が間違っています。
選択肢4は,制限できるということはあり得ないと思えるでしょう。もちろんこのようことはありません。
選択肢5は,「障害者の権利に関する条約」ではなく,「高齢者のための国連原則」です。
<今日の一言>
この問題で出題したかったのは,正解の女子差別撤廃条約で,そのほかのものは,問題を成立させるためのものです。
そう思う根拠は障害者権利条約の重要ポイントである「合理的配慮」が出題されていないためです。
必ず正解しなければならない問題はありますが,今日の問題はそうではありません。
必ず正解しなければならない問題で正解できることが重要です。