ソーシャル・ケース・ワークは,「人と社会環境との間を個別に意識的に調整することを通して,パーソナリティを発達させる過程」である。
と述べています。
リッチモンドがこう述べたのは,1922年のことです。
しかしその後,「個」に傾倒しすぎて,社会問題に対処できないことが批判されるようになります。
そのため,マイルズは「リッチモンドに帰れ」と述べたのです。
さて,今回は「ソロモン」を取り上げます。
ソロモンは,ソーシャルワークにエンパワメント(力づける)概念を導入した人物として知られます。
エンパワメントアプローチは,クライエントが自分の能力に気づくことで,問題に対処できるように働きかけるものです。
ソロモンは,「人と環境」について
人は抑圧された環境に置かれると,無力(パワーレス)の状態に陥ることが多い。
と述べています。
それでは今日の問題です。
第23回・問題95 ソーシャルワークにおける人と環境に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 リッチモンド(Richmond,M.)は,個人と社会環境とを明確に区別し,社会環境に焦点を当てて対処することが必要であることを強調する。
2 ホリス(Hollis,F.)は,「状況の中にある人間」といった概念を用いて,個人の人格が社会環境によって形成されていく過程を分析しようとする。
3 パールマン(Perlman,H.)は,「4つのP」の一つに「場所(place)」を含めることによって,個人を取り巻く環境を視野におさめようとしている。
4 キャプラン(Caplan,G.)は,通常の方法では対処できないほどの急激な環境変化を危機としてとらえ,環境を元に戻すための介入を重視している。
5 ソロモン(Solomon,B.)は,個人と敵対的な社会環境との相互関係によって,人は無力な状態に陥ることが多いとしている。
正解は,選択肢5です。
エンパワメントアプローチを正しく理解していることで,正解できます。
ソロモンは,エンパワメントアプローチの人ですから,「人と環境」の関係性は,環境はクライエントが抑圧される敵対的な環境に特化してとらえていることが特徴です。
それでは,ほかの選択肢も解説します。
1 リッチモンド(Richmond,M.)は,個人と社会環境とを明確に区別し,社会環境に焦点を当てて対処することが必要であることを強調する。
リッチモンドは,
人と社会環境との間を個別に意識的に調整する
と述べています。
「明確に区別する」,「別々のものととらえる」といったものは,不適切です。
2 ホリス(Hollis,F.)は,「状況の中にある人間」といった概念を用いて,個人の人格が社会環境によって形成されていく過程を分析しようとする。
ホリスといえば「状況の中の人間」という概念を用いて「人と環境」について述べているものが特徴です。
しかし,個人の人格が社会環境によって形成されていく過程を分析するものではありません。
「状況の中の人」とは,人と環境はつながりのあるものだということを意味したものです。
3 パールマン(Perlman,H.)は,「4つのP」の一つに「場所(place)」を含めることによって,個人を取り巻く環境を視野におさめようとしている。
4つのPは
Person(人)
Problem(問題)
Place(場所)
Process(過程)
です。
Placeは環境のことではなく,ソーシャルワークを行う場所のことです。
4 キャプラン(Caplan,G.)は,通常の方法では対処できないほどの急激な環境変化を危機としてとらえ,環境を元に戻すための介入を重視している。
キャプランは危機介入アプローチを提唱した人物として知られます。
危機介入アプローチでは,危機に対する対処力を高めるものです。
環境を元に戻すことは重視されません。
<今日の一言>
今日の問題は,ソロモンが正解となっています。
国試は,少しずつ重なっていて,少しずつ違う
同じようには出題しません。
同じものが出題されるのであれば,記憶力に優れていることが重視され,考えるということは必要でなくなってしまいます。
国試は,社会福祉士に必要な素養を問うものです。
記憶力に優れているだけの社会福祉士は必要とされません。