2017年8月31日木曜日

分からない問題は,捨てる勇気も必要です!!

時間は限られています。

分からない問題に時間をかけていたら,あっという間に時間は過ぎていきます。


本来正解しなければならない問題も正解できないことになります。


すべてを理解しようと思ったら,深みにはまります。



それでは,今日の問題です。


25回・問題24


福祉社会の歴史に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。


1 スウェーデンでは,1960年代初頭に福祉サービスを体系化した社会サービス法が制定され,それに基づき高齢者福祉や児童福祉のサービスが急速に発展した。

 
2 日本では,1960年代のいわゆる国民皆年金の成立を踏まえて,それを補完する形で企業による退職一時金制度の整備が行われ始めた。


3 アメリカでは,1960年代に,貧困層への対策として,食糧補助のためのフード・スタンプ制度や就学前教育としてのヘッド・スタート計画などが導入された。 


4 イギリスでは,1970年代まで母子世帯の母親は自らが稼ぎ手役割を果たすことが自立であるとする政策理念のもとに,就労促進策力が展開された。 


5 ドイツでは,1980年代の失業長期化への対応として,失業保険での失業手当の請求権を有しない者に対してミーンズ・テスト付きでの給付を行う失業扶助制度が導入された。 


今日の問題は,各国の福祉に関する問題です。


この当時の試験委員長は,古川孝順先生でした。


古川先生の最後の年です。専門は福祉政策です。


19回の国家試験が古川先生が試験委員長になった最初の試験でしたが,古川先生の専門の「社会福祉原論」が難しすぎて,0点になった人が続出したのをよく覚えています。


古川先生の置き土産のこの年の問題は,本当に難しいものになりました。

やっぱり自分の専門領域の問題は厳しく見るからでしょう。

それでは詳しく見ていきましょう。



1 スウェーデンでは,1960年代初頭に福祉サービスを体系化した社会サービス法が制定され,それに基づき高齢者福祉や児童福祉のサービスが急速に発展した。 



社会サービス法は,何度か出題されています。


1960年代ではなく,1982年です。

よって×。


この法律がもとになり,エーデル改革が進められました。


この法律は,イギリスの「地方自治体社会サービス法」(1970)に名称が似ているので,それに引っ掛けて出題されることもあります。


イギリス 地方自治体社会サービス法(1970


スウェーデン 社会サービス法(1982


間違えないように覚えておきましょう。




2 日本では,1960年代のいわゆる国民皆年金の成立を踏まえて,それを補完する形で企業による退職一時金制度の整備が行われ始めた。



退職金は,皆年金になる前から存在しています。

って×。



3 アメリカでは,1960年代に,貧困層への対策として,食糧補助のためのフード・スタンプ制度や就学前教育としてのヘッド・スタート計画などが導入された。



アメリカは社会保障制度が整っていないイメージはあると思いますが,それでも最低ラインの福祉(残余的)はやっています。


最初は,世界大恐慌の対策だった社会保障法(1935)です。


この時にADC(クリントンによって廃止されたAFDCの前身)や医療保険などが整備されました。


次は,貧困の発見がなされ,公民権運動などが激しくなっていった1960年代です。


この時に,メディケア,メディケイド,フード・スタンプ制度,ヘッド・スタート計画なとが成立していきます。

よって正解です。 


いつ始まったのかは,多くの人は知らなかったはずです。


これを正解にするのは勇気が必要だったことでしょう。



4 イギリスでは,1970年代まで母子世帯の母親は自らが稼ぎ手役割を果たすことが自立であるとする政策理念のもとに,就労促進策力が展開された。



イギリスと言えば,ブレア政権の時のポジティブウェルフェア政策が有名です。


この政策は「福祉から就労へ」という政策です。


つまり,それ以前は就労ではなく福祉が重視されていたということになります。

よって×。


ブレアと時を同じくして,アメリカではクリントンがAFDCを廃止して,TANFを導入しています。


これもイギリスと同じ「福祉から就労へ」の流れです。 



5 ドイツでは,1980年代の失業長期化への対応として,失業保険での失業手当の請求権を有しない者に対してミーンズ・テスト付きでの給付を行う失業扶助制度が導入された。



ドイツの就労支援策はほとんど日本では紹介されていないので,分からない人が多かったことと思います。


これがこの問題を難しくしている理由です。


失業扶助制度を導入したのは1970年代だそうです。


よって×。



1980年代は,景気が冷え込み,失業扶助制度が批判されることとなり,給付の引き下げを行うこととなりました。


ドイツでは,イギリスやアメリカよりも先に「福祉から就労へ」の道を開いていたことになります。



<今日の一言>


世界の流れは,


「就労から福祉へ」ではなく


「福祉から就労へ」です。


2017年8月30日水曜日

国家試験は,解けなくても良い問題があるのを忘れていませんか?

国家試験は難しい


そんなイメージがあります。


実際に簡単ではない試験であることは確かです。


しかししかし・・・


イメージは幻想です。


人は,一度「すごいなぁ」「かなわないなぁ」とイメージすると,それが強く印象に残ります。


社会福祉振興・試験センターのイメージ戦略はすごいなぁ,と感じます。


社会福祉士の国家試験は,難しそう・・・


このイメージが,受験生に残すことができれば成功です。


野球のピッチャーは,すごい球を一球見せることができたら,その打席はピッチャーが優勢になります。

そのあとは,バッターが勝手にそのイメージにとらわれて,甘い球でも凡打してくれます。

すごいピッチャーなら,最後に「伝家の宝刀」といった決め球で打ち取ることができることでしょう。

しかしそのような球を持たないピッチャーは,先述のような頭脳的な技術を用います。


社会福祉士の国家試験も同じです。


とても難しい問題と一つ二つ出題しておけば,国家試験問題がとても難しいイメージが受験生の脳裏に強烈に焼き付きます。

その結果,「どうせ勉強しても簡単に合格できない」という気持ちを持つ人も出てきます。


自滅の状態です。

しっかり勉強していても,難しいイメージが強いと比較的難易度が低い問題であってもしっかりボールをとらえることがてきなくなってしまいます。


こうなれば,試験センターの思うつぼです。


そうして合格率25%,合格基準点90点をキープしているのです。


今日の問題は,問題がとても難しかった第25回の国家試験の中でも指折りの難易度の高い問題です。


いわゆる「③誰も解けない問題」です。


そう思って問題を見てください。


そうしないと,試験センターの思うつぼです。


25回・問題23

福祉の原理をめぐる哲学,とりわけ自由と平等に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。


1 リバタリアニズム,とりわけ右派の思想は,他者からの束縛,強制から解放されることが最も重要であるという積極的自由の概念を中核にしているため,福祉制度の拡充には否定的である。


2 古典的自由主義が自由放任を重んじるのに対して,新自由主義は自由を実現できる機会が個人に付与されるべきであり,その限りにおいて国家の福祉的介入が必要であるとする新しい観点を掲げている。


3 パターナリズムは,個々人の自由よりも類としてのまとまりを重視しているため,類別に類型化された一律の福祉的介入を推奨し,その範囲内で限定的に個人の自由を認めている。


4 レスポンシプ・コミュニタリアニズムは,社会善をなすためにコミュニティ全体の秩序と個々人の権利の尊重との間の調和が必要であるとの立場で,福祉制度の推進において市民社会の役割を重視している。


5 フェミニズム運動は,第一波では,家庭をはじめとする私的領域での男性との平等を求めたが,20世紀中期以降の第二波では,女性の解放のためのさらなる手段として,公的領域,特に教育,雇用,福祉,政治における男性との平等な機会を求めるようになった。



今は,どれも参考書に書かれているので,勉強が進んでいる人の中には,これらの意味が分かる人もいることでしょう。


しかし,第25回の国家試験の時点では,分からない用語が多く,もうお手上げ状態だった人も多かったと思います。


こんな問題を見せられたら,「今までの勉強は何だったのだろうか」といった無力感・自責感が襲ってきた人が多かったのではないでしょうか。


現在の国家試験では,完全なお手上げ問題に見えても,ある程度勉強が進んでいる人なら,正解率は33.3%程度は確保できる問題に収まることが多いです。


こんなことを考えると今日の問題のタイプは,もう出題されないかもしれません。


それでは詳しく見ていきましょう。


今日は,設問文から確認します。

「福祉の原理をめぐる哲学」と記述されています。


福祉の原理と言われるとものすごく難しい言葉のように思われるでしょう。深く考えていくと本当に難しいものではあると思います。


国家試験で問われることはないと思いますが,ここでちょっと確認です。


福祉≠社会福祉



福祉は,人の幸せのことです。


福祉=生活保障


という解釈が成り立ちです。


社会保障制度審議会の50年勧告でも「生活保障」は国の責任である,ということを明記しています。


構図を簡単に言うと



福祉 > 社会政策 > 社会保障 > 社会福祉


という図式になります。



福祉は,極めて広い概念であることが分かることでしょう。



そのため,自由・平等に関するものが出題されても不思議はないです。


それでは,詳しく見ていきましょう。


1 リバタリアニズム,とりわけ右派の思想は,他者からの束縛,強制から解放されることが最も重要であるという積極的自由の概念を中核にしているため,福祉制度の拡充には否定的である。



最初に難しいものを「バーン」と出すのは,出題パターンとしては,そこには正解はないことが多いです。


なぜなら,びっくりさせるための選択肢だからです。


リバタリアリズムは,自由至上主義と訳されるそうです。


後述の自由主義と違うのは,積極的に自由を求めるものではなく,「自分を放っておいて」という消極的自由を求めるところです。

よって×。


細かく言うと,リバタリアリズムの右派は,自由を拡大することを目指すもの,左派はそれに加えて公正を求めるものだそうです。



2 古典的自由主義が自由放任を重んじるのに対して,新自由主義は自由を実現できる機会が個人に付与されるべきであり,その限りにおいて国家の福祉的介入が必要であるとする新しい観点を掲げている。



古典的自由主義とは,自由放任(レッセフェール)を重視し,国家は何かあるときだけ関与する「夜警国家」のことです。


新自由主義は,福祉への関与をなるべく小さくして市場原理を取り入れていくものです。


よって×。



3 パターナリズムは,個々人の自由よりも類としてのまとまりを重視しているため,類別に類型化された一律の福祉的介入を推奨し,その範囲内で限定的に個人の自由を認めている。



パターナリズムは,父権主義と訳されるもので,自己決定に任せるのではなく,上から半ば支配的に決定するものです。



文章が難解なので引っ掛けられそうになりますが,個人の自由を認めるものではなさそうであることは何となく分かるかもしれませんね。



正しくは,やっぱり個人の自由を認めるものではなく,個人には自由にさせないものです。


よって×。



4 レスポンシプ・コミュニタリアニズムは,社会善をなすためにコミュニティ全体の秩序と個々人の権利の尊重との間の調和が必要であるとの立場で,福祉制度の推進において市民社会の役割を重視している。



コミュニタリアニズムは,サンデルが提唱するもので,コミュニティを重視するものです。


しかしかつてのファシズム(全体主義)と違うのは,ファシズムは,全体が良ければ個人の犠牲も良しとするのに対して,コミュニタリアニズムは,個人とコミュニティのバランスを重視するものです。



レスポンシプ・コミュニタリアニズムは,個人の尊重とコミュニティ全体の秩序の調和が必要であるとする考え方です。


よって正解です。


5 フェミニズム運動は,第一波では,家庭をはじめとする私的領域での男性との平等を求めたが,20世紀中期以降の第二波では,女性の解放のためのさらなる手段として,公的領域,特に教育,雇用,福祉,政治における男性との平等な機会を求めるようになった。



フェミニズム運動の第一波と第二派というのもなんのこっちゃ,という感じですね。


最後の最後まで,答えはこれだ,とできないもので終始した問題です。


本当によく分かりません。


調べてみたら,第一波は女性の参政権などを求めたもの,第二波は性差の是正を求めたものとのことです。



消去できそうなのは,新自由主義の選択肢2とパターナリズムの選択肢3だけです。



選択肢145は,〇も▲も×もつけられません



こんな問題は誰もが解けないです。つまり解けなくても大丈夫です。



この当時は,ロールズの出題が続いていたので,ハーバード大学のサンデルも出題されることが予測されていました。



模擬試験もそれを予測して,いろいろな会社がサンデルを出題して対策を取っていました。



サンデルが出題されたものの,予測していたものとは,内容がまったく違っていました。


それでも,模擬試験でサンデルが出ることを予測して作問した人は,とても満足感が高かったでしょう。


ポイントがずれていたので,受験者にとってはまったく意味のなさないものです。



試験対策セミナーでは


この辺りが出そうなのでしっかり押さえておいてください


という講師がいます。



そこが出たらその講師の満足感は高いものでしょう。



しかしそれでは受験生は対応できないのです。



どこがどう出る,といったように具体的なものなら役に立ちます。



そうでないとしたら,そういうあいまいな言い方はやめてほしいです。



受験生にとって悪です。


過去問を分析すると,どのように出題されてくるかは分かりますが,初めて出題される場合は,どこをどのように攻めてくるか,予測することはとても難しいです。


どのように出題されるか分からないものに時間をかけるのなら,どのような出題されるか分かっているものにその時間をかけたほうが良いです。



どのように出題されるか分からないものに時間をかける意味を見出すとしたら,これだけやった,という充足感かもしれません。



因みに,コミュニタリズムは,今後も出題されることがあると思います。第28回に早速出題されていました。


2017年8月29日火曜日

難しそうに見えても,現代社会は対応可能です!!

前回までは「社会理論と社会システム」を見てきました。


何度も何度も「最も難解な科目である」と書きました。


苦手意識をあおってしまったかもしれないことをお許しください。


しかし,その中でも時々は「仏様」のような問題が混じっていることは分かっていただけたのではないでしょうか。


今日からは「現代社会と福祉」の科目に入ります。


旧カリ時代の「社会福祉原論」という科目に対応しています。


現在の科目と大きく違うのは,

社会福祉原論は,福祉をどのように考えるのか,を問う内容の科目でした。



今の「現代社会と福祉」は,

福祉政策をいかに進めていくか,がメインテーマ

となっています。



国は,社会福祉士にどのような役割を期待しているのかが浮き彫りになっているように思います。


言葉は悪いかもしれませんが,国は,社会福祉士にはソーシャルワーカーではなく,社会福祉士という別の役割を求めているように感じています。


つまり,社会福祉士は社会福祉の基礎資格であるということです。


それは制度を作っていく者や経営に携わる者,そしてソーシャルワーカーの基礎資格が社会福祉士であると言えます。


今,平成31年度のカリキュラム改正に向けての動きが始まっています。


もし,社会福祉士がソーシャルワーカーであるならば,今の制度別(つまり縦割り)の科目構成ではなく,人を中心に据えたカリキュラムになることでしょう。


そこに手を加えることなく,カリキュラムが変わることがあるならば,やっぱり国は社会福祉士=ソーシャルワーカーだとは考えていないと言えると思います。



それはさておき,国が社会福祉士に求めているものを凝縮しているものが「現代社会と福祉」という科目であるとしたら,この科目を攻略できることが,社会福祉士への道の第一歩だと考えます。



もちろん「相談援助系」の科目も存在していますが,相談援助のプロになるためにはイマイチ内容が貧弱なように思います。


だから点数が取りやすいという受験上のメリットはありますね・・・。



ソーシャルワーク系の科目が易しくて,それ以外の法制度や理論系の科目の方が点数が取りやすい,というは国の目指しているものがどこにあるのかが分かるような感じはしませんか?


ぜひ皆さんには,社会福祉士を持った「ソーシャルワーカー」になっていただきたいと思います。



現代社会と福祉も社会理論ほどとは言いませんが,難しい科目であることは確かです。



しかし,社会理論と違うのは・・・


福祉政策につながる理論は必然性がある


ところです。



中には,社会理論で出題されるような問題も出題されることがあるので,10点満点を取ることは難しいです。

しかし・・・


福祉政策のポイントをつかむと,決して0点を恐れる必要はなく,5点以上は得点できる可能性を秘めた科目です。




それでは,今日の問題です。


25回・問題22 

社会福祉制度と社会保障等の政策の関連についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。


1 社会保障制度審議会の「1962年の答申・勧告」では,社会保障に関する施策を「貧困階層に対する施策」「低所得階層に対する施策」「一般所得階層に対する施策」に区分し,社会福祉対策を,「低所得階層に対する施策」として位置づけた。


2 「21世紀福祉ビジョン」(1994(平成6))は,「年金」「医療」「福祉等」の給付費が当時,およそ6:3:1の割合であったのを,将来的には「年金」から「福祉等」へ資金を移す施策を講じておよそ5:3:2の割合とする必要があると提起した。


3 孝橋正一は,「新・社会事業概論」(1977(昭和52))において,社会事業が,一般対策(社会保険,公衆衛生教育等)に対して,並立的補充関係,補足的補充関係,又は代替的補充関係にあると論じた。


4 社会保障制度審議会の「1995年の勧告」では,格差拡大と貧困問題が深刻化するなかで,社会福祉は,貧困・低所得対策を重視していくべきであると指摘した。


5 ティトマス(TitmussR.)の「福祉の社会的分業(Social Division of Welfare)」の考え方によれば,福祉制度は,政府部門・非営利部門,営利部門,インフォーマル部門の四部門から構成される。


()11962年の答申・勧告」とは,「社会保障制度の総合調整に関する基本方策についての答申および社会保障制度の推進に関する勧告」のことである。
221世紀福祉ビジョン」とは,高齢社会福祉ビジョン懇談会の報告書として発表されたものである。
31995年の勧告」とは,「社会保障体制の再構築に関する勧告―安心して暮らせる21世紀の社会を目指して―」のことである。



福祉政策は,福祉をどのように国民に提供していくか

という極めてマクロな世界です。



そのために,現場実践とは距離が遠いように感じて,そのため,難しく感じるのだと思います。



しかし,旧カリの原論時代とは違い,人の理論はほとんど出題されて来ないです。



旧カリの時は,福祉をめぐる理論としてかなり問われていましたが,今は一人も出題されない年もあるくらいです。



現代社会に生きていると,社会保障制度は出来上がっているように思うかもしれません。



確かに基本的な制度設計は変わることなく,戦後の社会保障制度は発展して来ました。


しかしだからと言って次の時代も同じで良いとは言えません。



新しいものを考える時は,どのような考えで制度設計されているのかを知る必要があります。


この部分は最も社会福祉士らしいなぁ,と感じるところでもあります。


クライエントのニードがあるから,制度は作られます。制度が先にあるわけではなく,常にニードが先です。


それを知っていると,ソーシャルワーク実践も確実に変わっていくことでしょう。


ソーシャルアクションは,ソーシャルワークの重要な側面でもあります。


クライエントのニードを福祉実践の中でつかんでいることは,社会人で国家資格にチャレンジする人にとって,最も有利なことの一つです。


それはさておき,現在の国試と違って,問題文の文字数がとても多いと思いませんか?


現在の問題は,もっとシンプルな文章で出題されるようになっています。
第25回国試の反省が最も生かされている部分です。 



それでは,詳しく見て行きましょう。



1 社会保障制度審議会の「1962年の答申・勧告」では,社会保障に関する施策を「貧困階層に対する施策」「低所得階層に対する施策」「一般所得階層に対する施策」に区分し,社会福祉対策を,「低所得階層に対する施策」として位置づけた。



社会保障制度審議会の勧告はどのくらい出ているのか知りませんが,国試に出題されるのは,50年勧告,62年勧告,95年勧告の3つです。


50年勧告は,社会保障の範囲と方法を示しました。


62年勧告は,社会保障の施策を示しました。
95年勧告は,21世紀に向けた社会保障のあり方を示しました。


50年勧告は,また別の機会に詳しく書く機会があれば,書きたいと思います。


50年勧告は,社会保障の範囲と方法を決めたと言いましたが,実は「生活保障」について国の責任があるとも述べています。


さて,62年勧告です。


社会保障を

「一般所得階層に対する施策」
「低所得階層に対する施策」
「貧困階層に対する施策」

に区分しています。

この勧告によると,社会福祉制度は,低所得階層に対する施策だとしています。

よって正解です。

なお,

社会保険は,一般所得階層に対する施策

生活保護制度は,貧困階層に対する施策

です。

国民の多くは,一般所得階層です。

つまり・・・

我が国の社会保障制度の中心は社会保険である。


社会保障給付費の財源は,公費よりも社会保険料の多くなるのは当然です。



221世紀福祉ビジョン」(1994(平成6))は,「年金」「医療」「福祉等」の給付費が当時,およそ6:3:1の割合であったのを,将来的には「年金」から「福祉等」へ資金を移す施策を講じておよそ5:3:2の割合とする必要があると提起した。



21世紀福祉ビジョンは,第81013171925回の6回出題されています。

21世紀福祉ビジョンが示した「年金」「医療」「福祉その他」の割合を5:3:2することに関連した問題を含めれば,現行カリキュラムでの出題率は100%です。


5:3:2

これは絶対に押さえなければならないものの筆頭です。


さて,問題に戻ります。5:3:2はよく出題されるので覚えている人は多いと思いますが,もともとはどんな割合だったのを変えていくのか,5:3:2は,それぞれその部門だったのか,は忘れがちです。


しっかり覚えましょう。


もともとは,5:4:1の割合です。


医療を減らして,福祉その他を増やしたということになります。


医療を減らすためには,もちろん診療報酬の引き下げも必要ですが,大きく変えるためには制度改正が必要です。


そこで創設されたのが介護保険です。


これによって老人医療の一部が「福祉その他」に移り,5:3:2の割合が今日では実現しています。

答えはもちろん☓です。



3 孝橋正一は,「新・社会事業概論」(1977(昭和52))において,社会事業が,一般対策(社会保険,公衆衛生教育等)に対して,並立的補充関係,補足的補充関係,又は代替的補充関係にあると論じた。



旧カリ時代は,いろいろな人が論じたものが頻繁に出題されてきましたが,今のカリキュラムになってからは,ほとんど出題されていません。


しかも第26回以降は一度も出題されていません。


過去には出題されていたのに,今は出題されていないということは,社会福祉士に求められていることが変化していることを示していることがよく分かります。


並立的補充関係,補足的補充関係,又は代替的補充関係と述べたのは仲村優一先生です。


よって×。


仲村先生が亡くなったのは一昨年の2015年です。


生きていらっしゃる時には,出題されにくいです。間違って出題したら「僕はこんなことは言っていないよ」と怒られます。まさに死人に口なしです。


30回くらいには,仲村先生への哀悼の念も含めて出題されそうです。


孝橋先生は,社会政策は社会問題に対する施策であり,社会事業はそこから派生する社会的問題に対する施策であると述べています。




4 社会保障制度審議会の「1995年の勧告」では,格差拡大と貧困問題が深刻化するなかで,社会福祉は,貧困・低所得対策を重視していくべきであると指摘した。



95年勧告は,21世紀に合ったサービスの向上などを示したものです。


貧困・低所得対策を重視するのであれば,50年勧告モデルを引きずったままのものです。


よって×。



95年勧告で示された方向性が,現在の社会福祉法につながっていきます。



50年勧告は,生存権保障を目指したものですが,95年勧告は,幸福追求権を尊重したものだと言えます。



サービス利用は,行政処分としての措置制度から,利用契約に基づくものに変わるなど,社会福祉が,社会福祉サービスに変わっていくこととなります。




5 ティトマス(TitmussR.)の「福祉の社会的分業(Social Division of Welfare)」の考え方によれば,福祉制度は,政府部門・非営利部門,営利部門,インフォーマル部門の四部門から構成される。




ティトマスはこんなことを言ったのかなぁ,と思った人も多かったと思います。


社会福祉士の国家試験は,範囲は広いですが,出題されるポイントはそんなに広くはないです。


つまり・・・

出題されるポイントはそんなに変わらないということです。



ここで心が弱くなって,「知らないのは自分の勉強不足だ」と思ってしまったら深みに入ります。


福祉制度は,政府部門・非営利部門,営利部門,インフォーマル部門の四部門から構成されると述べたのは,ウォルフェンデン報告だそうです。



そう言われてみたら,同報告は福祉多元主義を示したものなので,そう言われると納得です。



よって×。



ティトマスは,福祉国家を「残余的福祉モデル」「産業的業績達成モデル」「制度的再分配モデル」というように類型化しました。



<今日の一言>

この人は,こんなことを言ったかなぁ,と思う文章は,自分の勉強不足ではありません。


多くの場合は,間違い選択肢を作るための文章です。


考えても分からず


ええい,正解にしちゃえ!!


と思うのはとても危険です。

そこには,正解はないことが多いのです。

何度も受験しても合格をつかめない方は,特にここを心にとどめておいていただきたいです。

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