2017年8月3日木曜日

年齢は国試勉強に関係するか?

国試勉強をしていると,覚えられないことに焦りを感じることは多々あります。

昨日勉強したはずなのに,今日開いたら,新しいページを開いているような気になることさえあります。


こんな時,記憶力の低下を実感するかもしれません。



しかし,以前に書いたように,脳の機能低下そのものによる記憶力の低下よりも,いろいろなことがじゃまするために,子どもの時のように反復して覚えることができない,ということの影響の方が大きいと考えています。


「私は〇歳だから,覚えられない。限界を感じる」


とよく聞きます。


その気持ちは痛いほど分かります。


しかし,逃げ道を作っても,良いことはないので,何か自分なりに勉強法を工夫してみませんか。


子どもとは違うので,昔やった方法と同じでは効果を出すのはちょっと厳しいかもしれません。


人生経験豊富な社会人には

若者や子どもにはない知識と知恵がある!


いわゆる結晶性知能です。

結晶性知能は年齢的にも向上していきます。

これを学習に活かさない手はありません。

無味乾燥に感じるものでも,ひと工夫を加えることで,見え方も変わって来ます。


さて,それでは今日の問題です。



26回・問題142

次の記述のうち,次世代育成支援対策推進法に定められている内容として,正しいものを1つ選びなさい。


1 国に,児童の適切な保護又は支援を図るため,要保護児童対策地域協議会の設置義務が課されている。


2 都道府県に,次世代育成に関する相談その他の援助の業務を行う児童委員を置くこととされている。


3 市町村は,児童の適正な保護又は支援を図るために必要があると認めるときは,一時保護を行うことができる。


4 常時雇用する労働者が一定数以上の事業主には,次世代育成支援の実施に関する計画の策定義務が課されている。


5 企業は,雇用する労働者の申出により,3歳に達するまでの子について育児休業の取得を認めなければならない。



次世代育成支援対推進法に関する問題です。


同法は,子どもが健やかに生まれて育つ環境を社会全体で整備することを目的に,2003年に成立したものです。


同法では,行動計画を規定しています。

10年の時限立法でしたが,10年延長中です。

この延長に伴い,市町村・都道府県行動計画の策定は任意になりました。

101人以上雇用する一般事業主の行動計画の策定義務はそのまま残っています。

今となっては,2012年に成立した「子ども・子育て支援法」がホットだと思いますが,出題基準にはまだ同法は入って来ていないのです。不思議ですね。


それでは詳しく見ていきましょう。



1 国に,児童の適切な保護又は支援を図るため,要保護児童対策地域協議会の設置義務が課されている。


この選択肢をを見て・・・

「分からない」

と思考を止めてはいけません。

日本語は漢字が基本なので,漢字を見ると意味が分かることもあります。


要保護児童は,保護が必要な児童ですから,次世代育成支援には関連しそうもないなぁ,と思えれば成功です。

同協議会は児童福祉法によるものです。

よって×。


因みに次世代育成支援対推進法が規定しているのは,次世代育成支援対策地域協議会です。


ここで思考を止めてしまうと,後半にある正解にたどり着くのは難しくなることでしょう。

最初に難しめの選択肢を配置し,受験生の思考を混乱させることで,後半に配置したやさしめの選択肢を選ぶ率を下げます。

国試問題の常とう手段です。

2 都道府県に,次世代育成に関する相談その他の援助の業務を行う児童委員を置くこととされている。



児童委員は児童福祉法に規定され,民生委員を兼任しています。


今でさえ民生委員のなり手がないのに,さらに次世代育成に関する相談の業務を行うようになったら,本当になり手がいなくなってしまいます。


もちろんこのような規定はなされていません。


よって×。

あなたが情熱あふれる児童委員でも,新たな業務を与えられたら大変だなぁ,と思うことでしょう。

それでもあなたは情熱あふれる児童委員なので,きっと継続しようと思うかもしれません。

しかしそれはあなたが情熱あふれた児童委員だからです。みんなが同じとは限りません。

日本の官僚は優秀です。彼らが作る法制度は極めて合理的です。国民の納得を得るのは,そんなに簡単なことではないからです。


3 市町村は,児童の適正な保護又は支援を図るために必要があると認めるときは,一時保護を行うことができる。



一時保護するのは,保護者から引き離す必要のある児童です。


これも次世代育成支援に関連しそうもないです。


一時保護は児童福祉法に規定されます。また市町村の業務ではなく都道府県の業務です。

よって×。


これらの問題で分かることは,この科目は児童福祉法が中心であることです。それを他の法律に絡めて出題しています。

強が進んだ人なら,一時保護を知らないわけはありません。

しかし,勉強が足りない人は・・・

一時保護って聞いたことがあるなぁ,と思ってこの選択肢を選んでしまいます。

勉強が足りない人の特徴は・・・

知っているものを選択肢しがちである,ということです。



4 常時雇用する労働者が一定数以上の事業主には,次世代育成支援の実施に関する計画の策定義務が課されている。



答えは,簡単なところにありました。


これが正解ですね。


一定数以上とは,101人以上ということになります。

勉強が進んでいる人なら正解できたはずですが,先に書いたように,簡単にこの問題で正解できないようにトラップを仕掛けているのです。

試験センターは,今までの受験生の膨大な解答データを持っています。

どのように問題を配置すると,どのくらいの正解率になるのか,計算して出題してしてきているはずです。

そのようにして,毎年の合格基準点を安定したものにしています。

国試問題は,試験委員が作成しますが,それを選び出して,150問をそろえるのは,日本の優秀な官僚です。

問題の難易度を決めるのは,何らかのルールに従っています。もちろん守秘義務がありますので,誰からもそれを語られることはありませんが,出題された問題を詳しく見ていくことで,そのルールはある程度分かってきます。

それを紹介しているのがこのサイトです。


5 企業は,雇用する労働者の申出により,3歳に達するまでの子について育児休業の取得を認めなければならない。




次世代育成支援対推進法は,先述のように,子どもが健やかに生まれて育つ環境を社会全体で整備することを目的とした法律です。

育児休業は極めて個人的な問題です。

法律の意図と違いそうです。

その通り,育児休業は,育児休業・介護休業法に規定されています。

よって×。



社会人の知識・知恵は,奥が深いです。

今まで見聞きしてきたことを手掛かりにしていけば,かなり問題を解く糸口がつかめます。


国試は,日本語で出題されます。


日本語的にとらえると,解ける問題はたくさんあります。


決して思考を止めてはいけません。


<今日の一言>


社会人には,記憶力に長ける学生にはない,知識・知恵がたくさんある



国試はマークシート。

答えは必ず問題文の中にあります。

知識・知恵を総動員して,正解にたどり着きましょう。


決して思考を止めてはいけません。

試験委員との知恵比べとも言えます。

負けないでくださいね。

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