2017年8月17日木曜日

文章の意味が分からなくても,読み解く力がカバーする!!

問題はわかっていたのに,試験会場では正解できなかった


国試会場では,よく起きることです。



1問を1分半弱で行わなければならない。


こう考えて時間を計りながら問題を解く訓練を行うのは,失敗のもとです。


以前にも紹介しましたが,平均すると1分半ということになりますが,すべてその時間で解かなければならない,ということではありません。


時間をかけるべき問題もありますし,答えがすぐ分かる問題もあります。



午前中の2時間15分で83問を解くというように考え方を変えましょう。



そうでなければ,時間を意識するばかりに問題を読むのが雑になります。


雑になると,試験委員が仕掛けたトラップに引っ掛けられる率が高まります。


とは言うものの問題をすべて理解しながら読もうとするのは,危険です。


大体こんなことを言っているのではないか,と見当をつけられれば,それでよいと思います。


この辺りのニュアンスを伝えることはとても難しいですが,何とか分かってもらえるように,いろいろご紹介していきたいと思います。


基礎力をつけると同時に,問題を読み解く力をつけることは,国試を突破するためには絶対に必要な力だと思っています。


その力は一朝一夕にはつかないのが現実です。そのためにも早くからの訓練は欠かせないのです。


文章のすべての意味が分からなくても,解ける問題は増えてくるはずです。




さて,それでは今日の問題です。


25回・問題10 

心理的効果に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。


1 ホーソン効果とは,集団作業において,物理的環境条件が悪化すると生産効率が低下することをいう。


2 リーダーシップのPM理論によれば,集団内の人間関係の維持機能が優先されて,業務目標の達成への働きかけの弱いリーダーシップ型は,Pm型に分類される。


3 同調とは,社会的行動のなかで,一人で作業するよりも他の人と一緒に作業しているとき,作業効率が向上することをいう。


4 集団規範とは,集団を一つにまとめる作用をする力のことであり,対人魅力と社会的魅力に分けられる。


5 社会的手抜きとは,集団で課題に取り組み,それぞれの人がどのくらい努力したかが目立たない状況だと,一人当たりの遂行量や努力が低下する現象をいう。



社会福祉士には,対クライエントへの対人援助とチームの調整役の役割があります。


さらにもう一段階上の役割としては,提供するサービスの質の向上を目指すチームマネジメントがあります。


今日の問題は,心理的効果です。社会福祉士に必要な知識はたくさんありますが,その中でも心理的効果は必須です。



それでは,詳しく見ていきましょう。



1 ホーソン効果とは,集団作業において,物理的環境条件が悪化すると生産効率が低下することをいう。


20世紀は「科学の時代」(モダニズム)です。


いかに「生産効率を上げるか」を追求していきます。


古典的管理手法には,テイラーによる「科学的管理論」があります。


これは,標準的な作業量を決めて,それよりも高い生産性の人には高い報酬,それよりも低い生産性には低い報酬,といったものです。


これにより,工場の生産性は上がり,大量生産が可能となりました。


大量生産,大量消費の時代の幕上げです。科学的管理手法の時代です。


メイヨーらは,さらに生産効率を上げるかを追求するため,ホーソン工場でいろいろな実験をしました。

照明を明るくしたり暗くしたり,休憩時間を長くしたり短くしたりしました。

最初は効果があるのですが,しばらくすると元に戻ってしまいました。

この実験で得られたことは,「物理的環境が生産効率を上げる」とメイヨーらが仮説を立てたものではなく,「インフォーマルな人間関係が生産性を上げる」というものでした。


これにより,管理学は,科学的管理論から「人間関係論」に比重が移っていくことになります。


さて,問題に戻ります。


ホーソン工場の実験では,物理的環境が変化しても生産効率はさほど変わりませんでした。

よって×。



2 リーダーシップのPM理論によれば,集団内の人間関係の維持機能が優先されて,業務目標の達成への働きかけの弱いリーダーシップ型は,Pm型に分類される。



PM
理論は,リーダーシップには, P機能=「目標達成機能」,M機能=「集団維持機能」の「強い」「弱い」の組み合わせによる4つのリーダーシップの類型です。

強いは大文字,弱いは小文字で表します。


集団内の人間関係の維持機能が優先されて,業務目標の達成への働きかけの弱いリーダーシップ型は,Pm型となります。

よって×。


3 同調とは,社会的行動のなかで,一人で作業するよりも他の人と一緒に作業しているとき,作業効率が向上することをいう。


これは同調ではなく,社会的促進です。

よって×。

社会的促進がより強く表れるのは複雑な作業よりも単純な作業です。



4 集団規範とは,集団を一つにまとめる作用をする力のことであり,対人魅力と社会的魅力に分けられる。


これは,集団規範ではなく,凝集性です。

よって×。


凝集性は,仲良し集団のつながりの強さです。


集団規範は仲良し集団のルールと言えます。



5 社会的手抜きとは,集団で課題に取り組み,それぞれの人がどのくらい努力したかが目立たない状況だと,一人当たりの遂行量や努力が低下する現象をいう。


これは,正解です。


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