今回は,我が国の社会保障制度の骨組みについて考えていきたいと思います。
我が国の社会保障制度の範囲と方向性を示したのは,1950(昭和25)年の社会保障制度審議会勧告です。
同勧告では,社会保障制度を以下のように述べています。
疾病,負傷,分娩,廃失,死亡,老齢,失業,多子その他の困窮の原因に対し,保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ,生活困窮に陥った者に対しては,国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに,公衆衛生及び社会福祉の向上を図り,もってすべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいうのである。 |
この時には,まだ協議の社会保障である老人保健は含まれていません。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題49 社会保障の理念や対象及びその範囲に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 「社会保障制度に関する勧告(1950(昭和25)年)」で示された保険的方法又は公の扶助の対象となる困窮の原因とは,疾病,負傷,分娩,怠惰,死亡,老齢,失業,粗暴,多子その他,である。
2 「平成18年度社会保障給付費」によれば,社会保障財源の収入総額に占める公費負担(国及び地方自治体)の割合はおよそ5割を超えている。
3 その第22条に「すべて人は,社会の一員として,社会保障を受ける権利を有している」と謳ったのは,アメリカ,イギリスによって唱えられ,後に連合国が容認した,いわゆる「大西洋憲章(1941年)」の一文である。
4 社会保障の所得再分配機能のうち,生活保護制度に代表されるように所得の高い者から低い者へ再分配することを,水平的所得再分配機能という。
5 我が国において公的社会保険制度と呼ばれるものは,年金,医療,労働者災害補償,雇用,介護の5つである。
とても難しいと思うような問題ですが,答えはそれほど難しくありません。
正解は,選択肢5です。
5 我が国において公的社会保険制度と呼ばれるものは,年金,医療,労働者災害補償,雇用,介護の5つである。
何のひねりもないものです。しかし,選択肢5に配置されていることで,受験者は混乱し,ここに至るまでに迷いの道に迷い込みます。
一問一答での勉強は,知識をつけることには向きますが,国家試験は5つの選択肢で構成されるために,最終的には,必ず国試問題スタイルになっているもので,解く練習をする必要があります。
それでは,ほかの選択肢も確認します。
1 「社会保障制度に関する勧告(1950(昭和25)年)」で示された保険的方法又は公の扶助の対象となる困窮の原因とは,疾病,負傷,分娩,怠惰,死亡,老齢,失業,粗暴,多子その他,である。
疾病,負傷,分娩,怠惰,死亡,老齢,失業,粗暴,多子その他
赤字で示した部分が余計です。
2 「平成18年度社会保障給付費」によれば,社会保障財源の収入総額に占める公費負担(国及び地方自治体)の割合はおよそ5割を超えている。
我が国の社会保障制度の根幹は,社会保険制度です。
なぜなら,大多数を対象とする制度だからです。
そのため,社会保障財源は,社会保険料が最も大きくなります。
そのように制度設計がなされるので,年度が替わってもそれが変わることはありません。
3 その第22条に「すべて人は,社会の一員として,社会保障を受ける権利を有している」と謳ったのは,アメリカ,イギリスによって唱えられ,後に連合国が容認した,いわゆる「大西洋憲章(1941年)」の一文である。
なになになに と思う問題です。
「すべて人は」から始まるのは,世界人権宣言です。
大西洋憲章については覚える必要はありません。
4 社会保障の所得再分配機能のうち,生活保護制度に代表されるように所得の高い者から低い者へ再分配することを,水平的所得再分配機能という。
所得の高い者から低い者へ再分配することは
垂直的所得再分配機能です。