少し前までは,渋沢栄一の名前を知らない人は多かったかもしれません。
しかし,今は知らない人はかなり少なくなったのではないでしょうか。
社会福祉士の国家試験で出題されるのは,全国社会福祉協議会源流の一つである中央慈善協会の初代会長だったということです。
社会事業ととても深いつかながりをもちます。
大河ドラマではパリでさまざまなものに刺激を受けたことが描かれました。
国家試験では出題されたことはありませんが,救護法の創設と実施に大きくかかわったことは特筆ものです。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題34 地域福祉の源流をつくった人物に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 賀川豊彦は,生活協同組合の父と呼ばれたが,アメリカへ渡り牧師として生涯を送った。
2 小河滋次郎は,済世顧問制度を創設し,民生委員の父と呼ばれた。
3 渋沢栄一は,晩年,実業界を退き中央慈善協会の初代会長の職務に専念した。
4 石井十次は,イギリスのトインビーホールの影響を受け,岡山で日本最初のセツルメントを開設した。
5 牧賢一は,社会福祉協議会の創設期から指導者として貢献し,『社会福祉協議会読本』(1953年)を著した。
この問題は決して難しくないですが,確実に正解するのは,それほど簡単なものではありません。
消去法をつかわなければならないタイプの問題だからです。
それでは解説です。
1 賀川豊彦は,生活協同組合の父と呼ばれたが,アメリカへ渡り牧師として生涯を送った。
賀川豊彦さんは,生活協同組合の父と呼ばれているのは適切ですが,アメリカに渡ってキリスト教を学んで,帰国してから布教活動を行っています。
2 小河滋次郎は,済世顧問制度を創設し,民生委員の父と呼ばれた。
小河滋次郎さんは,大阪府で林市蔵知事とともに方面委員制度を創設した人です。
民生委員の父と呼ばれるのは,林さんです。
済世顧問制度を創設したのは,岡山県知事の笠井信一さんです。
3 渋沢栄一は,晩年,実業界を退き中央慈善協会の初代会長の職務に専念した。
さて,今日のテーマの渋沢さんです。
渋沢さんは,一生のうち,500社以上の創設にかかわったと言われています。
よく知られるのは,現在のみずほ銀行の源流の一つである第一国立銀行を創設したことです。
そんな渋沢さんが実業界から退くことはないでしょう。実業界から最後まで実業界に身を置きました。
4 石井十次は,イギリスのトインビーホールの影響を受け,岡山で日本最初のセツルメントを開設した。
石井十次さんは,岡山孤児院を創設した人です。セツルメントではありません。
5 牧賢一は,社会福祉協議会の創設期から指導者として貢献し,『社会福祉協議会読本』(1953年)を著した。
これが正解です。牧賢一さんは,全国社会福祉協議会の初代事務局長を務めた人です。
社協活動のテキストである『社会福祉協議会読本』を著した実績があります。