国家試験は,どれだけ勉強しても知らないものが出題されます。
そういったものは,必ずしも得点できなくても合格できますが,正解できることに越したことはありません。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題33 地域福祉に関連した報告書等に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 「国民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための措置に関する基本的な指針」(平成5年厚生省告示)では,ボランティア活動を国民の義務として促進することを提言した。
2 「社会福祉基礎構造改革について(中間まとめ)」(平成10年,中央社会福祉審議会)では,地域での総合的な支援をするために福祉圏域を設定し,多様なサービス提供主体の参入を促進するとした。
3 「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会」報告書(平成12年)では,社会的排除に関する課題についての福祉事務所の役割と権限について言及した。
4 「2015年の高齢者介護」では,介護保険制度の実施状況を踏まえ「地域包括支援センター」を,おおむね中学校区ごとに設置することを提言した。
5 「地域福祉のあり方研究会報告書」では,共助を確立するための推進・整備方策として,情報の共有,活動拠点や地域福祉のコーディネーターなどの必要性について提起した。
(注)1 「2015年の高齢者介護」とは,「2015年の高齢者介護~高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて~」(平成15年,高齢者介護研究会)のことである。
2 「地域福祉のあり方研究会報告書」とは,「地域における『新たな支え合い』を求めて―住民と行政の協働による新しい福祉―」(平成20年,これからの地域福祉のあり方に関する研究会)のことである。
知っている報告書もあるかもしれませんが,知らないものもあるでしょう。
こういった問題は,知っている知識を駆使して推測し,考えることを求めるタイプのものです。
それでは,解説です。
1 「国民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための措置に関する基本的な指針」(平成5年厚生省告示)では,ボランティア活動を国民の義務として促進することを提言した。
この指針は,かなり古いものです。しかし,ボランティア活動は今でも国民の義務にはなっていません。
ということは,このようなことは提言していないだろうと推測することができそうです。
この指針で述べられているものは,ボランティア活動は,自主性を尊重して推進することです。
2 「社会福祉基礎構造改革について(中間まとめ)」(平成10年,中央社会福祉審議会)では,地域での総合的な支援をするために福祉圏域を設定し,多様なサービス提供主体の参入を促進するとした。
社会福祉基礎構造改革について(中間まとめ)も今となっては古いものとなり,もう出題されることもないように思いますが,現在につながるものとして重要です。
これをもとにして,社会福祉事業法が社会福祉法に改正されています。
しかし,これが正解か判断できないと思います。こういったときは,冷静に△をつけて,次に進みます。
この選択肢が間違っているのは,福祉圏域の設定については,述べられていないことです。
難しいです。
3 「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会」報告書(平成12年)では,社会的排除に関する課題についての福祉事務所の役割と権限について言及した。
「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会」報告書が,歴史的に重要なのは,わが国において,社会的包摂(ソーシャルインクルージョン)を初めて公文書に記載したことです。
これは覚えておきたいです。
4 「2015年の高齢者介護」では,介護保険制度の実施状況を踏まえ「地域包括支援センター」を,おおむね中学校区ごとに設置することを提言した。
「2015年の高齢者介護」は,2015年の高齢者介護のあり方を述べたものです。時期的に地域包括支援センターができる前に出されたものなのでそれっぽいですが,地域包括支援センターの設置は述べているものではありません。
この当時は,ユニットケアがどんどん取り入れられていった時期であり,大型施設をばらして,地域で展開する今日の地域密着型特養や小規模多機能型のようなものを提言し,住み慣れた地域で住み続ける方法を考えたものです。
5 「地域福祉のあり方研究会報告書」では,共助を確立するための推進・整備方策として,情報の共有,活動拠点や地域福祉のコーディネーターなどの必要性について提起した。
これが正解です。落ち着いて読めば,これが今日につながる内容が含まれていることに気がつくことができるでしょう。
なお,この報告書では,「自助」「共助」「公助」の視点でまとめられており,まだ「互助」は現れてません。
「互助」が現れてくるのは,2010年代に入ってからのことです。