社会福祉士の国家試験科目は,19科目あります。
人によって科目の捉え方は違うとは思いますが,19科目のうち,文章が最も難解な科目は,「社会学と社会システム」ではないかと思います。
それは,日常で使われない用語がたくさん使われるからです。
その文章をすべて理解しようと思うのは悪いことではありませんが,真面目すぎるのは危険です。
大体どのようなことを言っているのか,全体のニュアンスをつかむことが重要です。
それでは,今日の問題です。
第25回・問題16
近代社会の特質に関する次の考え方のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 近代社会の社会的公正には,機会の平等を前提に貢献度に応じて分配する均等原理という考え方がある。
2 近代社会では,コミュニティから人々の関心に基づいた機能的なアソシエーションが派生し,社会分化が一層進む。
3 近代社会では,個人が社会のなかで占める地位を決定するのは業績よりも属性である。
4 社会進化論では,近代社会への移行を産業型社会から軍事型社会への進化であるととらえた。
5 近代社会では,社会移動が常態化したので,ブルジョアジーとプロレタリアートという2つの階級が解消され,階級間の平等が実現した。
難解な用語の連続ですね。
近代社会とは,何のことなのでしょうか。
この科目で,近代社会と言えば「社会進化論」が連想できればOKです。
社会進化に関連して,過去に出題されたものは以下のようなものです。
ゲマインシャフト → ゲゼルシャフト
コミュニティ → アソシエーション
軍事型社会 → 産業型社会
機械的連帯 → 有機的連帯
伝統的支配・カリスマ的支配 → 合法的支配
神聖化 → 世俗化
ゲマインシャフトやコミュニティは社会進化ではなく,集団の類型ではないのか,と思う人もいると思います。
確かにそうですが,社会進化論であるとも言えるのです。
それぞれの意味をよく考えてみるとその意味が分かることでしょう。
さて,先ほどの問いです。
近代社会とは,何のことなのでしょうか。
上記のものでは,→ の後の部分です。
つまり近代社会は
ゲゼルシャフト
アソシエーション
産業型社会
有機的連帯
合法的支配
世俗化
などがそれに当たります。
それでは,詳しく見ていきましょう。
1 近代社会の社会的公正には,機会の平等を前提に貢献度に応じて分配する均等原理という考え方がある。
貢献原理(原則),必要原理(原則)に関しては,この科目よりは「社会福祉の原理と政策」で出題されるものかもしれません。
とても難しい文章に感じるでしょう。
真面目に真正面から解釈しようと思うと深みにはまります。
おおよそ理解できれば十分です。
(近代社会の)社会的公正には,(機会の平等を前提に)貢献度に応じて分配する均等原理という考え方がある。
( )の部分を外します。
社会的公正には,貢献度に応じて分配する均等原理という考え方がある。
均等原理という言葉の正式な意味が分からなくても,均等割(あるいは割り勘)という言葉があるように,みんなに均等に振り分けるというイメージはつかめるでしょう。
それに対して,「貢献度に応じて分配」するのは,人によって分配される量が変わることだと捉えることができることでしょう。
これから分かるのは,「貢献度に応じて分配」と「均等原理」は矛盾することです。
よって×。
社会的公正とは,誰もが納得できる(あるいは,できやすい)ことを言います。
2 近代社会では,コミュニティから人々の関心に基づいた機能的なアソシエーションが派生し,社会分化が一層進む。
コミュニティ,アソシエーションを提唱したのは,マッキーバーです。
コミュニティは,地域の共同体,アソシエーションは人為的な集団です。
アソシエーションは,会社や組織です。ニッチ(すき間)な市場をターゲットにしている企業はたくさんありますね。
高度な社会に発展すればするほど,ニッチな分野は成立します。興味関心やニーズは人それぞれなので当然ですね。
社会分化は一層進みます。
よって正解です。
AKB48は人数が多いグループです。それでも成り立つのは,きっとメンバーの個性はそれぞれ際立っているのでしょう。
今は,いろいろなAKBグループが出来上がっています。ファンが進化し,どんどん分化することで成り立つのではないでしょうか。
3 近代社会では,個人が社会のなかで占める地位を決定するのは業績よりも属性である。
近年の出題は決して多くはありませんが,業績主義と属性主義というものがあります。
属性主義は,日本では江戸時代に見られる生まれた家柄によって,仕事,出世が決まっているような世界です。
業績主義は,現在の日本のように,実力で成り上がっていくような社会です。
現在の日本が完全な業績主義社会になっているかは疑問ですが,現代社会の基本は属性主義社会です。
よって×。
4 社会進化論では,近代社会への移行を産業型社会から軍事型社会への進化であるととらえた。
これは,先述のように, 軍事型社会 → 産業型社会 です。
よって×。
5 近代社会では,社会移動が常態化したので,ブルジョアジーとプロレタリアートという2つの階級が解消され,階級間の平等が実現した。
若い世代の人には,ブルジョアジーとプロレタリアートなんて言葉はなじみがないと思います。
ブルジョアジーは資産家階級,プロレタリアートは労働者階級です。
社会移動には,世代内移動と世代間移動があります。
世代内移動は,一生のうちに,社会的地位が変わること。
世代間移動は,親から子の間で社会的地位が変わること。
このような移動は,現代社会では起こりますが,平等ではないです。平等になるためには,社会主義でしょう。
よって×。
<今日の一言>
難しい用語は,難しいと思うと心が弱くなります。
難しくても,日本語です。
分かりにくいものはだいたいこんな意味かなぁ,と見当をつけて,読み進めましょう。
知識をつけるのは大切ですが,知識だけで合格基準点を超えるのは大変です。