今日のテーマは「歴史問題の攻略法」です。
苦手な人にとっては,攻略法なんて存在するのか,と思うかもしれません。
それをつかむと何とか見えてくることでしょう。
社会福祉士の国試は,歴史の試験ではありません
時代背景を知っておくことが攻略法の一つです
覚えるものは数がものすごく少ないです。苦手にするにはもったいないです。
それでは今日の問題です。
第25回・問題50
医療保険制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 我が国初の社会保険立法である健康保険法は,1911 (明治44)年に制定された。
2 1938(昭和13)年には,強制加入を求める国民健康保険法が制定された。
3「福祉元年」と呼ばれた1973(昭和48)年から,老人保健制度が実施された。
4 1984(昭和59)年の健康保険法等の改正で,退職者医療制度が創設された。
5 2004(平成16)年の医療制度改革で,高齢者医療制度が創設された。
医療保険制度の発展過程です。
日本の公的社会保険の中では,もっとも古いのが医療保険です。
労働争議を収拾するために,創設したのが始まりです。
時代背景とともに覚えていきましょう。
1 我が国初の社会保険立法である健康保険法は,1911 (明治44)年に制定された。
健康保険法は,1922年に創設されたものです。
1911年ではありません。
よって×。
このような問題を見るとやっぱり年号を覚えなければならない,と思うかもしれません。
1917年にロシア革命があり,ソビエト連邦という共産主義国家が設立されたのは,当時の国家指導者にとって脅威だったはずです。
この後に健康保険法が成立しています。
1911年であることはあり得ないのです。
ちなみに1911年にできたのは,工場法です。
工場法は,戦後に労働基準法ができるまで存続しました。
2 1938(昭和13)年には,強制加入を求める国民健康保険法が制定された。
国民健康保険法ができたのは,戦時中である1938年であることは正しいです。
しかし強制加入になったのは,1961年の国民皆保険の時です。
よって×。
3 「福祉元年」と呼ばれた1973(昭和48)年から,老人保健制度が実施された。
老人保健制度が実施されたのは,老人保健法ができた1983年です。
これによって老人無料化の時代が終わりました。
無料化が実施されたのが福祉元年と呼ばれた1973年です。
奇しくもこの年の暮れに第一次石油危機が起きて,高度経済成長が終わります。
4 1984(昭和59)年の健康保険法等の改正で,退職者医療制度が創設された。
退職者医療制度は,いつできたかは知らないと思います。
ここでは冷静に▲をつけます。
答えを先に言うとこれが正解です。
退職者医療制度は,サラリーマン等が退職すると,国民健康保険に加入します。
しかし国保の負担が大きいので被用者保険の保険者の拠出金で賄われていました。
同制度は平成26年度末で廃止されています。
5 2004(平成16)年の医療制度改革で,高齢者医療制度が創設された。
後期高齢者医療制度は,2008年に実施されています。
2004年の医療制度改革で創設されたものではありません。
よって×。
後期高齢者医療制度は,老人保健法を改正した「高齢者の医療を確保する法律」(高齢者医療確保法)によって創設されています。
福祉元年はリアルタイムでは知らなくとも,後期高齢者医療制度はいつできたのかは覚えているのではないでしょうか。こういうところに人生経験が豊富な社会人は有利だと言えます。
退職者医療制度は,廃止されることが決まっているのに,あえて出題したのは第25回の国家試験的だなぁと感じます。
試験委員のレクイエム,あるいはノスタルジックのようなもののような感じがします。
老人保健法ができても国保の負担が大きかったため,退職者医療制度ができました。
今後出題されるとしたら,歴史の中でしか出題されるものではないですが,わが国の医療保険の発展過程上では,語り継がれていくものでしょう。
社会福祉制度は,時代が必要として生まれていきます
必然性がないのに,突然生まれてくるものではありません。
国家試験でもし分からないものが出題された時,時代を想起してみると良い
必ず何かが見えてきます。