「社会学と社会システム」は苦手
と感じる人は多いのではないかと思います。
難しい,難しい,と思うと・・・・・・必要以上に,苦手意識が出て来てしまうかもしれません。
しかし,皆さんに・・・覚えていてほしいこと・・・
社会学と社会システムは難解な科目であることは間違いないですが,その中にも比較的難しくない領域もあります。
それでは今日の問題です。
第25回・問題20
役割概念に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 個人が,将来このような役割を遂行できるようになりたいと望むことを,「役割期待」という。
2 親と子ども,ソーシャルワーカーと利用者などのように,立場性の異なる者の間で役割の分担や調整がうまくいかないことを,「役割葛藤」という。
3 個人が担う複数の役割を両立させていく際の困難さを規定する役割間の類似度を,「役割距離」という。
4 個人が担う一つの役割に基づく行為や態度を相手によって使い分けることを,「役割分化」という。
5 個人が,他者や集団の観点から自身を見て自らの行為のあり方を形成していく過程を,「役割取得」という。
役割に関する用語はたくさんあります。
そのため,混乱しそうになるかもしれません。
しかし,すべて日本語です。
言葉の中にヒントがあります。
覚える時はそのヒントを活かしていきましょう。
それでは,詳しく見て行きましょう。
1 個人が,将来このような役割を遂行できるようになりたいと望むことを,「役割期待」という。
役割期待は,その役割に対する周りの人の期待です。
よって×。
チームリーダーになったら,チームリーダーとしての役割を遂行することを周りの人は期待します。
2 親と子ども,ソーシャルワーカーと利用者などのように,立場性の異なる者の間で役割の分担や調整がうまくいかないことを,「役割葛藤」という。
役割葛藤は,役割期待が異なることで生じる葛藤です。
よって×。
3 個人が担う複数の役割を両立させていく際の困難さを規定する役割間の類似度を,「役割距離」という。
役割距離は,役割に関する用語の中では,少し分かりにくいものかもしれません。
役割距離の「距離」は,他者の役割期待から距離を置くことです。
そのことによって心の余裕などを生み出すことができます。
過去には「外科医が手術中に冗談を言う」という変な文章が出題されたことがあります。
周りのスタッフにとっては,真面目に手術を遂行してもらいと思うところでしょうが,冗談を言うことによって,心の余裕を生み出しているのです。
問題に戻りますと,とんでもなくでたらめに作ったものであることが分かるでしょう。
よって×。
理論系科目で誤りの文を作るのは本当に難しいものです。
最初に読んだ時,頭にスーっと入ってこないものは,誤りであることが多いです。
無理に作った問題は,言い回しに無理が生じるものです。
多くの受験生は,でたらめに作った文章を理解しようと苦労します。そして時間を消費します。
最初に読んだ時,頭にスーっと入ってこないものは,誤りであることが多い
4 個人が担う一つの役割に基づく行為や態度を相手によって使い分けることを,「役割分化」という。
これももっともらしい文章を作っていますが,分化は細かく分かれていくことを言います。
役割を使い分けることは分化とは言わないです。
役割分化は,役割が単純ではなく,多様化・高度化していくことです。
よって×。
一人に対する役割も,その時々で適切なものは変化します。
優秀なワーカーは,たくさんの方法論をもっていることが重要です。
役割を使い分けるのも能力と言えば能力だと思いますが,それよりも,相手の期待を機微に感じとって,対応することの方が重要です。
5 個人が,他者や集団の観点から自身を見て自らの行為のあり方を形成していく過程を,「役割取得」という。
役割取得は,自分の役割を取得していく過程です。
よって正解です。
それを少し難しく言うと,自分を客観化して,別の自分の立場から自分を見ることで,自分に必要な役割を察知していく過程を言います。
社会学の用語は難しいかもしれませんが,用語そのものにもともとの意味があるものを社会学に取り入れているものが多いです。
それらが,「距離」であったり,「分化」であったりします。
難解な科目ですが,そのために比較的理解しやすいものもたくさんあります。
それらの領域を早く見つけ出していただきたいと思います。