障害者分野になじみがない人にとっては,この分野は苦手に感じるかもしれません。
しかし,障害者福祉制度の多くは,介護保険になぞって作られているので,高齢者分野の人は理解しやすいと思います。
高齢者分野に関連のない人は,2つの制度を整理しながら覚えると知識が定着します。
さて,今日のテーマは「地域相談支援と計画相談支援の整理の仕方」です。
地域相談支援には,地域移行支援と地域定着支援があります。
精神科病院や入所施設で生活している精神障害者などが地域で生活するための相談支援です。
基本は医療の領域です。
医療に関するものの多くは,市町村の役割ではなく,都道府県の役割となっています。
地域相談支援は,指定一般相談支援事業者が行います。
指定するのはもちろん都道府県です。
もう一方の計画相談支援は,ケアマネジメントです。
ケアプランを作成するサービス利用支援,モニタリングを実施する継続サービス利用支援,の2つがあります。
計画相談支援は,指定特定相談支援事業者が行います。
指定するのは市町村です。
介護保険の居宅介護支援事業者の指定も市町村が行っています。
以前は,都道府県,指定都市,中核市が行っていましたが,現在は,市町村に権限移譲されています。
ケアマネジメントを行う事業者の指定は市町村
と覚えるのがシンプルになりました。
介護保険と似たものには,基幹相談支援センターがあります。
地域包括支援センターと業務もよく似ています。
しかし違う点もあります。
地域包括支援センターの設置は,任意
基幹相談支援センターの設置は,努力義務
2024年4月の改正で,基幹相談支援センターは,任意から努力義務に変更になりました。
この部分は,覚えるのが少し面倒になりました。
さて,これらの情報をもとに今日の問題です。
第25回・問題57
障害者総合支援法のもとでの相談支援に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 支給決定プロセスにおいて,サービス等利用計画案は支給決定がなされた後に作成されるものである。
2 相談支援専門員は,指定計画相談支援においてサービス等利用計画を作成し,地域移行支援と地域定着支援を行う。
3 地域定着支援は,障害者支援施設に入所している障害者や精神科病院等に入院している精神障害者に対して,住居の確保や新生活の準備等について支援するものである。
4 相談支援専門員は,サービス利用支援においてサービス等利用計画を変更するとともに,関係者との連絡調整を行う。
5 基幹相談支援センターは,虐待防止等権利擁護のために必要な援助を行うことが期待されている。
先の情報だけでは,分かるものと分からないがあるかもしれませね。
それでは,詳しく見ていきましょう。
1 支給決定プロセスにおいて,サービス等利用計画案は支給決定がなされた後に作成されるものである。
さきほどの説明にはなかったので,分からない人は▲をつけておきましょう。
先に,サービス等利用計画案を作成して,それをもとに市町村審査会の意見などを含めて,市町村が支給決定します。
支給決定後には,正式なサービス等利用計画を作ります。
よって×です。
2 相談支援専門員は,指定計画相談支援においてサービス等利用計画を作成し,地域移行支援と地域定着支援を行う。
計画相談支援は,ケアマネジメントです。
地域移行支援と地域定着支援は,地域相談支援です。
よって×。
3 地域定着支援は,障害者支援施設に入所している障害者や精神科病院等に入院している精神障害者に対して,住居の確保や新生活の準備等について支援するものである。
地域移行支援と地域定着支援は,詳しく説明しませんでした。
しかし,イメージは湧くでしょう。
地域移行支援は,施設・病院から地域に移行するための支援,地域定着支援は,地域に移行した障害者が地域生活を継続するための支援です。
施設入所・病院入院者に対して行うのは,地域移行支援です。
よって×。
4 相談支援専門員は,サービス利用支援においてサービス等利用計画を変更するとともに,関係者との連絡調整を行う。
サービス利用支援は,最初にケアプランをつくる支援です。
支給決定後,定期的に行うのは,継続サービス利用支援における継続サービス等利用計画の作成です。継続サービス利用支援は,モニタリングとケアプランの見直しを行います。
よって×。
5 基幹相談支援センターは,虐待防止等権利擁護のために必要な援助を行うことが期待されている。
基幹相談支援センターは,介護保険の地域包括支援センターに相当します。権利擁護を業務の一つとしているのは,障害者も介護保険も同じです。よって正解です。
丸覚えするのではなく,一つひとつの制度の理由を考えると,名称も覚えやすくなり,ど忘れも起きにくくなります。
漢字は,それだけで意味を持っています。そこから業務を推測することが可能です。
選択肢1は,▲を付けました。
しかし推測することはできます。
支給決定しているのに,サービス等利用計画案はおかしいのではないか,と思うでしょう。
この疑問が湧けば,サービス等利用計画案ではなく,正式なサービス等利用計画はいつ作成するのだろう,といったもう一つの疑問が出て来ます。
このように,制度の内容を知らなくても,対応が可能なこともあります。