そのため,私たちチームfukufuku21は,人名を深めてみた結果,現行カリキュラムで出題された29名中,2回以上出題された5名(2回以上出題されたのは7名だが,2名はほかの科目でも出題)が重点課題であることを発見しました。
人名を覚えるのが苦手でも5名なら何とかなるでしょう。
さて,社会理論で絶対に覚えたい5人衆の3人目は,マートンです。
マートンという名前が出題されたのは,2回です。
覚えるべきポイント
①逆機能(官僚制の逆機能)
②社会的逸脱(アノミー)
この2つに集約されます。マートンが提唱したもので国家試験に出題されたものは,潜在的機能(意図せざる結果),準拠集団など多岐にわたります。
しかしそこには「マートン」という名称は国家試験では使われません。
人名を覚えることではなく,その内容を覚えることが重要なのが,このことからよく分かると思います。
逆機能
システムがうまく機能しないこと。
また,ウェーバーが合理的支配をよりすすめたものとして「官僚制」を挙げていますが,マートンは,官僚制がうまく機能しないことを「官僚制の逆機能」と呼びました。
今日の日本で言えば,忖度(そんたく)や官僚による文書改ざんなどが,誰かの指示によって行われたものではなく,自発的に行われたものだとすれば,官僚制の逆機能と言えるのかもしれません。
逆機能は,多くの使われ方がされます。
たとえば,
スマホが普及する中,スマホがうまく使えこなせないことがストレスとなる。
などです。
アノミー
社会的逸脱(犯罪など)は,文化目標とその達成手段との不一致によって生じる。
デュルケムは,アノミーで自殺を論じましたが,マートンはアノミーで社会的逸脱を論じました。
文化目標とその達成手段との不一致とは
アメリカンドリームなどのように夢は大きくても,実際に自分を振り返るとアメリカンドリームを達成するための手段や機会がないことで,そこにいらだち,逸脱するというものです。
社会的逸脱に関する理論の出題の中心は,ラベリング理論(逸脱者としてレッテルを貼ることで逸脱するという理論。重要なのはレッテルを貼る側)ですが,それに絡めてアノミー論が出題されます。
それでは,マートンに関連するものをチェックしましょう。
■官僚には組織目標を効果的に実現するために,反応の信頼性と規程の遵守が求められるが,これへの過剰な同調が生じると臨機応変の処置がとれなくなる。これは,マートン(Merton,R.)が論じる官僚制の逆機能の一局面である。 (第23回・問題17・選択肢2)
■パーソンズ(Parsons,T.)は,潜在的機能や逆機能に着目しつつ,合理性と共通価値に基づく目的―手段関係を追求するコミュニケーション行為の理論を論じた。 (第25回・問題19・選択肢5)
■ラベリング理論とは,機能主義的な立場から順機能・逆機能,顕在的機能・潜在的機能といった概念を導入しつつ,逸脱や逸脱行動を説明する立場である。 (第29回・問題21・選択肢1)
1つめと2つめは,逆機能に関連するもの,3つめはアノミー論に関連するものです。
それでは,詳しく見ていきましょう。
■官僚には組織目標を効果的に実現するために,反応の信頼性と規程の遵守が求められるが,これへの過剰な同調が生じると臨機応変の処置がとれなくなる。これは,マートン(Merton,R.)が論じる官僚制の逆機能の一局面である。
これは正解です。逆機能(官僚制の逆機能)は,とても重要です。確実に理解しておいてください。
■パーソンズ(Parsons,T.)は,潜在的機能や逆機能に着目しつつ,合理性と共通価値に基づく目的―手段関係を追求するコミュニケーション行為の理論を論じた。
これは,完全にでたらめ問題です。潜在的機能や逆機能に着目したのは,マートンです。コミュニケーション行為を提唱したのは,ハーバマスです。
社会的行為と言えば,ウェーバーが有名ですが,コミュニケーション的行為はハーバマスなので注意です。
■ラベリング理論とは,機能主義的な立場から順機能・逆機能,顕在的機能・潜在的機能といった概念を導入しつつ,逸脱や逸脱行動を説明する立場である。 (第29回・問題21・選択肢1)
ラベリング理論ではなく,マートンのアノミー論です。
マートンは,このようにラベリング理論などに絡めて出題されます。
次回は,テンニースです。