マルクスは,旧カリキュラムを含めると7回出題されています。
マルクスはこの科目でしか出題されていません。それなのに番外編に入れている理由は,経済学者だからです。
経済学者なのに,この科目で出題されているところがマルクスを理解するヒントとなります。
マルクスは,著書「資本論」などで知られます。
社会には,生産手段を持つ資本家(ブルジョアジー)と生産手段を持たない労働者(プロレタリアート)の2つの階級があると考えました。
また,社会には資本主義と共産主義があり,より高い次元のものが共産主義による社会だと考えました。
マルクスが活躍したのは,19世紀後半です。ブースの貧困調査では,ロンドン市民の30%が貧困に陥っていることを明らかにしました。この時代は,資本家による経済的搾取が行われ,それによって労働者に多くの貧困を生み出していたのです。
そこでマルクスは,過剰な利益は,資本家に帰属するものではなく,労働者に還元されるべきものであると考えました。
それで行き着いたのが,共産主義です。
共産主義は,資本家と労働者という階級が廃止された社会です。このように社会が発展する原動力は,階級闘争にあると考えました。
マルクスに関する出題は,この程度を覚えておけば良いと思います。
マルクスの考えは,その後労働者階級に受け入れられて,共産主義国家を生み出すことになります。
ロシアでは,レーニンが孤立する労働者を結びつける政治的リーダーたる前衛党が登場し,資本主義を打倒する闘争を指揮すると考えて,そして実際に革命を起こして共産主義国家が樹立されました。
それが1917年。つまり2017年が世界で初めて共産主義国家が誕生して100年でした。
高い理想によって生まれて,労働者の楽園とまで言われた共産主義が今日では廃れてきてしまったのはなぜでしょうか。
それは,マルクスの時代にはなかった,最低限度の生活は国家が保障するというナショナルミニマムといった考えが生まれて資本主義国家は福祉国家に姿を変えていったこと。
そして,もう一つ重要なことは,共産主義では,能力に応じて働き,必要に応じて受け取る,というスタイルは,競争を生み出しにくかったことです。
「福祉サービスの組織と経営」では,さまざまな組織論を学びますが,その基本となっているのは,マズローの欲求段階説です。最上位のニードは,「自己実現欲求」です。修正資本主義では,このニード論が適度な競争を生み出し,自己実現を生み出す原動力となりました。
さて,これらの知識をもとに,マルクスの問題を確認していきましょう。
※以前にマルクスが現行カリキュラムで出題回数は,2回と書きましたが,よく調べたら3回でした。
■マルクス(Marx,K.)は,階級を生産手段の所有と非所有に基づいて区別されると定義した。 (第26回・問題15・選択肢1)
これは正解です。生産手段を所有しているのはブルジョアジー,生産手段を所有していないのはプロレタリアートです。プロレタリアートは,生産手段を持たないので,労働力を商品化します。
労働力の商品化と聞いて「ぴーん」と来た人もいるでしょう。エスピン-アンデルセンが福祉レジームを分類した時の指標です。これについては別の機会に紹介したいと思います。
■マルクス(Marx,K.)は,階級闘争が歴史を動かしていると考え,孤立する労働者を結びつける政治的リーダーたる前衛党が登場し,資本主義を打倒する闘争を指揮すると考えた。 (第22回・問題17・選択肢2)
前半の「階級闘争が歴史を動かしている」と考えたのは,マルクスで正解ですが,後半の「立する労働者を結びつける政治的リーダーたる前衛党が登場し,資本主義を打倒する闘争を指揮する」と考えたのは,レーニンです。よって間違いです。
■マルクス(Marx,K.)は,労働を重視しつつも,それが生む剰余価値は私有財産制のもとでは生産手段を有する資本家の正当な取り分であるという考え方を提示した。 (第25回・問題19・選択肢3)
マルクスは,剰余価値は,労働者に還元すべきだと考えました。よって間違いです。
マルクスは何度も出題されていますが,毎回姿を変えて出題されていることに気が付くことでしょう。
ただ暗記するだけでは対応不可能です。
マルクスで押さえておきたいポイント
階級には,資本家,労働者がある。
マルクスの考えは,その後,共産主義国家につながっていく。
これを基本に押さえておいて,形を変えられた場合は,ここから想像して答えを考えることです。
問題を解くとき,自分の中で情報を交換することが得点力が大切です。