(ウェーバーは英語読み。ヴェーバーはドイツ語読み)
現行カリキュラム9回中6回の出題 出題率66.7%!!
それでは,まずどのように出題されてきているか,確認しましょう。
まだ今の時点では,何を言っているのか分からなくて良いです。
■ヴェーバー(Weber,M.)は,官僚制による合理化が一層進行するが,それに反対して情熱的に異議を唱えるカリスマが多数登場するようになると考えた。 (第22回・問題17・選択肢3)
■官僚制組織は近代以前に行われてきた非合理的な慣習を温存する役割を果たしてきた。ヴェーバー(Weber,M.)は,社会の近代化の過程で普遍的かつ必然的に生じる現象として官僚制組織をとらえ,その伝統的性格に着目した。 (第23回・問題17・選択肢4)
■ウェーバー(Weber,M.)の支配の諸類型に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 (第28回・問題15)
1 合法的支配とは,ある私的な関係に限って認められたルールに基づく支配体制である。
2 官僚制による支配とは,権力者の恣意的な判断や決定による支配体制である。
3 カリスマ的支配とは,非日常的な資質の持ち主によって成立する支配体制である。
4 家父長制的支配とは,家業を遂行する経営的な能力に基づく支配体制である。
5 伝統的支配とは,過去に制定された法に基づく支配体制である。
■ヴェーバー(Weber,M.)は,行為を行為者にとっての主観的意味から4つの類型に分け,そのなかで目的合理的行為や価値合理的行為に着目して近代の合理性を論じた。 (第25回・問題19・選択肢1)
■ヴェーバー(Weber,M.)は,階級を社会的な名誉や威信に基づくものと定義したので,身分と同様,生得的であると考えた。 (第26回・問題15・選択肢2)
■ヴェーバー(Weber,M.)は,近代の組織活動において計算に基づく予測可能性が低下すると考えた。 (第26回・問題16・選択肢2)
本当に難しいと思います。
ウェーバーについて,出題されているのは,
(1)支配システム
(2)社会的行為
の2つに分類できます。
まずは,支配システムを押さえます。
支配システムとは
誰かが命令した場合,それを人々が受け入れることを言います。
ウェーバーには,支配システムには,3つの類型があると述べています。
①伝統的支配
神聖なもの,慣習によるもの,などによるものです。日本では昔の天皇制,家父長制(親の言うことは絶対的)などが伝統的支配の類型になります。
②カリスマ的支配
特別な能力(カリスマ)を持った人による支配です。「ちょっと極端だけれど,この人の言うことなら従える」と思えるようなものです。戦国武将の織田信長や豊臣秀吉などがカリスマ的支配と言えるでしょう。
この2つは,誰でもできるものではありません。どちらかと言えば,神がかったものと言えるでしょう。
最後の一つは,
③合法的支配
規則(法)による支配です。近代民主国家は,合法的支配です。伝統的支配やカリスマ的支配と違い,規則により命令し,人々は規則によって従います。
合法的支配をより進めたものが官僚制です。
官僚制の特徴は,
文書主義
規則による権限の明確化
規則による上下関係の明確化
などがあります。
支配システムは,「福祉サービスの組織と経営」でも出題されます。
ウェーバーは,伝統的支配やカリスマ的支配から離脱する脱魔術化によって近代化すると考えました。その過程は世俗化といいます。
さて,ウェーバーのもう一つのポイントは「社会的行為」です。
ウェーバーは,人の行為はその人にとって意味のあるものであり,人の行為によって社会は成り立っていると考え,それを理解しようとしました。
それがウェーバーの中心的研究分野である理解社会学です。
簡単に言うと「人の行為には動機があり,個人が社会を作り上げている」というものです。
ウェーバーのこの考え方を方法論的個人主義と呼ぶそうです。
ただし方法論的個人主義という用語は,旧カリ時代の第14回国試のたった1回しか出題されたことがないので覚える必要性はありません。
ウェーバーが提唱した社会的行為は4つあります。
①目的合理的行為
目的を達成するための行為です。「国家試験合格」が目的なら,受験勉強することです。
②価値合理的行為
行為自体に意味がある行為です。合格祈願,招き猫を置く,健康祈願など,その行為に意味がある行為です。ただしその行為による結果は重視されません。なぜなら自分の期待する結果を確実に得るためなら,勉強する,商売の勉強をする,健康的な生活をする,という行為を行うからです。しかし精神性を高めるなど,直接的ではなくとも間接的な意味があります。
★この2つについている「合理的」という用語は,行為のつじつまが合っているようなものを指しています。つまり,「何のためにそうしているのか」を問われたら,方法論は違っても「国試に合格するため」と答えるでしょう。
③伝統的行為
習慣化・慣習化された行為です。習慣化は,朝起きたら顔を洗うなど,慣習化は,朝仏壇に線香をあげる,村祭りに参加する,なとです。
④感情的行為
自分の感情による行為です。人を怒りつけるなどです。
★この2つは,合理的行為(つじつまがあっている)ではありません。「何のためにそうしているか」と問われたら,明確に答えられず「習慣だから」「昔からみんなやっているから何となく」といった答えが返ってくることが多いかもしれません。
ウェーバーが提唱した社会的行為には4つありますが,近代化を進めるものは「目的合理的行為」「価値合理的行為」,前近代的なもの(近代化を進めない)は「伝統的行為」「感情的行為」と分類することができると思います。
ウェーバーは,社会学の大家なので,「支配システム」と「社会的行為(理解社会学)」のみならず,他のもの,例えば,「階級」「予測可能性」が出題されています。
これらは,ウェーバーは,合法的や合理的などを述べた人なので,彼ならこういうことを言うだろう,といった感じで対応可能です。
つまり,「こういう規則性があれば,こういう結果になるだろう」と考えるだろう,といった推測です。
それでは,それぞれを解説していきましょう。
■ヴェーバー(Weber,M.)は,官僚制による合理化が一層進行するが,それに反対して情熱的に異議を唱えるカリスマが多数登場するようになると考えた。
カリスマ的支配は,前近代的なものです。近代社会では合理的支配が中心なので,カリスマが登場したとしても,それは少数派であると考えられます。よって間違いです。
■官僚制組織は近代以前に行われてきた非合理的な慣習を温存する役割を果たしてきた。ヴェーバー(Weber,M.)は,社会の近代化の過程で普遍的かつ必然的に生じる現象として官僚制組織をとらえ,その伝統的性格に着目した。
近代以前に行われてきた非合理的な慣習を温存する役割を果たしてきたのは,伝統的支配やカリスマ的支配です。近代的社会では,規則による合理的支配が中心となります。よって間違いです。
■ウェーバー(Weber,M.)の支配の諸類型に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 合法的支配とは,ある私的な関係に限って認められたルールに基づく支配体制である。
2 官僚制による支配とは,権力者の恣意的な判断や決定による支配体制である。
3 カリスマ的支配とは,非日常的な資質の持ち主によって成立する支配体制である。
4 家父長制的支配とは,家業を遂行する経営的な能力に基づく支配体制である。
5 伝統的支配とは,過去に制定された法に基づく支配体制である。
正解は3のカリスマ的支配です。
■ヴェーバー(Weber,M.)は,行為を行為者にとっての主観的意味から4つの類型に分け,そのなかで目的合理的行為や価値合理的行為に着目して近代の合理性を論じた。 (第25回・問題19・選択肢1)
正解です。ウェーバー論じた社会的行為は「目的合理的行為」「価値合理的行為」「伝統的行為」「感情的行為」り4つです。そのうちの「目的合理的行為」「価値合理的行為」が近代的なものです。
■ヴェーバー(Weber,M.)は,階級を社会的な名誉や威信に基づくものと定義したので,身分と同様,生得的であると考えた。
生得的とは,「生まれ持って」といった意味合いです。この選択肢はものすごく難しいですが,文章を読むと,引っかかるものがあります。それは「身分と同様」という部分です。
この選択肢が正解なら
階級を社会的な名誉や威信に基づくものと定義したので,生得的であると考えた。
でも良いはずです。
そこにわざわざ「身分と同様」という言葉を挿入してきたのは,階級は生得的ではないと思えます。
人は嘘をつくとき饒舌になる
身分と同様,という言葉が付け加えられていなければ,まったく見当がつかないものになるでしょう。
答えは間違いです。
生得的なのは身分です。階級は経済的によって生み出されます。
■ヴェーバー(Weber,M.)は,近代の組織活動において計算に基づく予測可能性が低下すると考えた。
ウェーバーが提唱したものは,近代化は合理的なものであるということです。合理的であれば,予測可能性が高まるとウェーバーは言いそうだと思いませんか。もちろん間違いです。
もともとの文章は,
ヴェーバー(Weber,M.)は,近代の組織活動において計算に基づく予測可能性が高まると考えた。
であり,それを間違い選択肢にするために,高まるを低下するに置き換えたと考えられます。
「低下する」に違和感があれば,okです(×をつけられる)。
次回は,デュルケムです。