今日から「現代社会と福祉」に移ります。
この科目は,10問出題されます。
7問出題の科目と10問出題の科目の出題方法にはそれぞれ特徴があります。
7問出題の科目は,ほとんどの問題が出題基準に沿って出題されています。
つまり,問題を出題基準に合わせて分類すると,明確に分類できる問題がほとんどです。
10問出題の科目は,出題基準のどこの項目に当たるのか明確ではない問題が含まれます。
ここが10問出題の科目の難しさにつながります。
10問出題の科目は,
現代社会と福祉
地域福祉の理論と方法
高齢者に対する支援と介護保険制度
の3科目です。
この3科目のうち,最も難しい科目は現代社会と福祉だと言えます。
しかし,攻略法はあります。
それが今日のテーマ
福祉をマクロの視点でとらえる
です。
ミクロの視点では見えてこないものが,マクロの視点でとらえるとつながったり,意味が理解しやすくなったりするのです。
今日の問題を例に説明していきたいと思います。
第27回・問題23 社会的リスクに関する次の記述のうち,「ベヴァリッジ報告」で想定されていなかったものを1つ選びなさい。
1 疾病により労働者の収入が途絶えるおそれ
2 勤務先の倒産や解雇により生計の維持が困難になるおそれ
3 老齢による退職のために,稼働収入が途絶えるおそれ
4 保育や介護の社会化が不充分なため,仕事と家庭の両立が困難になるおそれ
5 稼得者の退職や死亡により被扶養者の生活が困窮するおそれ
この問題を見たとき,多くの人は言いました。
今年の国試は出題傾向が変わったね
確かに正しいもの,適切なもの,を選ぶのではなく「想定されていなかったもの」を選ぶというスタイルの問題は珍しいものかもしれません。
しかし,スタイルの違う問題は,毎年必ず出題されています。
今,この問題を見ても新奇なものとは思わないでしょう。
べヴァリッジ報告は,「ゆりかごから墓場まで」で知られるイギリスの福祉国家構想となるものです。
この問題を見たとき,「5つの巨人」をしっかり覚えていなかったことを後悔した人は多かったのではないでしょうか。
この科目は「現代社会と福祉」です。旧カリ時代は「社会福祉原論」という科目でした。
その時と今では何が変わっているかと言えば,福祉政策が基本テーマになっているということです。
福祉政策は,福祉ニードを充足するためのものです。
その時にマクロの視点が必要となります。
その視点で今日の問題を考えると,べヴァリッジ報告として出題していますが,ポイントは現代の福祉ニーズについての出題であることが分かると思います。
そこに着目すると
4 保育や介護の社会化が不充分なため,仕事と家庭の両立が困難になるおそれ
が正解だと分かります。
国試問題を読み解くときには,想像力が必要です。
想像力は創造力につながります。
この科目の中心テーマは,「福祉政策」です。
福祉政策は,最初はゼロから作り上げてきたものです。
そこには,人の知恵があります。
ゼロベースから作り上げることはとても難しいものです。
今は,それらを下敷きにして作ることができます。
過去を学ぶことは,今を考えることです。
最後に,今日の問題を解説しておきます。
べヴァリッジが示した5つの巨人
窮乏
疾病
無知
不潔
怠惰
です。窮乏を中心としてそれぞれ関連していると考えました。
これを今日の問題に当てはめてみると
疾病により労働者の収入が途絶えるおそれ → 窮乏,疾病
勤務先の倒産や解雇により生計の維持が困難になるおそれ → 窮乏
老齢による退職のために,稼働収入が途絶えるおそれ → 窮乏
稼得者の退職や死亡により被扶養者の生活が困窮するおそれ → 窮乏
となります。
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