今日から4月です。
過去に合格された方は,10月から勉強を始めて合格した,という方もいらっしゃいます。
しかし,それは完全に過去の話です。今の国試は,短期決戦の勉強法ではほとんど対応不可能です。
第30回国試の合格率は久々に30%を超えましたが,今まで最も合格率が高かったのは第15回国試の31.6%です。
つまり少なくとも7割は不合格になるという事実です。
まずは,ここを押さえましょう。
ツァイガルニク効果
合格した人は,「そんなに勉強しなくても合格できた」という人もいるでしょう。
何度もチャレンジして合格できず,受験をあきらめた人は,「あんなに難しい試験はない」という人もいるでしょう。
これらは,心理学のツァイガルニク効果というもので説明することができると言われています。
ツァイガルニク効果とは,人は達成したことよりも途中であきらめたことの方をよく覚えている,といったものです。
合格した人も勉強は辛かったはずです。しかし時間の経過とともにその辛さは忘れていきます。
合格できず受験をあきらめた人は,時間が経過しても辛かった記憶が強烈に残ります。
そのため,先述の国試に対する感想は,どちらも真実です。
合格した人の話
合格した人の話は,2種類あります。
①本当に3か月で合格した。
②本格的な勉強は3か月だが,その前の下地があった。
しかし先述のように,現在は短期決戦では合格できる試験の内容ではなくなっています。
過去に出題されたものをベースに出題する限り,どんどんその出題される内容が複雑で,範囲が広くなっていきます。
過去問が少ない時は,繰り返し率が高くなります。
過去問が多くなると,繰り返し率が低くなります。
当然のことです。
4月は新たなスタートの季節です!
しかし,今はまだ勉強を始める人は少ない時期です。
なぜなら各社の参考書がまだ発売されていないからです。
それを待って勉強しても合格することができるかもしれません。
できたら「今」「今」「今」,「今」から勉強を始めてほしいです。
さて,いよいよ「心理療法」の恐ろしい真実を解き明かします。
第27回・問題14 心理療法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 自律訓練法では,身体感覚への特有の能動的注意集中を通して,心身の変化や外界の諸現象に対する受動的態度を作っていく。
2 森田療法では,不安があることを自然な事実としてあるがままに受け止め,心身の不調や症状が回復したのちに目の前にある作業に取り組む。
3 認知的再体制化を中心とした認知行動療法では,クライエントの自己への評価の低さや自己非難に伴う否定的な感情に注目し,その認知的枠組みや信念を修正する。
4 箱庭療法は,言葉では言い尽くせないような象徴的表現が可能であり,強い認知体験を伴って適度の意識化を促し,治療を進展させることができる。
5 来談者中心療法では,クライエントの建設的なパーソナリティ変化が起こる,セラピスト側の条件として分析的眼差しが挙げられる。
この問題を見ると,ものすごく難しいと感じる人が多いと思います。
国試は,いつもそうなのです。
解説を読めば「ああ,そうなんだ」と分かります。
国試は,その場で答えを出さなければなりません。
自分でどのようなものなのかを考えて答えを出します。
「分からない,難しい」と思ったら,その時点で最高のパフォーマンスを発揮することは難しいでしょう。
4回前の国試から一番多いという今までの傾向から,おそらく第31回国試は,第27回国試をベースに作られる問題が多いはずです。
内容だけではなく,国試問題の作り方もこのようなスタイルに戻るかもしれません。
この問題を見て「分からない,難しい」と思った,その気持ちをずっと忘れないでほしいと思います。
頻出のものでも決して簡単ではないことを覚えていてほしいのです。
1 自律訓練法では,身体感覚への特有の能動的注意集中を通して,心身の変化や外界の諸現象に対する受動的態度を作っていく。
自律訓練法は,この時初めて出題されたものです。多くの受験生は「見たことがない。分からない」と思うことでしょう。
試験委員はそのようにして受験生の戦意を喪失させます。分からないときは,焦らず▲を付けます。
結果的にこれは間違いです。他の選択肢を検討した結果,×がつくことになります。
自立訓練法は一種の自己暗示を行うことによるリラクセーション法です。最初は「気持ちがとても落ち着いている」と自己暗示をかけます。この暗示は「気持ちを落ち着かせる」といった能動的なものではなく,「気持ちがとても落ち着いている」といった受動的なものです。
つまり問題文の中の「能動的注意集中」は,「受動的注意集中」が正しいことになります。そのため間違いです。
第28回には続けて自立訓練法が出題されています。
自律訓練法は,筋肉を漸進的に弛緩させる技法である。
これも間違いです。筋肉を弛緩させるものではなく,受動的注意集中によってリラクセーションしていくのが自律訓練法です。
自律訓練法は,受動的注意集中。ここがポイントです。
2 森田療法では,不安があることを自然な事実としてあるがままに受け止め,心身の不調や症状が回復したのちに目の前にある作業に取り組む。
森田療法は,不安があることを自然な事実としてあるがままに受け止めます。そして,不安があっても目の前にある作業に取り組みます。そのことによって不安があっても作業できたという体験ができます。よって間違いです。
心身の不調や症状が回復したのちに作業ができるのは当たり前のことです。
これでは,「不安をなくそう」という気持ちが強くなってしまいます。「不安はあってもいいのだ」と思えることが重要なのです。
森田療法のポイントは「あるがままに」です。「あるがままに」とはどのようなものなのかをしっかり理解しておきましょう。「不安はあってもいいのだ」と思えること。これが「あるがままに」の意味です。
3 認知的再体制化を中心とした認知行動療法では,クライエントの自己への評価の低さや自己非難に伴う否定的な感情に注目し,その認知的枠組みや信念を修正する。
第30回国試問題を見たことがある人は「あれっ? こんなところにヒントがあったのか」と思うのではないでしょうか。
まずはこれが正解であることを押さえましょう。
そのうえで第30回国試の問題を見てみましょう。
認知行動療法では,クライエントの発言を修正せず全面的に受容することが,クライエントの行動変容を引き起こすと考える。
「修正せず」となっているので間違いですね。
認知行動療法のポイントは,クライエントの不適切な思考パターンを修正することです。
表現は悪いですが,
「試験に合格できないのは,自分がダメ人間だから」
「試験に失敗するのは,頭が悪いから」
と思うのは不適切な思考パターンです。
そうではなくて,
合格できなかったのは不適切な勉強法である。
適切な勉強法ができれば合格できる。
チームfukufuku21の提案する勉強法を実践すれば合格できる。
このように思えるように,修正していくのが認知行動療法ということになります。
クライエントの不適切な思考パターンが修正されることで,行動変容が起きるのです。
4 箱庭療法は,言葉では言い尽くせないような象徴的表現が可能であり,強い認知体験を伴って適度の意識化を促し,治療を進展させることができる。
箱庭療法は,ユング心理学で用いられるもので,無意識の領域にあるものが箱庭という限定された世界で表現されると考えます。
日本のユング心理学研究の第一人者で,文化庁長官も務められた故・河合隼雄(かわい・はやお)先生が日本に紹介しました。
選択肢の中にある「強い認知体験」とは,「はっきりとした気づき」といった意味合いです。箱庭療法は,クライエントが作った箱庭をセラピストがその意味を解釈していくものです。そこにはクライエントの強い認知体験は伴いません。よって間違いです。
河合先生は,外国人に「これは何ですか」と質問すると「母です」などの明確な答えが返ってくることが多いのに対して,日本人は同様に質問しても同様の答えが返ってくることは少ない,と述べています。外国のセラピストよりも日本のセラピストの方が解釈が難しいということなのでしょう。
クライエントが「はっきりした気づき」ができるためには,他の心理テストや心理療法を組み合わせることが必要です。
「はっきりした気づき」を持つのだったら,箱庭療法よりも,おそらく「無意識の領域」を開いて治療していく精神分析療法の方が適切だと考えられます。
5 来談者中心療法では,クライエントの建設的なパーソナリティ変化が起こる,セラピスト側の条件として分析的眼差しが挙げられる。
近年,来談者中心療法に関する出題が続いています。
来談者中心療法におけるセラピストの基本姿勢は「共感的理解」「無条件的肯定的関心」の2つです。
来談者中心療法のポイントは,この2つをしっかり押さえることです。
セラピストがこの基本姿勢を貫き通すことで,クライエントが「この人には,何を語ってもいいのだ」と思えるようになっていきます。分析的眼差しでクライエントに接してしまうと,「この人は自分を批判的に見ている」など,心を開くことはしなくなってしまいます。よって間違いです。
〈今日の一言〉
心理療法の出題率は100%!
しかし,覚えるポイントを明確にせず,丸暗記するような勉強法では,得点するのは難しいです。
秋ごろにはたくさんの模擬試験が実施されます。
それまでには,ある程度の知識をつけておいて,自分の覚え方が間違っていないのか,模擬試験で試してみることが大切です。
そこでもし期待する結果が出なかった時には,覚え方を修正していきます。
4月はスタートの季節です。
仕事をしている人は,新年度で忙しい時期でしょう。
しかし,そんな中でも少しでもできたとしたら,自分に対する自信になるでしょう。
認知行動療法的にとらえると・・・
「忙しくて勉強できなかった」 → 「忙しくても勉強できる」
という行動変容につながります。
森田療法的にとらえると・・・
「忙しい」 → 「忙しいことをあるがままに受け止めて,その中でも勉強する」 → 「忙しくても勉強できる」
というように,「忙しくて勉強できないことが不安だ」という気持ちは軽減することにつながります。
精神分析療法的にとらえると・・・
「忙しくて勉強できない」 → 「そう思うことで,失敗した時,心を平穏に保つことができる」 → 「昔の失敗した時のことを思い出す」(この時に自由連想法という手法を用いる) → 「本当はどうしたかったのかを考える」(治療)
というように,行動を変えないことの要因に気づき,治療することで,次の行動を生み出します。
さあ,今がスタートです!!
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