今回は,身体障害者福祉法を取り上げます。
身体障害者福祉法は,1949年(昭和24年)に作られた法律です。
成立当時の法の目的と現在の目的を比較してみます。
1949年当時 |
現在 |
身体障害者の更生を援助し,その更生のために必要な保護を行い,もって身体障害者の福祉の増進を図ること。 |
身体障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため,身体障害者を援助し,及び必要に応じて保護し,もつて身体障害者の福祉の増進を図ること。 |
成立当時は,「更生」という用語が使われていることが特徴です。
更生とは,リハビリテーションを意味し,この法律は,身体障害者の職業リハビリテーションを目的にしていることがわかります。
現在は,「自立」「社会経済活動への参加」を促進と変わっています。
「自立」とは,単に経済的自立を意味するのではなく,社会的自立や日常生活自立も含みます。
「社会経済活動への参加」は,もともとの「更生」を意味していると考えられます。
1949年当時は,戦争で傷ついた人が多かったために,「更生」を強調したと考えられます。
身体障害者の努力義務についても比較します。
1949年当時 |
現在 |
(更生への努力) すべて身体障害者は,自ら進んでその障害を克服し,すみやかに社会経済活動に参与することができるように努めなければならない。 |
(自立への努力) すべて身体障害者は,自ら進んでその障害を克服し,その有する能力を活用することにより,社会経済活動に参加することができるように努めなければならない。 |
「更生への努力」が「自立への努力」に変更されています。
「すみやかに」が「その有する能力を活用することにより」に変更されています。
かなり,法律の性格が変わっていることが理解できるのではないでしょうか。
それでは,今日の問題です。
第35回・問題61
身体障害者福祉法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 身体障害者福祉法の目的は,「身体障害者の更生を援助し,その更生のために必要な保護を行い,もって身体障害者の福祉の増進を図ること」と規定されている。
2 身体障害者の定義は,身体障害者手帳の交付を受けたかどうかにかかわらず,別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者をいうと規定されている。
3 身体障害者手帳に記載される身体障害の級別は,障害等級1級から3級までである。
4 都道府県は,身体障害者更生相談所を設置しなければならない。
5 市町村は,その設置する福祉事務所に,身体障害者福祉司を置かなければならない。
この問題で出題されている内容は,とても重要です。
きちっと覚えたいです。
それでは,解説です。
1 身体障害者福祉法の目的は,「身体障害者の更生を援助し,その更生のために必要な保護を行い,もって身体障害者の福祉の増進を図ること」と規定されている。
この目的は,当初のものです。
〈現在の法の目的〉
2 身体障害者の定義は,身体障害者手帳の交付を受けたかどうかにかかわらず,別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者をいうと規定されている。
〈身体障害者の定義〉
3障害のうち,障害者手帳の交付を受けることで障害者と定義されるのは,身体障害者のみです。
知的障害者は,法で定義さえされていません。
3 身体障害者手帳に記載される身体障害の級別は,障害等級1級から3級までである。
別表には,1~7級までありますが,身体障害者手帳に記載されるのは。,1~6級までです。
1級から3級まであるのは,精神障害者保健福祉手帳です。
4 都道府県は,身体障害者更生相談所を設置しなければならない。
これが正解です。
身体障害者更生相談所は,都道府県が設置します。
〈身体障害者更生相談所の業務〉
・身体障害者の医学的・心理学的及び職能的判定
・補装具の処方及び適合判定
身体障害者の医学的・心理学的及び職能的判定とは,身体障害者手帳の交付にかかわる判定のことです。
この判定によって,都道府県知事が身体障害者手帳を交付します。
身体障害者更生相談所は,都道府県が設置するので,住民にとって物理的距離が遠くなります。
そのため,法には,前記の業務を必要に応じて巡回して行うことができると規定しています。
この規定があるため,身体身体障害者は,自分から出向くことがなくても,身近なところまで来てくれて判定を受けることができます。
5 市町村は,その設置する福祉事務所に,身体障害者福祉司を置かなければならない。
身体障害者福祉司を配置することが義務づけられているのは,身体障害者更生相談所です。
市町村福祉事務所への配置は,努力義務です。