法制度は,その適用範囲を明確に定めるところに特徴があります。
そうでなければ法を適切に運用することができないからです。
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスには,大きく分けると介護給付と訓練等給付があります。
介護給付の利用を希望する場合は,障害支援区分認定を受けなければなりません。
訓練等給付の利用を希望する場合は,障害支援区分認定は基本的に受けなくても利用できます。
「基本的に」というのは,訓練等給付の一つである共同生活援助(グループホーム)で身体介護を必要とする場合は,障害支援区分認定が必要だからです。
これはおそらく障害者自立支援法の時に存在していた介護給付の一つである共同生活介護(ケアホーム)を障害者総合支援法で共同生活援助に一元化した時の名残ではないかと思います。
それでは今日の問題です。
第35回・問題57
「障害者総合支援法」における介護給付費等の支給決定に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 市町村は,介護給付費等の支給決定に際して実施する調査を,指定一般相談支援事業者等に委託することができる。
2 障害児に係る介護給付費等の支給決定においては,障害支援区分の認定を必要とする。
3 就労定着支援に係る介護給付費等の支給決定においては,障害支援区分の認定を必要とする。
4 市町村は,介護給付費等の支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者に対し,支給決定後に,サービス等利用計画案の提出を求める。
5 障害支援区分は,障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すものである。
注意が必要なのは,正解を2つ選ぶことを忘れないことです。
そんなミスで,1点足りなくて不合格になるということもあります。
思うよりも多いミスです。
それでは解説です。
1 市町村は,介護給付費等の支給決定に際して実施する調査を,指定一般相談支援事業者等に委託することができる。
これが1つめの正解です。
2 障害児に係る介護給付費等の支給決定においては,障害支援区分の認定を必要とする。
障害児の場合は,障害支援区分の認定は行いません。
障害者総合支援法は,18歳以上の障害者を対象とした法制度なので,制度の組み立てが児童を対象にするには向いていません。
そのため,児童の専門機関である児童相談所が対応しています。
3 就労定着支援に係る介護給付費等の支給決定においては,障害支援区分の認定を必要とする。
就労定着支援は訓練等給付なので,障害支援区分の認定は必要としません。
障害支援区分の認定が必要なのは,介護給付を利用する場合です。
4 市町村は,介護給付費等の支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者に対し,支給決定後に,サービス等利用計画案の提出を求める。
サービス等利用計画案を提出するのは,支給決定前です。
支給決定後に提出するのは,サービス等利用計画です。
5 障害支援区分は,障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すものである。
これが2つめの正解です。
障害支援区分は,障害者自立支援法ができた時に,障害程度区分として誕生したものです。
その後,障害者総合支援法になったときに,障害支援区分に変更されています。