国家試験では,参考書を完璧に覚えても,それだけでは対応できない問題があります。
それらは解けなくても,いわゆるテッパン問題(絶対に得点したい問題)が解ければ,十分にボーダーラインを越えられるように国試問題は設計されています。
しかし,このような問題は別な角度で見ると,知識がなくても,問題を解く勘があれば解けることがあるので,得点できるコツは押さえておいて損はありません。
先に申し上げておきますが,知識をつけていわゆるテッパン問題(絶対に得点したい問題)が解けてこそ問題を解く勘は生かされます。
その逆はあり得ませんのでご注意ください。
それでは,社会理論と社会システムの例を紹介します。
第24回・問題17 地域コミュニティに関する次の記述のうち,もっとも適切なものを一つ選びなさい。
1 大規模な災害が発生した直後では,非専門家の集まりである地域コミュニティによる身近な高齢者や障害者などの救援は困難であり,行政の専門防災組織の即座の救援活動が最も有効である。
2 日本のコミュニティ・スクールは,学校運営協議会制度によって保護者や地域住民などが学校の運営に参画し,画一的ではない特色ある学校づくりを目指すものなので,学校運営協議会が教職員の任命権も有している。
3 高度経済成長期に過疎過密問題が生じたので,国土の均衡ある発展を目標に1962年以来,数次にわたって市町村の都市計画マスタープランが策定されたが,過疎問題は解決せず,今日では農山村の地域コミュニティは存立の危機にある。
4 地方自治体が,地域コミュニティの住民,NPO,NGOや民間企業など,主要な利害関係者との協働によって利害調整と合意形成を図ろうとするあり方をコーポレート・ガバナンスと呼ぶ。
5 1980年代以降,日本の都市に新たに居住するようなニューカマーと呼ばれる外国人住民のなかで,民族や出身地域に基づいてエスニック・コミュニティを形成し,生活や仕事に必要な情報をお互いにやりとりする現象がみられる。
第24回国試の中でも最も難しかった問題の一つです。
本来は解けても解けなくても良い問題です。
解けても解けなくても良い問題とは,十分な知識量がある人でも解くための知識を持たない問題を言います。
テッパン問題とは,十分な知識がある人なら解ける問題を言います。
繰り返しになりますが,テッパン問題が解けないと国試では合格できません。
さて頭の体操も含めて,解説していきます。
1 大規模な災害が発生した直後では,非専門家の集まりである地域コミュニティによる身近な高齢者や障害者などの救援は困難であり,行政の専門防災組織の即座の救援活動が最も有効である。
<この選択肢の注意ポイント>
即座の救援活動が最も有効である。
「最も良い」「最も優れている」など,「最も」が入る選択肢は間違いになることが多い。
<第2のポイント>
非専門家の集まりである地域コミュニティによる身近な高齢者や障害者などの救援は困難であり
困難でありが決めつけている。言い切り表現に正解少なし。
2 日本のコミュニティ・スクールは,学校運営協議会制度によって保護者や地域住民などが学校の運営に参画し,画一的ではない特色ある学校づくりを目指すものなので,学校運営協議会が教職員の任命権も有している。
<この選択肢の注意ポイント>
学校運営協議会制度によって保護者や地域住民などが学校の運営に参画し,画一的ではない特色ある学校づくりを目指すものなので,
人が嘘をつくとき,饒舌になる。
この選択肢が正解だとすれば,
日本のコミュニティ・スクールは,学校運営協議会が教職員の任命権も有している。
で良いと考えられる。
3 高度経済成長期に過疎過密問題が生じたので,国土の均衡ある発展を目標に1962年以来,数次にわたって市町村の都市計画マスタープランが策定されたが,過疎問題は解決せず,今日では農山村の地域コミュニティは存立の危機にある。
<この選択肢の注意ポイント>
1962年以来,数次にわたって市町村の都市計画マスタープランが策定されたが
1962年は,まだ明治生まれが現役時代だった頃。大正元(1912)年生まれの人でさえ,まだ50歳。その時代に「マスタープラン」といったわけの分からない名称はつけるばすがない。
4 地方自治体が,地域コミュニティの住民,NPO,NGOや民間企業など,主要な利害関係者との協働によって利害調整と合意形成を図ろうとするあり方をコーポレート・ガバナンスと呼ぶ。
<この選択肢の注意ポイント>
コーポレート・ガバナンス
これだけは,参考書の種類によっては,記載されていたものがあるはずです。
ガバナンスは,統治を意味し,コーポレート・ガバナンスは,企業統治を意味します。
この場合の統治とは,組織運営が適正になるようにための組織風土などのことです。
不正などがあった場合は「ガバナンスが機能していない」といった表現をします。
5 1980年代以降,日本の都市に新たに居住するようなニューカマーと呼ばれる外国人住民のなかで,民族や出身地域に基づいてエスニック・コミュニティを形成し,生活や仕事に必要な情報をお互いにやりとりする現象がみられる。
<この選択肢の注意ポイント>
この選択肢には,際立ったものがないことがポイント
つまり,この選択肢を見て,いきなり○をつけられないことを意味します。
このような時は冷静に▲をつけます。
つまり,ほかの選択肢に仕掛けられたトラップに気づくことで消去して,答えをあぶり出すテクニックです。
〈今日の一言〉
今日の問題では,<この選択肢の注意ポイント>を紹介しました。
ガバナンス以外は,内容そのものが注意ポイントになっていないことに気がついた方もいるでしょう。
コミュニティ・スクールって何だろう,と思って,この選択肢に引っかかると,この問題は解けなくなります。
そこには,答えはありません。
なぜなら,この科目は「社会理論と社会システム」です。
コミュニティ・スクールが重要なら,「地域福祉の理論と方法」など,別の科目で出題されて良いはずです。
この問題で,将来の社会福祉士に知ってもらいたいのは,外国からきた人が形成するエスニック・コミュニティだったはずです。
その視点で,もう一度この問題を見直してみてください。
それ以外に答えはあり得ないことに気が付くことでしょう。
実は,簡単そうに書きましたが,このテクニックを使える人はそんなに多くはありません。
なぜなら,国試問題はいつも難しいからです。
しかし,たくさんの問題を解くことで,問題を解く勘は養うことができます。
この問題を解く勘は,必ず受験する者を助けてくれます。
たくさん問題を解く時間は,必ず作るようにしてください。
因みに今日の問題で,覚える価値のあるものは,ガバナンスのみです。
正解選択肢となったニューカマーでさえ,今後(遠い将来も含めて)出題されるかどうかは分かりません。一度出題すると参考書に掲載されるので,所期の目的は達成されるからです。
試験委員が何を意図して,この問題を作ったのかが考えながら問題を解くことができるようになると格段に得点力は見違えるように高まります。
目先の文章を読み解くことに必死になると大事なポイントを見失うことがあるので注意したいところです。
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