2018年4月22日日曜日

絶対に覚えておきたい社会的役割~③役割取得

前回まで,

①役割期待
②役割距離

を紹介してきました。

そのうちの②役割距離は,ちょっと難しい概念でしたが,理解できましたでしょうか。

役割距離とは,

人は役割期待に対して,ちょっと距離を置いた行動をとること。

理解しきれていない人は,もう一度前回を確認してください。

役割距離を理解しているかいないかによって得点力は大きく変わりますので,注意が必要です。

さて,今回は③役割取得です。

役割取得とは・・・

他者による役割期待を理解して,その役割の行動をすること。

参考書を見ると,他者の期待を内面化する,内部に取り込むといった表現がなされています。
しかし,難しい言い回しをそのまま覚えて,内容を理解していないのは,国試で得点する知識にはならないので注意が必要です。

これから追って説明する機会もあると思いますが,国試には,「社会理論と社会システム」のような理論系のものと,「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」のような法制度を覚える科目があります。

このうち,法制度を覚える科目は丸暗記が通用します。なぜなら国試で出題する時は,正しい法制度を間違った文章に直して出題するので正しい内容を押さえることが重要だからです。

しかし,とはいってもそこには覚え方のコツがあります。丸暗記が通用するとは言っても,そのコツを押さえなければ,あいまいな知識,またはど忘れすることにつながるので注意が必要です。

一方,理論系は,法制度のように定型文がありません。

毎回同じ表現で出題してくれれば丸暗記が通用しますが,同じようには出題されないことが理論系の特徴なので,内容をしっかり理解することが必要です。ちょっと手間がかかりますが,「急がば回れ」です。

人によっては,「自分の言葉で表現できるようにしましょう」と言いますが,その理由は頻出のものであっても同じようには出題されないからです。

この覚え方が必要なのは,理論系です。法制度には別の覚え方のコツがあります。それは法制度が出てきたら紹介します。

過去にさかのぼってもたくさん紹介してきましたので,待ちきれない方はそれを参考にしてください。


さて,話を戻します。

役割取得は,他者による役割期待を理解して,その役割の行動をすること。

まずは,このように覚えましょう。

それでは,役割取得に関する出題を確認します。

1.役割取得は,「ごっこ遊び」が重要な契機となる。

2.人間の自我は,他者からの期待を認識して自らのうちに取り入れる「役割取得」を通じて形成され,発展していく。

3.個人が,他者や集団の観点から自身を見て自らの行為のあり方を形成していく過程を,「役割取得」という。

これらは,すべて正解です。

役割距離がすべて間違い選択肢として出題されていることと対照的です。

このことによって,「役割取得」をより覚えてほしいという国試の意図が見えます。

「ごっこ遊び」は,役割取得に重要なものだとされています。

ごっこ遊びは,いろいろな役割を演じなければなりません。

つまり電車ごっこなら,駅員,車掌,運転士,お客,などの役があります。
それぞれに役割期待があるわけです。

さて,ここから少し深めます。

役割取得は,他者による役割期待を理解して,その役割の行動をすること
という理解で良いです。

しかし,役割取得は重要なので,もう一歩深めた出題がなされます。

それは,役割取得を通して,アイデンティティを確立していく過程についての言及です。

どのように役割取得されて,発展していくかについて,深めてみましょう。

国家試験に出題されているのは以下の3つです。

①鏡に映った自我
②一般化された他者
②主我(I)と客我(me)との対話

①鏡に映った自我
鏡とは,他者のことです。他者が自分をどのように見ているかを知ることで自分を知るという意味です。
クーリーという人が考えました。

②一般化された他者
特定の人が抱く役割期待は,特定の人が直接言ってくれたり,態度で理解できます。一般化された他者とは,その社会の一般的な他者です。特定の人ではありません。この一般化された他者の役割期待を理解するのが社会人にとっては重要です。

③主我(I)と客我(me)との対話
主我(I)はいわゆる「わたし」です。客我(me)は,一般化された他者の役割期待に対して役割取得した存在です。

このIとmeが対話すること,つまり自問自答することでアイデンティティが確立します。②と③はミードという人が考えました。

さて,それでは,これらに関する出題をみましょう。

1.鏡に映った自己とは,人間は他者を鏡として自己を認識することである。

2.ミード(Mead,G.)は,自我のなかでIとmeが行う対話に着目し,その過程で社会性を有する動的な自我が成立してくるとして,鏡に映った自我という考え方を論じた。

1は正解です。

2は,前半は正解ですが,鏡に映った自我はクーリーが提唱したものです。よって間違いです。

次回は,④役割葛藤です。

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