今回は,積極的自由と消極的自由を学びたいと思います。
積極的自由とは,自分の意思で行動できる自由です。
消極的自由とは,他者から干渉されない自由です。
政治哲学に重ねると以下のようになります。
積極的自由 → 自由主義
消極的自由 → 自由至上主義
それでは今日の問題です。
第35回・問題23
福祉に関わる思想や運動についての次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 バーリン(Berlin,I.)のいう積極的自由とは,自らの行為を妨げる干渉などから解放されることで実現する自由を意味する。
2 ポジティブ・ウェルフェアは,人々の福祉を増進するために,女性参政権の実現を中心的な要求として掲げる思想である。
3 1960年代のアメリカにおける福祉権運動の主たる担い手は,就労支援プログラムの拡充を求める失業中の白人男性たちであった。
4 フェビアン社会主義は,ウェッブ夫妻(Webb,S.&B.)などのフェビアン協会への参加者が唱えた思想であり,イギリス福祉国家の形成に影響を与えた。
5 コミュニタリアニズムは,家族や地域共同体の衰退を踏まえ,これらの機能を市場と福祉国家とによって積極的に代替するべきだとする思想である。
この問題を見た受験生は,びっくりしたのではないかと思います。
こういった問題は,必ずしも解けなくても良いです。
しかし,今は覚えておきたいです。
それでは,解説です。
1 バーリン(Berlin,I.)のいう積極的自由とは,自らの行為を妨げる干渉などから解放されることで実現する自由を意味する。
自らの行為を妨げる干渉などから解放されることで実現する自由は,消極的自由です。
2 ポジティブ・ウェルフェアは,人々の福祉を増進するために,女性参政権の実現を中心的な要求として掲げる思想である。
ポジティブ・ウェルフェアとは,「福祉から就労へ」を意味する考え方です。
具体的には,就労するための訓練などを強化する施策です。
3 1960年代のアメリカにおける福祉権運動の主たる担い手は,就労支援プログラムの拡充を求める失業中の白人男性たちであった。
1960年代の福祉権運動の中心は,黒人でした。
4 フェビアン社会主義は,ウェッブ夫妻(Webb,S.&B.)などのフェビアン協会への参加者が唱えた思想であり,イギリス福祉国家の形成に影響を与えた。
これが正解です。
ウェッブ夫妻は,ナショナルミニマム(国家による最低限度の生活保障)を提唱した人物として知られます。
フェビアン社会主義とは,イギリスにおける社会主義思想です。
ウェッブ夫妻の夫であるシドニー・ウェッブは,フェビアン協会の創立者の一人です。フェビアン協会は,その後の労働党の母体となりました。
5 コミュニタリアニズムは,家族や地域共同体の衰退を踏まえ,これらの機能を市場と福祉国家とによって積極的に代替するべきだとする思想である。
コミュニタリアニズムは,家族や地域共同体を重視する政治哲学です。