国立社会保障・人口問題研究所が公表している「日本の将来推計人口」は,国勢調査のデータをもとに推計したもので,5年ごとに公表しています。
現時点(令和7年5月)の最新データは,令和2年(2020年)の国勢調査のデータをもとにした令和5年(2023年)推計です。
国家試験では,50年後のデータが出題されます。
2070年ということになります。
中位推計では,2070年の総人口は,9,159万人になると予想されています。
平成29年推計(2065年時点)よりもわずかながら人口減少が緩やかになっていますが,これは外国人の増加を期待しているためです。
それでは今日の問題です。
第35回・問題29
日本における人口の動向に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 第二次世界大戦後,1940年代後半,1970年代前半,2000年代後半の3回のベビーブームを経験した。
2 15~64歳の生産年齢人口は,高度経済成長期から1990年代後半まで減少を続け,以後は横ばいで推移している。
3 「『日本の将来推計人口』における中位推計」では,65歳以上の老年人口は2025年頃に最も多くなり,以後は緩やかに減少すると予想されている。
4 「2021年の人口推計」において,前年に比べて日本人人口が減少した一方,外国人人口が増加したため,総人口は増加した。
5 1970年代後半以降,合計特殊出生率は人口置換水準を下回っている。
(注)1 「『日本の将来推計人口』における中位推計」とは,国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」における,出生中位(死亡中位)の推計値を指す。
2 「2021年の人口推計」とは,総務省「人口推計2021年(令和3年)10月1日現在」における推計値を指す。
この問題は,一つ前のデータを使って出題しています。
出題するときは,令和5年推計となります。
しかし,この問題自体は,最新のデータを知らずとも正解できる可能性はあります。
正解となったのは,選択肢5だからです。
5 1970年代後半以降,合計特殊出生率は人口置換水準を下回っている。
人口置換水準とは,親世代と子世代の人数が等しくなる出生率の水準のことです。
しかし,これでは意味がわかりにくいので,人口を維持するために必要な合計特殊出生率だと考えると良いです。
2人の親から2人の子が生まれるだけでは,人口は維持できません。
一般的には,2.1程度が必要だとされています。
日本の場合,乳児死亡率が低いため,2.1よりも少し低くても人口が維持できます。それでも,2.07前後は必要です。
日本が人口置換水準を下回ったのは,1974年(昭和49)年のことです。
段階の世代(第一次ベビーブーム)が子どもを多く生んだ時代(第二次ベビーブーム)の直後,人口置換率を下回ったことになります。
それでは,これ以外の解説です。
ただし,令和5年推計のデータで解説します。
1 第二次世界大戦後,1940年代後半,1970年代前半,2000年代後半の3回のベビーブームを経験した。
第二次ベビーブームの世代が社会に出た時代は,バブル景気崩壊のあとの不況でした。
そのため,企業は新卒採用を控えたため,正規採用されるのがとても困難でした。
いわゆる「就職氷河期」です。
子どもを産み育てるには,安定した収入が必要です。非正規雇用での収入は安定しないため,第三次ヘビーブームは起きずに終わりました。
歴史に「もし」はありませんが,もしバブル崩壊がなければ,現在の少子化傾向はもう少し違っていたことでしょう。
2 15~64歳の生産年齢人口は,高度経済成長期から1990年代後半まで減少を続け,以後は横ばいで推移している。
子が減り続けているため,生産年齢人口も減少を続けています。
3 「『日本の将来推計人口』における中位推計」では,65歳以上の老年人口は2025年頃に最も多くなり,以後は緩やかに減少すると予想されている。
令和5年推計によると,老年人口が最も多くなるのは,2043年頃だと予想されています。
4 「2021年の人口推計」において,前年に比べて日本人人口が減少した一方,外国人人口が増加したため,総人口は増加した。
外国人人口は増加していますが,その分よりも日本人人口が減少しているため,総人口は減少しています。
総人口がピークだったのは,2008年(平成20年)でした。2010年に一度だけ前年を上回りましたが,その年以外は,すべて前年を下回り続けています。