児童福祉法は,児童福祉の理念と児童福祉サービスを規定する法律です。
障害者福祉で言えば,「障害者基本法」と「障害者総合支援法」を合わせたような位置づけだと言えるでしょう。
児童福祉の理念については,総則として以下のように規定されています。
第一条 |
全て児童は,児童の権利に関する条約の精神にのっとり,適切に養育されること,その生活を保障されること,愛され,保護されること,その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。 |
第二条 |
全て国民は,児童が良好な環境において生まれ,かつ,社会のあらゆる分野において,児童の年齢及び発達の程度に応じて,その意見が尊重され,その最善の利益が優先して考慮され,心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。 |
2 |
児童の保護者は,児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負う。 |
3 |
国及び地方公共団体は,児童の保護者とともに,児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。 |
第三条 |
前二条に規定するところは,児童の福祉を保障するための原理であり,この原理は,すべて児童に関する法令の施行にあたって,常に尊重されなければならない。 |
第一条と第二条第二項は,2017(平成29)年の改正で加わったものです。
「児童の権利に関する条約の精神にのつとり」というのが新鮮だと思いませんか?
障害者福祉の理念である障害者基本法では,「第一条に規定する社会の実現は、そのための施策が国際社会における取組と密接な関係を有していることに鑑み、国際的協調の下に図られなければならない。」と述べられているのにとどまります。
児童の権利に関する条約は,
子どもは権利をもった主体であるという位置づけから,意見表明権や結社の自由など,能動的権利を保障したことが特徴です。
これが児童福祉法の根底にも流れているということです。
それでは今日の問題です。
第29回・問題139 次の記述のうち,児童福祉法に規定されていることとして,正しいものを1つ選びなさい。
1 児童の福祉を保障するための原理は,すべて児童に関する法令の施行にあたって,常に尊重されなければならない。
2 国は,児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負う。
3 児童が就学年齢に達した後に,その自立が図られることその他の福祉を保障される権利を得る。
4 児童憲章を児童の福祉を保障するための原理としている。
5 全て国民は,児童の保護者を支援しなければならないとしている。
知識なしで,消去できそうなのは,選択肢3と5くらいでしょうか。
この出題があるまで,法の目的や理念などはあまり重視していませんでした。
しかし,考えてみると,児童福祉法は,児童福祉の理念法を兼ねているので,実はこの部分は,ほかの法制度よりも重みがあります。
それでは,解説です。
1 児童の福祉を保障するための原理は,すべて児童に関する法令の施行にあたって,常に尊重されなければならない。
これが正解です。
2 国は,児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負う。
第一義的責任を負うのは,児童の保護者です。
3 児童が就学年齢に達した後に,その自立が図られることその他の福祉を保障される権利を得る。
自立が図られることその他の福祉を保障される権利は,生まれてすぐあります。
4 児童憲章を児童の福祉を保障するための原理としている。
児童の福祉を保障するための原理は,児童福祉法第二条です。
5 全て国民は,児童の保護者を支援しなければならないとしている。
国民の責務は以下のとおりです。
児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。
<今日の一言>
本文でも述べたように,児童福祉は,児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)の精神にのっとって権利を有します。
そのために,児童の権利に関する条約は,国試での出題頻度が高いのでしょう。合わせて押さえておきたいです。
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