今日の高齢者の施策の中心は,2000年にできた介護保険制度です。
1962年の社会保障制度審議会勧告では,
社会保険制度は,一般所得者層に対する施策。
社会福祉制度は,低所得者層に対する施策。
生活保護制度は,生活困窮者に対する施策。
というように整理しています。
1963年にできた老人福祉法の前は,生活保護の対象として,現在の養護老人ホームが養老施設として存在していました。
つまり,高齢者施策は,生活困窮者 → 低所得者層 → 一般所得者層
と発展してきたことがわかるでしょう。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題127 老人福祉法の展開に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 老人福祉法制定時(1963年(昭和38年))には,特別養護老人ホームは経済的理由により居宅において養護を受けることが困難な老人を収容するものとされていた。
2 65歳以上の者に対する健康診査事業は,老人医療費支給制度の導入時(1972年(昭和47年))に法定化された。
3 高齢者保健福祉推進十か年戦略(1989年(平成元年))を円滑に実施するため,老人福祉計画の法定化を含む老人福祉法の改正(1990年(平成2年))が行われた。
4 老人家庭奉仕員派遺制度は,老人福祉法改正時(1990年(平成2年))に,デイサービスやショートステイと共に法定化された。
5 介護保険法の全面施行(2000年(平成12年))に合わせて,老人福祉施設等の入所事務が都道府県から町村に権限移譲された。
歴史が苦手な人にとっては,いやになってしまう問題かもしれません。
しかし,過去があって現在があります。
過去を学ぶことは,専門職として欠かすことができません。
グリーンウッドが「ソーシャルワークは専門職である」と述べた理由の一つに「専門職的福祉文化(サブカルチャー)があること」があります。
サブカルチャーは,本筋ではないものです。
相談援助を業とするだけなら,歴史を学ぶことは必要としないでしょう。
専門職であるためにもサブカルチャーとしての歴史を学ぶことは欠かせないように思います。
皆さんはどう思いますか?
それでは解説です。
1 老人福祉法制定時(1963年(昭和38年))には,特別養護老人ホームは経済的理由により居宅において養護を受けることが困難な老人を収容するものとされていた。
経済的理由が入所要件なのは,養護老人ホームです。
養護老人ホームは,救護施設で「養老院」,生活保護法で「養老施設」として規定されていました。それを老人福祉法で養護老人ホームと規定し直したものです。
そのため,経済的理由が入所要件となっているのです。
2 65歳以上の者に対する健康診査事業は,老人医療費支給制度の導入時(1972年(昭和47年))に法定化された。
65歳以上の者に対する健康診査事業が始まったのは,1963年の法制定時です。
3 高齢者保健福祉推進十か年戦略(1989年(平成元年))を円滑に実施するため,老人福祉計画の法定化を含む老人福祉法の改正(1990年(平成2年))が行われた。
これが正解です。
4 老人家庭奉仕員派遺制度は,老人福祉法改正時(1990年(平成2年))に,デイサービスやショートステイと共に法定化された。
老人家庭奉仕員派遺制度は,現在のホームヘルプサービスです。
1950年代後半から先進的に実施されていた制度を法制定の時に法制化しました。
5 介護保険法の全面施行(2000年(平成12年))に合わせて,老人福祉施設等の入所事務が都道府県から町村に権限移譲された。
老人福祉施設等の入所事務が都道府県から町村に権限移譲されたのは,1990年の福祉関係八法改正の時です。
福祉関係八法改正は,とても重要なので,確実に押さえておきたいです。