2020年10月31日土曜日

健康増進法

健康増進法は,国民の健康づくり・疾病予防を推進するために2002(平成14)年に成立したものです。


近年では,2018(平成30)年に,「望まない受動喫煙をなくすこと」などを趣旨として改正されています。


健康増進法で規定されている重要ポイント


・健康診査の実施

・保健指導の実施

・受動喫煙防止


また,同法に基づいて,40歳,50歳,60歳,70歳の男女に歯周疾患健診が実施されています。


それでは今日の問題です。


第28回・問題4 日本における健康施策に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 「健康日本21」(第二次)には,アルコール摂取に関する項目は含まれていない。

2 8020運動は,乳幼児を対象としない。

3 歯周疾患検診は,健康増進法に基づき実施されている。

4 特定健康診査には,血圧測定は含まれていない。

5 特定保健指導の目的は,健康診査の受診勧奨である。


正解は,選択肢3です。

3 歯周疾患検診は,健康増進法に基づき実施されている。


前説に書いたので,これを選ぶのは簡単だったと思いますが,この時の国家試験を受験された人にとってこの問題は,決して簡単なものではなかったように思います。


それは,同法には,「歯周疾患健診」ということばは出てこないからです。


この検診は,


第十七条 市町村は、住民の健康の増進を図るため、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、管理栄養士、栄養士、歯科衛生士その他の職員に、栄養の改善その他の生活習慣の改善に関する事項につき住民からの相談に応じさせ、及び必要な栄養指導その他の保健指導を行わせ、並びにこれらに付随する業務を行わせるものとする。


という規定に基づいて実施されています。


歯周疾患健診そのものが健康増進法で規定されているわけではないのです。


しかし,だからといって決して正解できない問題ではありません。

丁寧に見ていけば,ほかの選択肢は消去できるからです。


その年の国試は,特徴的な問題が多かったように思います。

それは,正しい文章を否定形にすることで,正解にするというらくらく作問法が多用されたことです。


それでは解説です。


1 「健康日本21」(第二次)には,アルコール摂取に関する項目は含まれていない。


このような出題があると,健康日本21(第二次)の内容は読んだことはない,失敗した,思うかもしれません。


しかし,焦ることはありません。このような出題の多くは,含まれているから,その出題ができるのです。


つまり,もともとの文章は,


「健康日本21」(第二次)には,アルコール摂取に関する項目が含まれている。


これを否定形にすることで間違い選択肢を生成しています。


2 8020運動は,乳幼児を対象としない。


8020運動は,80歳まで自分の歯を20本残そう,という運動です。

歯の健康は,子どもの生活習慣が重要です。乳幼児を除外する意味がわかりません。


これももともとの文章を否定形にしたことで,おかしな文章になったと思われます。


4 特定健康診査には,血圧測定は含まれていない。


これも同様です。


5 特定保健指導の目的は,健康診査の受診勧奨である。


この問題の中で,いちばんの曲者はこの選択肢でしょう。


特定保健指導は,特定健康診査で,メタボリックシンドロームだとされた人に対して,生活習慣などの保健指導を行うものです。


<今日の一言>


国家試験問題は,試験センターによって委嘱された試験委員がそれぞれの専門分野についてつくります。

しかし,その分野の専門家であっても,問題をつくる専門家ではありません。

そのため,問題をつくるのに慣れていない人は,問題を成立させるための常とう手段を用いて,確実な問題に仕上げます。

その一つが,正しい文章を否定形に変える,という作問法です。

問題を解きながら,こういうところに気がつくことができるようになると,つまらないミスはかなり減少させることができるでしょう。

試験委員も人の子です。問題をつくるには結構苦労しているのではないでしょうか。

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