児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)は,1959年の児童権利宣言の30周年を記念して採択され,日本は1994(平成6)年に批准しました。
児童の権利に関するものとして,アメリカの「ホワイトハウス会議声明」(1909年)や国際連盟による「ジュネーブ宣言」(1924年),国際連合による児童権利宣言(1959年)がありますが,宣言は法的拘束力をもちません。
そこで,法的拘束力がある「児童の権利に関する条約」が採択されました。
従来の宣言等は,「児童は守られ愛護されるものでなければならない」という受動的権利を述べたものです。
それに対して,児童の権利に関する条約は,
受動的権利の保障に加えて,子どもは権利をもった主体であるという位置づけから,意見表明権や結社の自由など,能動的権利を保障したことが特徴です。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題138 「児童の権利に関する条約」に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 第1回ホワイトハウス会議で採択された。
2 日本政府は,この条約を批准するための検討を進めている。
3 児童の権利を,能動的権利と受動的権利に関する節に分けて規定している。
4 「児童とは,20歳未満のすべての者をいう」と規定している。
5 「自由に自己の意見を表明する権利の確保」について規定している。
歴史が苦手な人は,ホワイトハウス会議で混乱することでしょう。
しかし,この問題は歴史問題ではありません。
児童の権利に関する条約の内容を知ってもらいたいために出題しています。
児童の権利に関する条約は,
受動的権利の保障に加えて,子どもは権利をもった主体であるという位置づけから,意見表明権や結社の自由など,能動的権利を保障したことが特徴である。
これをしっかり押さえておくことが必要です。
3 児童の権利を,能動的権利と受動的権利に関する節に分けて規定している。
も迷いがちです。
このような問題があると,「そんなことまで覚えておかないといけないのか」と思う人もいるかもしれません。
しかし,そう思うとどんどんどんどん深い深い迷いの森に入り込みます。
国試は,決して深掘りしません。
この問題は,しっかり勉強した人は,答えがすぐわかる問題です。
正解は,
5 「自由に自己の意見を表明する権利の確保」について規定している。
何度も言いますが,児童の権利に関する条約の特徴は,,子どもは権利をもった主体であるという位置づけから,意見表明権や結社の自由など,能動的権利を保障したことが特徴です。
それさえ押さえておけば解けます。そのようにこの問題は作られています。
それでは,ほかの選択肢の解説です。
1 第1回ホワイトハウス会議で採択された。
セオドア・ルーズベルト大統領が開いたホワイトハウス会議(1909年)に出された声明は,以下の通りです。
家庭生活は文明の最高にして最も素晴らしい所産である。児童は緊急やむを得ない理由がない限り,家庭生活から引き離されてはいけない。
子どもは愛護されなければならない,という受動的権利がベースにあることがわかるでしょう。
2 日本政府は,この条約を批准するための検討を進めている。
日本は,批准するのに時間がかかりましたが,1994(平成6)年に批准しています。
条約は,法的拘束力をもつので,条約に反した国内法があると,国際的なペナルティを受けることもあります。
そのため,国内法を整備する必要があります。そのために日本は時間がかかって批准することとなりました。
3 児童の権利を,能動的権利と受動的権利に関する節に分けて規定している。
先にも述べましたが,これが引っ掛かるところでしょう。
結論を言うと,このようには分けられていないので,間違いだということになります。
こういった問題があると,国試問題が怖いと思う人もいるかもしれません。
しかし,きっちり基本を押さえると正解できます。
4 「児童とは,20歳未満のすべての者をいう」と規定している。
児童を規定する年齢には,18歳のものと20歳のものに分かれています。
20歳を規定するものは,レアケースです。
児童扶養手当法など,ほんの一部が20歳と規定しています。
一般的には,18歳であり,児童の権利に関する条約も18歳です。
わが国の児童福祉法も18歳です。
<今日の一言>
国家試験は,五者択一,あるいは五者択二のスタイルを取っています。
つまり,正しくない選択肢がなければ,問題は成立しません。
どんなに勉強しても,国試問題は難しく感じます。
その理由は,正しくない選択肢が含まれるからです。
正しくない選択肢は,でたらめのものが多いので,当然ながら勉強しているわけがありません。
そんなものを見て,焦ったり,頭が真っ白にならないように,基本をきっちり押さえていきましょう。