わが国の5つめの社会保険制度として介護保険制度が始まったのは,2000(平成12)年のことです。
開始当時,「走りながら考える」と言われたとおり,介護保険は,改正を重ねて今日に至ります。
介護保険で大きく変わったのは,地域支援事業です。
それに合わせて,社会福祉士の国家試験の出題でも,地域支援事業が取り上げられてくることが多くなってきています。
第28回以降では,第30回以外では毎年出され,第29回では2問も出題されています。
これからもかなり高確率で出題されると思っても良いでしょう。
法制度のほとんどは,解答テクニックでは正解できないので,きっちり覚えることが必要です。
ただし「きっちり覚える」とは,丸暗記することではなく,おおよそのことを理解することを意味しています。
なぜなら,社会福祉士の試験は,マーク式だからです。
問題文の中に必ず答えがあるので,おおよそのことが理解できていれば,そこから選び出すことができます。
丸暗記の勉強法は,非効率的ですし,しかも忘れます。
さて,介護保険の地域支援事業は,以下の3つです。
介護予防・日常生活支援総合事業 |
包括的支援事業 |
任意事業 |
今回は,この中の「包括的支援事業」を取り上げます。
地域包括支援センター事業 |
介護予防ケアマネジメント業務 |
要支援者(予防給付を利用しない場合),基本チェックリスト該当者に対する訪問型サービス,通所型サービス,その他の生活支援サービス等の実施。 |
総合相談・支援業務 |
高齢者の相談受付・支援等。 |
|
権利擁護業務 |
高齢者の権利擁護の支援,虐待防止等。 |
|
包括的・継続的ケアマネジメント支援業務 |
社会資源を活用したケアマネジメント体制の構築。 地域の介護支援専門員の資質向上のための後方支援。 |
|
在宅医療・介護連携推進事業 |
高齢者などが医療機関を退院する際における医療関係者と介護関係者の連携の調整や相互の紹介など。 |
|
生活支援体制整備事業 |
生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)及び生活支援サービスの提供主体による情報共有・連携強化の場としての協議体の設置。 |
|
認知症総合支援事業 |
認知症初期集中支援チーム編成と認知症地域支援推進員の配置。 |
|
地域ケア会議推進事業 |
地域包括ケアシステム構築に向けた多職種で協働し地域課題を地域づくりや政策形成などを行う地域ケア会議を推進する事業。 |
5つの事業があります。
これを丸暗記するのではなく,おおよそのことをつかむようにします。
たとえば,生活支援体制整備事業なら,生活支援体制とはどんなものなのだろうか,ということをおおよそでも答えられるようにします。
この場合は,生活支援コーディネーターと生活支援サービスに関連するものだという理解になるでしょう。
国試では,決して深い知識と理解は求められません。そんな出題はされないのです。
近年は,おかしなひっかけ問題は出題されていません。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題131 介護保険制度の地域支援事業における包括的支援事業に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 総合相談支援業務では,日常生活自立支援事業や成年後見制度といった権利擁護を目的とするサービスや制度を利用するための支援などが行われる。
2 包括的・継続的ケアマネジメント支援業務では,地域内の要介護者などやその家族に対し,日常的な介護予防に関する個別指導や相談などが実施される。
3 在宅医療・介護連携推進事業では,高齢者などが医療機関を退院する際,必要に応じ,医療関係者と介護関係者の連携の調整や相互の紹介などが行われる。
4 生活支援体制整備事業では,生活支援コーディネーターと生活支援サービスの提供主体による情報共有・連携強化の場として,地域ケア会議が設置される。
5 認知症総合支援事業では,民生委員や地域内のボランティアによる認知症初期集中支援チームが設置される。
詳しい解説は,以下を参考にしてみてください。
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/11/blog-post_4.html
正解は,選択肢3です。
3 在宅医療・介護連携推進事業では,高齢者などが医療機関を退院する際,必要に応じ,医療関係者と介護関係者の連携の調整や相互の紹介などが行われる。
この事業のポイントは,在宅医療と介護連携が連携する事業だということを押さえておくことで何とかなります。
どのように連携するのか,ということまでは問われていないことがわかるでしょう。そこにひっかけポイントはつくらないのです。
<今日の一言>
国家試験に合格するのに,〇時間勉強すればよい,といった情報があります。
わかりやすい表現ですが,効果の出ない勉強はいくらやっても国試で得点することは難しいと言えます。
そこには,どのように覚えたら得点できるのか,といった視点が抜けているからです。
たとえば,
認知症初期集中支援チームは専門家チームであるといったことです。
第31回・問題129 認知症総合支援事業に基づく認知症初期集中支援チームに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 包括的,集中的な支援をおおむね2年とする。
2 介護サービスが中断している者も対象である。
3 早期入院の初期対応体制をとる。
4 初回訪問は医療系職員が2名以上で行う。
5 チーム員に認知症サポーター1名が含まれる。
この問題の正解は,選択肢2ですが,専門家チームであることが理解できていれば,選択肢4・5は消去できるでしょう。
こういったものの理解を一つずつ積み重ねていくことで,得点力が上がっていきます。