今回は,通称「なかぽつ」の障害者就業・生活支援センターを学びます。
同センターは,就業面と生活面の一体的な相談支援を行う機関です。それぞれの担当者が配置されます。
都道府県知事の指定を受けて,以下のような障害者の支援を行います。
就業面の支援 |
・就職に向けた準備支援(職業準備訓練,職場実習のあっせん) ・就職活動の支援 ・職場定着に向けた支援 ・事業所に対して,障害特性を踏まえた雇用管理に関する助言 など |
生活面の支援 |
・生活習慣の形成,健康管理,金銭管理
等の日常生活の自己管理に関する助言 ・住居,年金,余暇活動など地域生活,生活設計に関する助言 など |
それでは,今日の問題です。
第29回・問題146 事例を読んで,障害者就業・生活支援センターのD就業支援担当職員(社会福祉士)の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
障害者就業・生活支援センターのD就業支援担当職員は,登録者の精神障害のあるEさんの就職先である企業の人事担当者Fさんから,職場における合理的配慮の提供について相談を受けた。最近,Eさんから疲労感を覚えたときのために,職場内に専用の休憩室を設置して欲しいとの申出があったが,スペースの確保が難しいため,企業としての対応に悩んでいるという。
1 Eさんからの申出のとおり,休憩室を設置するように助言する。
2 Eさんからの申出は,障害の特性とは関係ないので,断るように助言する。
3 事業所にとって,過重な負担となるので断るように助言する。
4 EさんとFさんとの対立が予想されるので,弁護士に相談するように助言する。
5 Fさんに,必要に応じて自分も同席するので,Eさんと可能な対応について話し合うように助言する。
「合理的配慮」を含めた事例問題ですね。
注意すべきなのは,「最も適切なもの」を選ぶことです。
さて,合理的配慮は,障害者権利条約に盛り込まれ,障害者差別解消法などで展開されています。
合理的配慮とは,障害者から求められた場合,負担が重すぎない範囲で対応することです。
それを含めて,事例を考えましょう。
1 Eさんからの申出のとおり,休憩室を設置するように助言する。
「スペースの確保が難しい」ということから,申し出どおりに休憩室を設置するのは,合理的配慮の範囲とは言えないでしょう。
2 Eさんからの申出は,障害の特性とは関係ないので,断るように助言する。
障害の特性とは関係ないという根拠はありません。
3 事業所にとって,過重な負担となるので断るように助言する。
事業所にとって,過重な負担であることは間違いないですが,Eさんの職場定着のために助言ではありません。
4 EさんとFさんとの対立が予想されるので,弁護士に相談するように助言する。
弁護士に相談するように助言するのは,相談援助のプロフェッショナルとは言えないでしょう。
5 Fさんに,必要に応じて自分も同席するので,Eさんと可能な対応について話し合うように助言する。
これが正解です。
<今日の一言>
正解がわかると,それしか正解に見えないものです。
しかし,最初に問題を読む時は,それほど簡単なものではありません。なぜなら,問題を読む時のポイントが定まっていないからです。
国試で不合格になる人は,このような問題であっても確実に正解できないことがあります。
この問題の場合は「合理的配慮」というワンクッションを入れているので,余計に考えてしまうからです。
もちろん合理的配慮というものがどのようなものであるかを知っておくことは必要ですが,それよりも職場定着の視点で考えることを忘れてはなりません。そうしないと思わぬミスを起こします。
問題それぞれに解き方のポイントがあります。国試当日は誰も教えてくれません。調べることもできません。自分がもつ情報が足りなくても,知恵を使って解くことが必要です。
今日の問題のような問題を甘く考えていると,落とし穴に落ちます。