高齢者の支援は,1963(昭和38)年に作られた老人福祉法が長らくその中心でした。
2000(平成12)年にできた介護保険ができてからは,中心の施策は介護保険に譲りましたが,社会福祉制度である老人福祉法の重要性は,今も何ら変わるものではありません。
特に社会福祉のスペシャリストである社会福祉士は,強くあってほしい分野です。
社会福祉士の資格をもつ介護支援専門員ともたない介護支援専門員では,おのずと視点も変わってくることでしょう。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題134 老人福祉法に基づいて市町村が採る「福祉の措置」の対象となり得るものを2つ選びなさい。
1 老人居宅介護等事業
2 軽費老人ホーム
3 特別養護老人ホーム
4 介護老人保健施設
5 救護施設
この問題の難易度は,恐ろしく高いです。
この問題を出題した意図は,老人福祉法も忘れてはならない,というメッセージであるとらえています。
なぜこの問題の難易度が高いかといえば,老人福祉法が規定するものが3つあるからです。
介護老人保健施設は,もともとは老人保健法によって規定されていましたが,現在は,根拠法が介護保険法に変わっています。
介護保険の介護老人福祉施設は,老人福祉法の特別養護老人ホームとして設立して,介護保険法で指定されることで,介護保険施設となります。
介護老人保健施設は,そのような手続きではなく,最初から介護保険法の施設として設立されるので,改めて介護保険法で指定し直す必要がありません。
5の救護施設は,生活保護法によって設立される保護施設です。
さて,この問題の正解は,
1 老人居宅介護等事業
3 特別養護老人ホーム
の2つです。
老人居宅介護等事業は。介護保険の訪問介護系のサービスです。
ほかに「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」「夜間対応型訪問介護」が含まれます。
軽費老人ホームも老人福祉法が規定していますが,措置の対象ではありません。
<今日の一言>
老人福祉法では,老人ホームとして「養護老人ホーム」「特別養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」「有料老人ホーム」の4つを規定しています。
そのうち,措置の対象となるのは,「養護老人ホーム」と「特別養護老人ホーム」です。
「軽費老人ホーム」は「有料老人ホーム」は,老人福祉法で規定されていますが,措置の対象ではありません。
この問題を極めて難しくしている理由は,「老人居宅介護等事業」です。
この事業は,介護保険の訪問介護系のサービスに当たります。
そのことを知っている人は,介護現場にいる人でもそれほど多くはないでしょう。
なぜなら,多くの人は介護保険のプロフェッショナルであっても,老人福祉のプロフェッショナルではないからです。
最後に老人福祉法に規定されている老人福祉施設と老人居宅生活支援事業をまとめておきます。
老人デイサービスセンター 老人短期入所施設 養護老人ホーム 特別養護老人ホーム 軽費老人ホーム 老人福祉センター 老人介護支援センター |
〈老人居宅生活支援事業〉 老人居宅介護等事業 老人デイサービス事業 老人短期入所事業 小規模多機能型居宅介護事業 認知症対応型老人共同生活援助事業 複合型サービス福祉事業 |