今回は,片麻痺と対麻痺(ついまひ)を押さえたいと思います。
片麻痺 |
対麻痺 |
左右のどちらかの半身に起きる麻痺。 |
両下肢に起きる麻痺。 |
このように,並べて出題されればわかりやすいですが,国家試験は,片麻痺,あるいは対麻痺のどちらかを出題されると難しくなります。
それを私たちは「セット入れ替え作問法」と呼んでいます。
片麻痺とは,両下肢に起きる麻痺である。
あるいは,
対麻痺とは,左右のどちらかの半身に起きる麻痺である。
どちらも間違いだということになります。
さて,今日の問題です。
第28回・問題2 人体の部位と疾病,病態との関連性に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 吐血とは,気道から口腔を経て血液を排出することである。
2 上腕骨骨折は,寝たきりを引き起こしやすい。
3 対麻痺とは,左右どちらか半身に起こる麻痺である。
4 踵骨部の褥瘡は,仰臥位で起こる。
5 声帯の障害は,誤飲を引き起こす。
この問題は,学生にはちょっと難しいかもしれません。
というのは,正解は,
4 踵骨部の褥瘡は,仰臥位で起こる。
ですが,仰臥位が何かをわかっていないと選べないからです。
仰臥位は,あおむけ
側臥位は,横向き寝
伏臥位は,うつ伏せ
褥瘡は,圧迫などがあって血液の流れが悪くなる場所が好発部位となります。
つまり,体位によって,褥瘡が発生しやすい部位は変わるということです。
踵骨部は,かかとの部分です。
あおむけでは,かかとが下向きになるので,かかとに褥瘡が発生しやすくなります。
横向き寝(側臥位)では,くるぶしの部分(外踝)に褥瘡が発生しやすくなります。
さて,それではほかの選択肢も確認します。
1 吐血とは,気道から口腔を経て血液を排出することである。
吐血は,喀血(かっけつ)とセットになるものです。
食道から口腔を経て,血液を排出するのが「吐血」です。
気道から口腔を経て,血液を排出するのが「喀血」です。
時代劇などで,登場人物が,口から急に血を吹き出すシーンがあります。
周りの人が「まさか肺病では」というと
血を吐いた人は,「ほかの人には言わないでください」
と口外するのを止めるようなことがあります。
肺病とは,肺結核のことです。肺結核を患って喀血しているというシーンとなります。
今の若い人は,喀血と聞いてもわからないかもしれませんね。
2 上腕骨骨折は,寝たきりを引き起こしやすい。
上腕骨とは,腕のひじよりも体幹に近い方の骨です。腕の骨を折って,寝たきりになることは通常考えられないでしょう。
3 対麻痺とは,左右どちらか半身に起こる麻痺である。
これが,今日のテーマの「対麻痺」です。
対麻痺とは,両下肢に起きる麻痺です。
対麻痺という言葉は,日常ではあまり使わないので,勉強しないと知らないかもしれませんね。
5 声帯の障害は,誤飲を引き起こす。
声帯の障害は,多くの場合,発声に障害を引き起こします。
誤飲は,危険なものを飲み込むことをいいます。
<今日の一言>
セット入れ替え作問法は,試験委員にとっては,倍の文章を考えなければならないので,面倒ですが,受験生を混乱させる効果は絶大です。
なぜなら,受験生が「これはどっちだったっけ?」と悩んでくれるからです。
試験委員にとって簡単なのは,セットになったものをどちらも出題することです。
これで選択肢を2つ作ることができます。
しかし,受験生にとって,入れ替えになっていることに気がつくことができれば,選択肢を2つ消去できることになるので,受験生を混乱させる効果はあまりありません。
ここで言えることは,もしわかりにくいものが出題されていたら,入れ替えになっていないかを考えるようにしましょう。
セットになったものが2つとも出題されていれば,2つ消去できますし,2つとも出題されていなくても,セットになったもう一つのほうのことを述べている文章ではないかと注意することができます。