マズローの欲求階層説は,「心理学理論と心理的支援」で学びます。
最も上位の欲求は,「自己実現欲求」です。
この欲求は,成長動機となるものです。
そのほかの欲求は欠乏欲求と呼ばれて,欠乏しているものを満たしたいと思うものです。
自己実現欲求は,欠乏欲求ではなく,満たされたとしても,次の次元を目指してさらに成長しようと試みるものです。
さて,ハーズバークの動機付け・衛生理論とは,動機付け要因と衛生要因に分解されて,動機付け要因は,職務満足に関連するもので,衛生要因は職務不満足に関連するものです。
仕事の達成感など動機付け要因が満たされると職務満足が上がります。
それに対して,職場の人間関係や賃金など衛生要因が満たされると職務不満足が解消されるものです。
この2つをバランスよく満たすことで,従業員はいきいきと働くことができると考えられています。
図示すると以下のようになります。
それでは今日の問題です。
第29回・問題125 組織で働く者の労働意欲やキャリア形成に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 ハーズバーグ(Herzberg,F.)は,仕事に積極的な満足を与える要因として,監督技術,作業条件,給与などの衛生要因を重視した。
2 マズロー(Maslow,A.)は,自己実現の欲求が達成されれば,仕事のやる気は低下すると考えた。
3 コーチングとは,上司からの指示・命令により従業員の労働意欲を向上させる方法のことである。
4 キャリアアンカーとは,組織が個人にふさわしいキャリア展開を前もって計画することをいう。
5 メンタリングは,メンティー(メンタリングの受け手)のキャリア形成の促進を目的とする。
知識なしでは正解するのが難しい問題です。
人の中には,解答テクニックを身につけると合格できると言う人がいますが,解答テクニックは,最後の1点・2点を積み上げるとときに必要なもので,解答テクニックだけで合格できるような試験ではありません。
特に昨今の国試問題は,言い回しがシンプルになっているので,日本語的に解くのが困難な問題が増加しています。
さて,この問題の正解は,選択肢5です。
5 メンタリングは,メンティー(メンタリングの受け手)のキャリア形成の促進を目的とする。
メンタリングを知らない人は多かったと思います。
落ち着いて考えると「なるほど」と思うかもしれません。
しかし,国試会場では知らない用語が出題されると焦り戸惑い,頭の中が真っ白になります。
こういった問題は,ほかの選択肢をいかに消去できるかが重要です。
メンタリングは。メンタリングの受け手であるメンティーに気づきを与える育成法です。
それでは解説です。
1 ハーズバーグ(Herzberg,F.)は,仕事に積極的な満足を与える要因として,監督技術,作業条件,給与などの衛生要因を重視した。
仕事に積極的な満足を与える要因は,動機付け要因です。
衛生要因は,職務不満足を解消するものです。
2 マズロー(Maslow,A.)は,自己実現の欲求が達成されれば,仕事のやる気は低下すると考えた。
自己実現欲求は,成長動機です。
自己実現欲求は,その瞬間は満たされても,その次を目指すことになります。
アスリートが次々と新しい目標に向かって努力します。
もし,承認欲求を満たすだけのアスリートであれば,次のステージに進むことはないかもしれません。
3 コーチングとは,上司からの指示・命令により従業員の労働意欲を向上させる方法のことである。
コーチングは,上司から指示や命令はしません。
答えは相手が持っていると考え,質問などを通して,従業員が自ら考えて行動できるようにかかわっていきます。
4 キャリアアンカーとは,組織が個人にふさわしいキャリア展開を前もって計画することをいう。
キャリアアンカーは,自分が大切にするキャリアに対する価値感などです。
アンカーとは,船のいかりのことです。
船が流されないように,海底におろして船を固定します。
そのように,根底に流れる自分のキャリアの重要な部分だと押さえると良いと思います。