2020年11月1日日曜日

高齢者の病態

人体の構造と機能及び疾病は,その年によって難易度が大きく変わるという受験生にとっては,実にやっかいな科目です。

しかし,高い得点をねらわないという戦略でいくなら,攻略はそれほど難しくはないかもしれません。なぜなら,新しく覚えることなく,一般生活の中で得られた知識や経験などによって解ける問題もあるからです。


ほかの科目ではあまりそういった問題はみられないかもしれません。


最も印象深いのは,


痛風発作は,足の親指のつけ根部の関節に多い。(第23回・問題3)


というものです。本人が痛風になったり,周囲の人が痛風になったことがある人がいたなら,おそらくものすごく簡単なものだったことでしょう。


痛風に関しては,このとき以来出題されていません。

しかし,過去をさかのぼってみると,第13回,第14回,第17回に出題されています。


第18回国試以前は,このように連続して出題されるものが多くみられました。


「3年間の過去問を勉強したら合格できる」といった現在では極めて不適切なアドバイスをしてくれる人は,おそらくその当時に社会福祉士を取得したのではないかと思います。


今の出題傾向を知らない人は,中途半端なアドバイスをするのはやめてほしいものです。

受験生を混乱させる原因です。


それでは,今日の問題です。


第28回・問題5 高齢者にみられる病態の特徴に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 皮膚の湿潤は,褥瘡の発症リスクとなる。

2 フレイル(虚弱)は,慢性疾患の終末期の状態である。

3 感音難聴では,低い音から聞こえにくくなる。

4 変形性膝関節症は,廃用症候群に属する。

5 記憶障害では,短期記憶よりも長期記憶が低下する。


この5つの選択肢の中で超頻出なのは,


3 感音難聴では,低い音から聞こえにくくなる。

4 変形性膝関節症は,廃用症候群に属する。


この2つは,今まで何度も繰り返して出題されてきたものです。


しかし,ちょっと難しめなのは,感音難聴と出題されていることです。高齢者の難聴の多くは,高音域から聞こえにくくなる「感音難聴」です。


高齢者の難聴は低音から聞こえなくなる。と出題されていれば,間違いだと多くの人は経験的にわかるでしょう。


低音域から聞こえなくなるのは「伝音難聴」といいます。


廃用症候群は,体を動かなさいなどの理由で起きるもので,近年は生活不活発病と呼ばれるようになっています。

膝の関節の軟骨の摩耗などによって生じるもので,廃用症候群ではありません。


さて,この問題の正解は,選択肢1です。


1 皮膚の湿潤は,褥瘡の発症リスクとなる。


褥瘡の発生メカニズムが明らかではなかったとき,褥瘡予防や改善のために円座が使われていたことがあります。


若い人は,円座と言ってもピンとこないでしょう。

褥瘡が発生している箇所が布団に当たらないように,ドーナツ型の座布団を使ったのです。

そうすると患部の血行が悪くなり,さらに褥瘡を悪化させてしまいます。


知らないということは怖いものですね。


2 フレイル(虚弱)は,慢性疾患の終末期の状態である。


フレイルは,健康状態から要介護状態に至る途中の段階をいいます。


この時,初めて出題されました。

今後は,サルコペニアとともに注意しておかなければならない用語です。


しかし,初めて出題されるようなものは,いきなり正解になるようなことはそれほど多くはないことを覚えておきたいです。


慌てるとろくなことはありません。


5 記憶障害では,短期記憶よりも長期記憶が低下する。

これも経験的に知っているでしょう。昨日の夜に何を食べたか覚えていなくても,遠い昔のことは昨日の出来事のようにしっかり覚えていることがあるのは,長期記憶は,忘れにくいためです。

国家試験の勉強は,長期記憶になるほど,長い期間をかけて勉強するものではないでしょうが,一夜漬けのような勉強よりも,早くから勉強をコツコツやったほうが,国試当日にど忘れすることは少ないと言えます。

そういった意味で,「3か月の勉強で,過去問を3回繰り返せば合格できる」といったアドバイスには,頑として異を唱えたいと思います。

現時点(11月)から勉強を始めて,合格するためには,相当な努力が必要です。

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