2019年6月2日日曜日

ポストモダニズム(ポストモダン)の整理

日本は元号で時代を整理されることが多いと思います。
20世紀だけでも大正,昭和,平成という時代に分けられます。

それぞれの時代は,それぞれの時代の特徴があります。
19世紀と20世紀の大きな違いは,19世紀は産業化の時代,20世紀はさらに発展した科学化の時代と言えるでしょう。

20世紀は,人類が空を飛び,月にまで到達した時代でもあります。

芸術では,前近代的な香りのアールヌーボーから近代的な香りがプンプンするアールデコに移り変わっていきます。

アールデコ芸術を改めて見ると,20世紀らしさを強く感じます。ネットで見てみると良いでしょう。

さて,モダニズムは「近代的」を意味します。

そのため,本来「モダニズム」は,時代が進めば,時代とともに変化するものですが,20世紀の科学化をイメージするものに固定されるようです。

ソーシャルワークの科学化を目指した人物がいます。

「ケースワークの母」と呼ばれるメアリー・リッチモンドです。

そこから,診断主義派ケースワークが生まれ,それを批判する形で機能主義派ケースワークが生まれます。まさにこれらはモダニズムです。

診断主義派ケースワークは,心理社会的アプローチに発展していきます。

その後

問題解決アプローチ
行動変容アプローチ
課題中心アプローチ

などが生まれていきます。

これらは,クライエントの行動とその結果を重視する「実証主義」の影響を強く受けていると考えられています。

これらが,ソーシャルワークのモダニズム(モダン)です。

1970~80年代以降は,モダニズムを批判して,ポストモダニズム(ポストモダン)が生まれています。新興勢力といってもよいでしょう。

ポストモダニズムの系譜に位置づけるアプローチ

ナラティブアプローチ
解決志向アプローチ
エコロジカルアプローチ
ジェネラリストアプローチ
エンパワメントアプローチ
フェミニストアプローチ
ケアマネジメントアプローチ

など

第31回国試では,ポストモダニズムについて出題されましたが,どれがモダニズム系か,どれがポストモダニズム系か,を分類して覚えることに重要性はないように思います。

第31回国試を考えると,出題者の出題意図は,ポストモダンではなく,社会構成主義だったように思います。

ポストモダン,ポストモダニズムとは何?
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/04/blog-post_13.html

社会構成主義は,「現実は社会が構成するものである」と考えます。

現実は,人の認識によって変わるという意味です。

リッチモンドは,ソーシャル・ケース・ワークを「人と社会環境との間を個別に意識的に調整することを通して,パーソナリティを発達させる過程」と定義づけました。

20世紀は,科学は万能だと信じられていた時代だったのかもしれません。
人は空を飛んで月にまで到達してしまったのですから,そう考えるのも極めて自然であると思えます。

ポストモダニズムは,パーソナリティの発達を目指すものではありません。
むしろその人らしさを目指すものだと言えます。

21世紀に入って「ボタニカル」が流行しています。
まるでアールデコの時代から,アールヌーボーの時代にさかのぼったかのようです。


<今日の一言>

モダニズムとポストモダニズムは,相反するものではありません。
どのアプローチが優れているといったものではありません。

クライエントの問題に合わせて適用し,柔軟に運用されるものです。

国試では深い理解は求められていません。
しかし,社会福祉士がソーシャルワーカーであるならば,資格取得後に深めていきたいものだと思います。

理論に裏付けられた実践は,多くの先人たちの知恵を拝借することができます。
それによって,対人援助実践に多彩な方法を取り入れることができます。

最新の記事

ノーマライゼーションの国家試験問題

 今回は,ノーマライゼーションに取り組みます。 前説なしで,今日の問題です。 第26回・問題93 ノーマライゼーションの理念に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 1 すべての人間とすべての国とが達成すべき共通の基準を宣言した世界人権宣言の理念として採用された。 2...

過去一週間でよく読まれている記事