スーパービジョン
は聞いたことがないという人でも
スーパーバイザー
は聞いたことがある,という人はいるのではないでしょうか。
スーパーバイザーは,スーパービジョンを行う人
スーパーバイジーは,スーパービジョンを受ける人
つまりスーパーバイザーは指導者だということになります。
スーパービジョンの役割と聞くと難しそうに思うかもしれません
スーパーバイザーの役割と聞くと何となく理解できそうな感じがするのではないでしょうか。
スーパービジョンの機能=スーパーバイザーの役割
と押さえると良いと思います。
教育的機能 価値・知識・技術を教える機能
支持的機能 スーパーバイジーを支える機能
管理的機能 スーパーバイジーの業務を管理する機能
それでは,今日の問題です。
第25回・問題117 L社会福祉士が部下のK社会福祉士に対して行うスーパービジョンに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 利用者から,K社会福祉士についての苦情を聴き,すぐにそれを施設管理者に人事考課のための情報提供として伝える。
2 K社会福祉士が,利用者とかかわるのがつらいと話しながら泣いてしまったので,共感を示すために一緒に泣く。
3 K社会福祉士の業務負担や力量,そしてケースの困難度を勘案して,担当ケース数を配慮する。
4 利用者への支援について,K社会福祉士から逐一報告してもらい,効率的に業務を遂行するために細かく指示を出す。
5 K社会福祉士が,利用者の意向を確認していないことがよくあることを指摘し,上司として自分が利用者の意向の確認を行う。
事例っぽく表現した問題です。
言葉を丸暗記することに専念した勉強法の人は,おそらくこういった問題に対応するのは難しいと思います。
カリキュラムが現在のものに変わる時に,国試は,常に新しい出題スタイルを取り入れていく,と提言しています。
そのため,これからも毎回一定数の問題は,それまでと出題スタイルが異なるものが出題されることでしょう。
この問題については,スーパービジョンに限定した問題でなくてもそれほど混乱しない問題かもしれません。
しかし,国試問題の中には,設定されたものを忘れると間違える問題もよくあります。
いつもそうならないように気をつけることが大切です。
正解は,選択肢3です。
3 K社会福祉士の業務負担や力量,そしてケースの困難度を勘案して,担当ケース数を配慮する。
これが「管理的機能」です。
管理には,大きく分けると業務管理と労務管理に分けられます。
業務管理は,この選択肢のような管理です。
労務管理は,出勤や休みなどのような管理です。
疲れていたら休ませるといったものも労務管理に当たるので,管理的機能だと言えるでしょう。
3つの機能のうち,管理的機能は,その範囲が広くイメージしにくいかもしれません。
それでは,他の選択肢も確認してみましょう。
1 利用者から,K社会福祉士についての苦情を聴き,すぐにそれを施設管理者に人事考課のための情報提供として伝える。
これでは,施設管理者とK社会福祉士の間のメッセンジャーに過ぎません。
スーパービジョンの視点がありません。
スーパービジョンの機能を知らなくても,対応的にだめだと判別できることでしょう。
こんな人が上司ならスタッフはどんどんやめていくことでしょう。
2 K社会福祉士が,利用者とかかわるのがつらいと話しながら泣いてしまったので,共感を示すために一緒に泣く。
おそらく支持的機能だと思わせたいために出題したものだと思われます。
しかし,スーパービジョンの目的は,ソーシャルワーカーとしての成長を促すものです。
共感を示すために一緒に泣くことも,心の浄化(カタルシス)には必要かもしれませんが,スーパービジョンではありません。
一緒に泣くことなら,ソーシャルワークの専門家でなくてもできます。
4 利用者への支援について,K社会福祉士から逐一報告してもらい,効率的に業務を遂行するために細かく指示を出す。
効率的に業務を行うことは大切です。
しかし,教育的機能を考えたとき,細かい指示を出していれば,成長の機会を奪ってしまうことになりかねません。
5 K社会福祉士が,利用者の意向を確認していないことがよくあることを指摘し,上司として自分が利用者の意向の確認を行う。
まだスーパービジョンの種類について解説していませんが,スーパービジョンの種類には,「ライブスーパービジョン」があります。
ライブスーパービジョンは,スーパーバイザーが面接場面に同席して,スーパーバイジーのサポートを行うものです。スーパーバイザー自らが全面に出るのはスーパービジョンではありません。
こういった上司がいる組織は,おそらく適切な運営がなされていないのではないかと思います。
スタッフに任せることができなくて,自分が出ていくのは,チームとしての業績を上げることができないリーダーの典型です。
<今日の一言>
スーパービジョンは限りなく出題率100%に近いものです。
ほぼ毎年出題されています。
しかし今日の問題のようにひねりを効かせて出題されることもあります。
そこで得点するためには,きっちり覚えることが欠かせません。
管理的機能は●●である,といった理解では,正解することが難しいと思います。
自分の言葉で覚えていくのが大切です。
何度も受験している人は,特に気を付けましょう。
最新の記事
児童発達支援管理責任者
児童発達支援管理責任者(児発管)とは,障害児通所支援及び障害児入所支援で,個々のこどもや家族のニーズに応じた一連のサービス提供プロセスを管理する支援提供の責任者です。 業務には,個別支援計画があります。 障害者総合支援法に規定されるサービス管理責任者(サビ管)に相当します。 ...
過去一週間でよく読まれている記事
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
国家試験では,内容が重複しないように問題を構成します。 ほかの問題がヒントになってしまうためです。 これまでの社会福祉士の国家試験でもそのように出題されてきました。 ところが第37回では,同じ内容のものが複数の問題に出題されました。 試験を実施する社会福祉振興・試験センターが最終...
-
ソーシャルワークは,外国生まれです。 これから社会福祉士を目指そうと思う人は,カタカナの言葉が多いので,覚えるのがとても大変だと思うでしょう。 しかし,それらをうまく使いこなすことができれば,とてもかっこよいと思いませんか? ただし,かっこよいから使うのではありません。専門用語は...
-
システム理論は,「人と環境」を一体のものとしてとらえます。 それをさらにすすめたと言えるのが,「生活モデル」です。 エコロジカルアプローチを提唱したジャーメインとギッターマンが,エコロジカル(生態学)の視点をソーシャルワークに導入したものです。 生活モデルでは,クライエントの...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
歴史が苦手な人は多いですが,イギリスの歴史は覚えておきたい歴史の代表です。 今回のテーマは,ブース,ラウントリーの貧困調査です。 第34回国家試験までの出題回数を調べてみると ブース 12回 ラウントリー 16回 どちらの出題頻度も高いですが,ラウントリーのほうがより出題頻度が...