グループワークのプロセス
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準備期
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↓
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開始期
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↓
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作業期
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↓
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終結期
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グループワークのプロセスはすべてが重要ですが,やっぱりグループワークの醍醐味は作業期でしょう。
グループワーカーの腕の見せ所と言っても決して過言ではないでしょう。
メンバーの相互作用によって,葛藤や対立が生じます。
しかしそこにグループワークの意義があります。
葛藤や対立は,メンバーの変化が生まれてくるきっかけとなるからです。
経験の少ないワーカーならどのように対応してよいかわからず,その場から立ち去りたくもなることがあるでしょう。
しかし,対立や葛藤が生じることを避けることは適切ではありません。
それでは今日の問題です。
第22回・問題108 事例を読んで,グループワークの場面でのR児童指導員(社会福祉士)の発言に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。
〔事 例〕
X児童養護施設では,入所している高校生7人を対象として,「親との関係を考える」というテーマでグループワークを実施している。月に1回の頻度(全6回)で開催し,R児童指導員が担当している。2回目のセッションにおいて,S君が,「みんなの話を聞いていると,親といい関係を保ちたいとか取り戻したいみたいな発言が多いけど,僕は親のことは嫌いだし,顔も見たくないんだよ」と発言した。
1 みんなの意見とは少し違うので,今は黙っていてくれないかな。
2 でもご両親はS君のこと,嫌いではないと思うよ。
3 へえ,何があったの? 僕に聞かせてよ。
4 誰かS君が前向きになれるような言葉をかけてあげてよ。
5 そうなんだね。ここで,もう少し話してくれないかな。
全6回のセッションのうちの2回目です。
おそらく1回目のセッションでは緊張感もあり,自分の意見を話すこともためらわれていたのでしょう。
みんなの話を聞いていると,親といい関係を保ちたいとか取り戻したいみたいな発言が多いけど,僕は親のことは嫌いだし,顔も見たくないんだよ。
S君は,ほかのメンバーと自分は違うという気持ちを抱いているようです。
しかし,本当にそう思っているのは,S君だけなのでしょうか。
もしかすると他のメンバーもS君と同じようなことを感じているかもしれませんが,その気持ちを隠しているだけかもしれません。
グループワークは,集団を活用した援助技術です。
ケースワークと違うのは,相互作用を期待してグループワークが実施されます。
S君の話がR児童指導員が想定するものと違ったとしても,S君が自分の気持ちを語り出したのを遮ることは不適切です。
正解は,
5 そうなんだね。ここで,もう少し話してくれないかな。
S君がなぜそう思ったのかを促しています。
3 へえ,何があったの? 僕に聞かせてよ。
S君の話を引き出すことは同じです。
しかし大きく違うのは,過去の出来事を聞こうとしていることです。
事実は事実。
重要なのは,それをどうとらえるか,ということです。
それ以外の選択肢は,すべてS君を否定しています。
1 みんなの意見とは少し違うので,今は黙っていてくれないかな。
2 でもご両親はS君のこと,嫌いではないと思うよ。
4 誰かS君が前向きになれるような言葉をかけてあげてよ。
選択肢1は,S君の考えがほかの人と違うと思うのは,R指導指導員の思い込みです。
自己覚知ができていないワーカーがやりがちです。
選択肢2は,R児童指導員が「そうだったらいいな」という期待です。その期待が事実と違ったらどうするつもりなのでしょう。
選択肢4も選択肢1と同じです。
<今日の一言>
グループワークは,集団を活用した援助技術です。
集団力学(グループダイナミクス)は,個は集団に影響を受けて,集団は個から影響を受けるととらえます。
それらを活用したものがグループワークです。
その視点を忘れてはなりません。