2021年2月14日日曜日

ケースマネジメントのモデル

社会福祉士の国家試験で怖いのは,平常心を忘れてしまうことです。

この当たり前のことができなくなるのが本当に怖いです。


平常心を忘れてしまうのは,様々なケースがありますが,代表的なものには,「勉強していないものが出題された時」があります。

勉強不足の人が勉強していないものが出て答えられないのは当然のことです。


参考書や過去問を何度も何度も繰り返して勉強した人が勉強していないものを目にすることは,それとは違います。

無力感に苛まれる人もいるでしょう。


しかし,それまで勉強してきた確実な知識があれば,そういった問題が解けなくても合格基準点に届きます。


6割程度のラインというのは,実にうまく作られているように思います。


とは,いうものの勉強したことがないものであっても,実は3分の1から2分の1くらいは正解できます。消去できる選択肢が含まれるからです。


今回は,ケースマネジメントのモデルを取り上げます。


国家試験は,答えがあいまいだといけないので,定説になっているもの,何かの文献に書かれているものから出題します。


ケースマネジメントのモデルもどこかにおそらく書かれているでしょう。


しかし,多くの人は目にしていないはずです。

つまり,勉強したことがないのは,すべての受験生が同じです。


平常心で問題に取り組むことができれば,どこかにヒントを見つけ出すことができます。

考えることをあきらめて適当に答えを選ぶのは,実にもったいないことだと思いませんか?


それでは,今日の問題です。


第28回・問題111 事例を読んで,この場合に適したケースマネジメントのモデルとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 高校生のときに統合失調症を発症したHさんは,10年以上の入院生活が続いており,退院して地域で生活することを望んでいる。両親はすでに他界し兄弟は遠隔地在住で,Hさんの退院後の生活を支援してくれる人はいない。Hさんの症状は不安定で,日常的に服薬管理などの医療サービスや生活全般の見守り・助言,リハビリテーション,就労支援など,様々な支援が必要である。

1 ストレングスモデル

2 リハビリテーションモデル

3 臨床型モデル

4 仲介型モデル

5 ACT(包括型地域生活支援プログラム)モデル


ケースマネジメントのモデルは知らないと思うと試験委員の思うつぼです。

多くの人は,惑わされて平常心を見失っていることでしょう。


しかし,国家試験は,日本語で出題されます。

日本語的に答えを見つけ出すことができます。


さて,この問題のポイントは,


Hさんの症状は不安定で,日常的に服薬管理などの医療サービスや生活全般の見守り・助言,リハビリテーション,就労支援など,様々な支援が必要である。


本当に様々な支援が必要です。単一の専門職では対応ができないでしょう。


正解は,選択肢5です。


5 ACT(包括型地域生活支援プログラム)モデル


社会福祉士の国試は,ありがたいなあ,と思います。


この選択肢は,


5 ACT(Assertive Community Treatment)モデル


と出題することも可能です。そうはせず,(  )で,「包括型地域生活支援プログラム」と説明してくれています。


ACTを知らなくても「包括型地域生活支援」という言葉から,様々な支援を行うものであることが推測できます。


ACTは,多職種で24時間365日,訪問を中心したサポートを行うものです。


社会福祉士の国家試験ではこの時に初めて登場していますが,精神保健福祉士の国家試験ではおなじみです。


重度の精神障害者の地域移行のために実践されているだからです。


正解以外の選択肢を簡単に紹介します。


1 ストレングスモデル


ストレングスモデルは,クライエントのもつ強み(ストレングス)に着目して,支援するものです。


2 リハビリテーションモデル


リハビリテーションモデルは,リハビリテーションを中心に行うものです。


3 臨床型モデル


これが言葉から推測しにくいものでしょう。


ケースマネジメントは,もともとアメリカの精神保健分野で発展してきたものです。


精神分野の臨床型というのは,治療を中心に行うものです。


4 仲介型モデル


ケースマネジメントは,日本では介護保険分野ではケアマネジメントとしておなじみです。


サービス調整を中心に行うのが仲介型モデルです。



<今日の一言>


今日の問題の場合,おそらく多くの人は「ストレングスモデル」「リハビリテーションモデル」は,消去できるでしょう。


そうすると3分の1の確率で正解できます。


ACTがわからなくても3分の1の確率で正解できます。


この問題の場合は「包括型地域生活支援プログラム」という言葉から,さらに正解できる確率が高まりました。


社会福祉士の国家試験はマーク式なので,わからないものでも正解できる可能性があります。


合格基準点にあと数点で届かないという人はたくさんいます。


そういった人は,平常心を見失わない強い気持ちをもって,国試に臨むことが必要です。

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