今回は,支援の終結(ターミネーション)を取り上げます。
相談援助のプロセス |
受理面接(インテーク) |
事前評価(アセスメント) |
支援計画(プランニング) |
支援の実施(インターベンション・介入) |
経過観察(モニタリング) |
支援の終結(ターミネーション) |
終結後の支援(アフターケア) |
プロセスの各段階では,ワーカーのかかわり方は変化していきます。
受理面接(インテーク)では,ラポールの形成の割合が大きいですが,その後は,ラポールの形成の割合が小さくなっていきます。
今回のテーマは,ターミネーションですが,その段階においては,ラポールの形成はほとんどないと言ってもよいでしょう。
この時点でもまだラポールの形成に努めなればならないのなら,今までの関係はどうだったのだろうと思ってしまいます。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題107 事例を読んで,D社会福祉士の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Eさん(75歳,女性)は,息子の転勤に伴い1年前に当地に転居してきた。近隣に知人がおらず,日中は独居の状態であり,強い孤独感をもっているようだと,民生委員から相談を受けた地域包括支援センターのD社会福祉士が時々訪問していた。
また,このD社会福祉士の紹介を受けて,Eさんは近くの高齢者サロンに定期的に通うようになり,そこで友人もできた。Eさん自身もD社会福祉士に「近頃は,一人で居ても淋しくなくなった」と話した。
1 「これからも心配なので,もっとお訪ねする回数を増やしましょう」と伝える。
2 「今後」新たな問題が起きるかもしれませんね。これからも今までどおりお会いしましょう」と伝える。
3 「ご自分の力で友達を得ることができたので,今後はご自分で困りごとを解消してください」と伝える。
4 「今後は状況を見て,お訪ねする回数を少なくしようと思いますが,どのようにお考えになりますか」と伝える。
5 「Eさんのために,今日で支援を終了したいと思います」と伝える。
この事例で重要なのは,
Eさんは強い孤独感をもっていたらしい。
Eさんは「近頃は,一人で居ても淋しくなくなった」と語っていることです。
この事例の作り方が甘いと思うのは,Eさんの以前の状況は明らかではないので,「強い孤独感を持っていたらしい」という実にあいまいなことしか言えないことです。
しかし,たとえあいまいであっても,事例の中から判断するしかないので,Eさんの強い孤独感の解消のために,高齢者サロンに通うことになったと考えます。
ここで余計なことを考えると間違える元となるので注意が必要です。
さて,この問題の正解は,選択肢4です。
4 「今後は状況を見て,お訪ねする回数を少なくしようと思いますが,どのようにお考えになりますか」と伝える。
D社会福祉士は,終末期が近くなってきたと考えて,Eさんとの今後のかかわり方を変えていくために,Eさんに意向を確認しています。
それでは,ほかの選択肢も確認していきます。
1 「これからも心配なので,もっとお訪ねする回数を増やしましょう」と伝える。
今日の問題はそれほど難易度が高いものではありませんが,間違う可能性があるとすればこの選択肢でしょう。
Eさんが抱える問題が,孤独感以外にあれば,まだまだ終末期に近くなったとは言えません。
しかし,そんな情報はどこにもありません。
また,たとえそんな情報があったとしても,ワーカーの考えで回数を増やすのではなく,クライエントの意向を確認していないので,正解になることはありません。
2 「今後」新たな問題が起きるかもしれませんね。これからも今までどおりお会いしましょう」と伝える。
たしかに,今後新たな問題が起きるかもしれません。
しかし,今までどおり会うことよりも,新たな問題が生じた場合,どのように対応すればよいのか,また支援が必要となった場合は,いつでも連絡してよいことを伝えることが必要です。
3 「ご自分の力で友達を得ることができたので,今後はご自分で困りごとを解消してください」と伝える。
ターミネーションに関連する出題があった場合は,終結は今後かかわらないことを意味する,といった出題が多くみられます。
しかし,それは間違いです。先に述べたように,終結してもそれで関係が終わるわけではありません。
必要に応じて,支援を再び行うこともあります。
5 「Eさんのために,今日で支援を終了したいと思います」と伝える。
ターミネーションは,少しずつ少しずつその段階に近づいていきます。
そして何よりも大切なのは,クライエントと一緒に今までの支援を確認することによって評価することです。
突然支援を終了するということは通常あり得ません。