国家試験が終わってSNSなどではどんな話題が飛び交っているのかよく知りません。
聞くところによると,時間が足りなかったという人が多かったようです。
そういった話を聞くと解く訓練が足りないなぁ,と思います。
自分が問題を解くスピードを知っておくことの大切さを改めて感じました。
今日のテーマは,第33回国家試験で最も難しい問題です。
権利擁護と成年後見制度が難しかったと思っている人が多いようです。
ピックアップすると以下の問題です。
第33回・問題77 財産権の制限に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 財産権は,条例によって制限することができない。
2 法律による財産権の制限は,立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えていれば,憲法に違反し無効となる。
3 所有権は,法律によって制限することができない。
4 私有財産を公共のために制限する場合には,所有権の相互の調整に必要な制約によるものであっても,損失を補償しなければならない。
5 法令上の補償規定に基づかない財産権への補償は,憲法に違反し無効となる。
この問題は一見難しそうに見えますが,実は解答テクニックで対応可能です。
おそらく多くの受験生は以下の2つまで絞り込めたのではないかと思います。
2 法律による財産権の制限は,立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えていれば,憲法に違反し無効となる。
5 法令上の補償規定に基づかない財産権への補償は,憲法に違反し無効となる。
この2つはどちらも憲法に関するものです。
解釈が正しいか間違っているかは,問題を正解するための必要条件ではありません。
必要なのは,推測力です。
5 法令上の補償規定に基づかない財産権への補償は,憲法に違反し無効となる。
財産権???
と思う人は要注意です。調べたくなるでしょう。
国家試験会場では調べることはできません。
財産権とはどういうものか正しい意味は分からなくても,財産の意味はわかるでしょう。
財産を侵害しなければならないことがあります。例えば,何かが起きてその土地を離れなければならないというような時です。
法律もつくるかもしれませんが,行政府の裁量によって行われることもあります。
これで思い当たることはありませんか?
コロナ禍に関連する保障です。
それらは法制度に基づくものではなく,行政府の裁量によって実施されたものです。
国民全員が10万ずつもらったでしょう。地方によって営業の時間短縮によって補助金が出たりしました。
これらが財産権と本当につながるのかはわかりません。しかしこのような推測をすることが可能です。
ということで,正解は,選択肢2だと思います。
2 法律による財産権の制限は,立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えていれば,憲法に違反し無効となる。
この文章だけよくよく読んでみると,とてもよくわかると思いませんか。
合理的裁量の意味がよくわからなくても良いのです。
必要なのは,推測することです。
たとえば,コロナに感染した人の家は,感染蔓延を防止するために撤去する,といった法案がもし通ったとします。
しかし,実際には消毒で対応できます。合理的とは,理にかなったという意味です。
合理的裁量は知らなくても,合理的行為,合理的配慮は知っているはずです。そこから推測することができます。
本当に難しいのは,知識がない時に,1つの選択肢も消去できない,というタイプの問題です。
さあ,そのポイントで見たとき,最も難しいと思うのは,以下の問題です。
第33回・問題43 福祉の財源に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 生活困窮者自立支援法に基づき,生活困窮者家計改善支援事業の費用には国庫負担金が含まれる。
2 生活保護法に基づき,保護費には国庫補助金が含まれる。
3 介護保険法に基づき,介護給付費には国庫負担金が含まれる。
4 身体障害者福祉法に基づき,身体障害者手帳の交付措置の費用には国庫補助金が含まれる。
5 「障害者総合支援法」に基づき,地域生活支援事業の費用には国庫負担金が含まれる。
国庫補助金と国庫負担金の違いがわからなければ解けない問題です。
解答テクニックなどを駆使してもどの選択肢も消去できません。
しかも国庫補助金と国庫負担金について,今までに国家試験に出題されたことがありません。そのため,参考書には書かれていないでしょう。
こういった問題が最も難しいと言える問題です。
調べてみると,国庫負担金は国の義務,国庫補助金は国の援助だそうです。
しかし,心配ありません。よほどの通でなけれぱ,こんなことを知らないと思います。
難しい問題は,受験生に差がつかないので,合否にはほとんどかかわらないと言えます。
それよりも重要なのは問題77のように,推測が成り立つ問題です。
正解は,選択肢3です。