今まで学習部屋で事例問題を取り上げるたびに,事例問題の注意点を紹介してきました。
事例問題を確実に正解することは,決して簡単なことではありません。
コツは,事例の中のポイントを見つけることです。
その際,絶対に忘れてはならないのは「この時点において」という設問設定です。
将来的には適切であっても,この時点では適切とは言えない問題があるからです。
それでは今日の問題です。
第28回・問題104 事例を読んで,この時点での社会福祉士によるM君への対応として適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
M君(15歳)は,難民として来日したAさんの息子であり,Aさんに呼び寄せられて,10年前に来日した。M君はここ数年,放課後などに多文化共生活動を行っているNPO法人のWセンターに通っている。ここで日本語を学んだため,日常生活で日本語に不自由することはほとんどなくなった。M君からWセンターのL社会福祉士に「進路のことで悩んでいる,相談に乗って欲しい」との要望が出されたので,M君と面接をした。
1 「将来の夢は何か」と言う。
2 「就職してはどうか」と言う。
3 「進学したらどうか」と言う。
4 「日本に来て,何に関心をもったか」と言う。
5 「どういう進路を選択するにせよ今の日本語能力では不十分だ」と言う。
この事例のポイントは,「進路のことで悩んでいる,相談に乗って欲しい」です。
相談というと,相談を受ける側は,解決策を提示しなければならないと考えがちです。
しかし,それは素人さんの発想です。
社会福祉士を目指す人は,クライエントが自己決定できるように支援することがソーシャルワークの基本であることを知っています。
ソーシャルワーク事例の初回面接の基本は,最初に状況を知るところから始まります。
そのうえで,適切な情報を提供します。
この事例で,状況を確認しているのは,
1 「将来の夢は何か」と言う。
4 「日本に来て,何に関心をもったか」と言う。
です。この2つがそのまま正解です。
2 「就職してはどうか」と言う。
3 「進学したらどうか」と言う。
この2つは,M君がどのような希望を持っているのかを知らない「現時点」ではあり得ない応答です。
5 「どういう進路を選択するにせよ今の日本語能力では不十分だ」と言う。
M君は,日常生活で日本語に不自由することがない状況です。何を根拠に今の日本語能力では不十分だと判断するのでしょう。
<今日の一言>
今日の問題は,正解以外の選択肢があまり良くないため,正解しやすくなっています。
しかし,こういった問題ばかりではありません。
問題を解くときには,なぜ正解なのかの根拠をしっかり考えるようにしましょう。
今日の問題のポイントは,初回面接であることです。
初回面接は,クライエントにとってもワーカーととっても,特別な面接です。2度目や3度目の面接とは意味が異なります。